商人魂: /5
ラブ:/5
高田郁さんの「銀二貫」を読みました。
惠さんの教えてもらった「八朔の雪 」がおもしろかったので、
同じ作家さんの作品をチョイス、です。
大阪の寒天問屋の旦那・和助は敵討ちの場に出くわした。
子を連れた武士が「親の敵だ」と一方的に切り付けられ、
深手を負っていたのだ。
その幼い息子は父を守ろうと両手を広げている。
和助は寄進のための銀二貫という大金を男に差し出し、
その敵討ちを売ってくれ、と頼み込んだ。
金を持って男は立ち去り、斬られた武士は事切れた。
和助は天涯孤独となった幼い鶴之助を「井川屋」の丁稚として
迎え入れる。不況や大火に襲われながらも、寄進のお金を
貯め、商人としての誇りを持ち商売を続ける和助。
「松吉」と名前を変えた鶴之助はそんな和助の背中を見ながら、
商人としてたくましく成長していく。
自身の感情は控えめに表現する方が望ましいと、
先日「文章力の基本 」という本で習ったのですが……
ですが……
とっっってもおもしろかったのです。
「八朔の雪」と雰囲気やパターンが似ているので、
この作品が好きな方はお気に召すのではないでしょうか。
主人公が食べ物を試行錯誤して作っているシーンは
デジャヴすら感じますが……
敵討ちで父親を斬り殺されてしまった、10歳の鶴之助が
井川屋の丁稚「松吉」と名を変え、32歳になるまでの
物語です。
寄進の銀二貫を松吉のために使ったとあり、番頭には
当初は辛く当たられた。
取引先である「真帆屋」の父娘に寒天の素晴らしさを
教わり、大火では辛い想いをし、新しい寒天を試行錯誤し……
22年の間に松吉の身にいろいろなことが起こります。
どの事件にも感情移入がしやすくて、のめりこんでしまいます。
しかしそのために恋愛話がもどかしくて、もどかしくて
大声が出そうになります。
そしてタイトル「銀二貫」が物語を通してのキーワードに
なっています。その徹底ぶりも見所なのかもしれません。
「八朔の雪」と同様に、人々の情がじんわり
染み入り、ラストもよかったです。
読後も心が温かい、湯たんぽいらずの名作でした。