「青年のための読書クラブ」禁断の園、覗き見 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

青年のための読書クラブ/桜庭 一樹
乙女世界:かんどーかんどーかんどーかんどー /5

桜庭一樹さんの「青年のための読書クラブ」を

読みました。


『烏丸紅子恋愛事件』
 良家の子女ばかりが通う聖マリアナ学園の高等部に
 編入してきた烏丸紅子。容姿端麗なのにどことなくただよう
 貧乏くささのためクラスですっかり浮いてしまった。

『聖女マリアナ消失事件』
 マリアナは厳格な父に似て、勤勉な求道者であった。逆に兄はのんきな性分で
 あったが、妹を心から愛していた。勉学のためにパリへ向ったマリアナは
 父とそりが合わず数年前に家を飛び出した兄と再会する。
 
『奇妙な旅人』
 バブル絶頂期、聖マリアナ学園にもその波は押し寄せてきた。
 成金娘たちが編入してきては、おかしな格好で踊り狂う。
 生徒会は保守派と革新派で真っ二つに割れた。

『一番星』
 十五夜は容姿端麗な元伯爵家の令嬢だがいつも庶民派の加藤凛子に
 付いて回る気弱な少女だった。ところが読書クラブの引き出しの中の
 香水瓶を手に取ってからいきなり十五夜はロックシンガーへと変貌した。

『ハビトゥス&プラティーク』
 学園が創立100年をむかえたその年、学園内は怪盗ブーゲンビリアの噂で
 持ちきりだった。読書クラブ最後の一人・永遠(とわ)はその噂話に
 仰天した。怪盗ブーゲンビリアとは自分のことだった。

全体的には壮大な学園の年代史というように見えます。

一つ一つの話はちょっとした学園の事件を読書クラブの部員が綴っている

という形です。


この学園内の雰囲気がかなり独特です。

マリアナ祭では、みんなの憧れの的になる”王子”を選出します。

女学園なのでもちろん女の子が選ばれるのですが、

扱いはまるでステキな男性。

生徒会や演劇部が強力な権力を持ち、

家柄の良し悪しがものを言う。


そんなちょっと世間とずれている学園内で

起こる珍事件はまるで戯曲か何かのようにシュールです。

まるで異世界の出来事。

男の子みたいにしゃべってる女の子もいるし、

”王子”のステキさに失神する女の子もいるし、

ちょっと耽美な世界観です。


そんな中でも『烏丸紅子恋愛事件』が一番分かりやすくて

面白かったです。

これは田舎臭いけど容姿の整った紅子を読書クラブの部員たちで”王子”に

プロデュースするというお話です。

不良少年の素行を学んだり、フランス語の本を読ませたり、しゃべり方や

動きも洗練されてものにし、紅子がどんどん女の子の注目を集める様子が

痛快です。この分かりやすい構図、いいですね。


聖女マリアナの秘密が語られた『聖女マリアナ消失事件』も

ちょっとしたびっくりがあって好きです。


なんだかすごい世界の話でしたが、

面白かったような気がします。


女子校経験は皆無ですが、本当に女の子同士で

公認擬似カップルがたくさんいたりするのかな。

興味深い世界です。


あ、でも共学でもあった……

ような気がする……