「ぬばたま」山の思い出話 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

10歳にはなってなかったと思います。

その頃私達子どもの間でイケてた遊びは山歩きでした。

冒険ごっこはもちろんのこと、秋は親に頼まれてススキを

とりに行ったり、ペットにする虫をとったりしたものです。


子どもというのは好奇心が服を着て歩いているようなもので

例外に漏れず私達も好奇心からかなり奥へと入って

いってしまったことがあります。


そして小屋を見つけました。

コンクリートの四角い小屋で蔦がビッシリからまっている小屋です。

鉄格子の窓が剥き出し。つまりいかにもヤバい感じでした。

そりゃ、入ります。子どもだもの。気分はアニメの主人公です。

「敵のアジトだな」


荒れすぎていて入るのがかなり大変でした。

まず大きな子3人くらいで入った気がします。

「強いヤツが先に入って様子を見てくる、お前ら待ってろ!」

ってとこでしょう。

蔦にとまっていた蝶々が実は蛾だっただけで半泣き。


そして見てしまいました。

ヒンヤリした室内の壁に塗りつけられた行く筋もの血……

女性のストッキング……


そこからは記憶がないのです。

あまりの怖さにすぐ逃げたと思うのですが、記憶を

封印するほどの恐怖だったのかしら。


今思うとどうせ壁についていたのは赤い塗料か何かで

「FUCK!」とか「夜露死苦!」とか、じゃなかろうか、と。

そしてストッキングはどこかのアベック(あえて昔風に)

そこでお楽しみだったんじゃなかろうか、と。


ぬばたま/あさの あつこ
山怖い:ホラーホラーホラーホラー /5
自然に畏怖:あーあーあー /5


前置き長すぎました。
あさのあつこさんの「ぬばたま」を読みました。

タイトルのない短編4編から成る山をテーマにした

ホラー小説でした。


『壱』

 おぼえのない責任を負わされて辞職、

 妻と離婚、すべてを失った男が深い山に迷い込んだ。

 そこで男は踊る女達を見てしまった。


『弐』

 大人になることができずに故郷の山にまだいるであろう

 大好きだった晶くん。

 上原成美は彼から電話を受けた。

 「成美、おれじゃけど……」


『参』

 恭平、卓也、輝樹は夏休みの始る前日、

 裏山を冒険をすることにした。

 「あの出来事」から何年も経ち、

 恭平は卓也から輝樹が焼身自殺をしたことを聞かされる。


『四』

 軽そうな男に声をかけられてた久実子は

 ナンパだろうか、といぶかっていた。

 ところがどうやら彼は死者を感じることができるらしい。

 「あなたも、わかるの?」



連作短編ではないと思いますが、少し繋がっているところも

ありました。


怖かったです。

民俗学とか好きな人はこんな雰囲気のホラーお好きなんじゃ

ないかしら。


子どもの頃を山と共に過ごした子ども達が中高年になって

また山に呼ばれてしまう。

4つとも大筋はそんな感じです。


昔の人は山に神様がいるとかいって怖がったり大切に

したりしたそうですが、この物語の根底にもそんなにおいが

漂っています。

よくわからない力があって怖い、そんなホラーでした。


これを読んで私は冒頭のどうでもいいことを

思い出して私もいつ山に呼ばれるか、と

戦々恐々(0_0)


このブログの更新がされなくなったらきっと

私は山で行方不明になっていることでしょう。