「鬼」分かっていても、ゾっとします。 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

鬼/今邑 彩

「よもつひらさか」 が気に入ったので今邑彩さんの「鬼」を

読みました。


同じくホラーな短編集です。



『カラス、なぜ鳴く』

 柳瀬正一は休日の朝目を覚ますと、めずらしく

 中学生の息子・正彦が早くに起きてきた。

 今まであまり口をきかなかった彼が急に子どもの頃の

 ように明るくふるまっている。


『たつまさんがころした』

 島田春美はよく空耳と言う形でお告げのようなものを

 聞くことがあった。それは人生の大きな分かれ目によく

 聞こえてくる。辰馬との結婚が決まっていたある日、

 子ども達の「だるまさんがころんだ」にまぎれて聞こえてきた

 「たつまさんがころした」はお告げなのだろうか。

 

『シクラメンの家』

 優佳は近所の家の出窓に出ているシクラメンの鉢植えが

 赤だったり白だったりする事を発見した。

 そしてそれを何かの暗号だと推理する。

『鬼』

 みっちゃんはかくれんぼが大好きな女の子だった。

 いつもかくれんぼをやりたがって、「鬼」が

 得意だった。

 幼馴染の智子がみっちゃんにそっくりの女の子を見た

 と電話してきたのはそれから何年も経った夕食時で

 私は夕食の準備の為適当に会話を切り上げた。


『黒髪』

 あるはずのない所に長い黒髪が見つかる。

 それは亡くなった夫の前妻の長い黒髪を思い出させた。


『悪夢』

 幼い男の子の首を絞めて殺し、庭に埋葬する夢を何度も

 みてしまう恵利子。

 彼女は男の子を身ごもっている自分の未来の姿だと妄信し

 不安定になっていた。

 

『メイ先生の薔薇』

 メイ先生と5年3組の生徒39人はとても仲がよかった。

 しかしある日メイ先生の結婚が決まり、先生は英国へ行ってしまうこと

 となった。


『セイレーン』

 温泉宿へ行く途中で恋人とケンカをして蹴り出されて雪の中を歩く

 ハメになった高野はインターネットのオフ会のメンバーを乗せた

 民宿のワゴンに偶然拾われる。



以前読んだ「よもつひらさか」に雰囲気はよく似ています。

始めになんとなく先は読めるのですが、

それでもゾッとするような文章です。


「よもつひらさか」が気に入って読んだ私としては

期待通りの本でした。


お気に入りは決めがたいのですが、

やっぱり表題作の『鬼』は典型的な「追われる怖さ」、

「見つかる怖さ」を楽しめて好きでした(^^)

しかも最後はちょっと意外です。


あと、『黒髪』が生理的嫌悪感フル活動という感じです。

住人の誰のものでもない長ーい黒髪がスープ中や

排水溝に絡まっていたりって想像しただけで

背中がゾワゾワする(>_<)


『たつまさんがころした』がゴロがよすぎて思わず

口ずさんでしまいます(笑)

怖い、ですね。この言葉がすでに……


シメの『セイレーン』はちょっと予想できすぎちゃって

残念な感じではありました。

インターネットのオフ会をもう営業をやめる民宿でって

何となくいろいろ想像できちゃいますよね~。

もう少しラストにひねりがあったらよかったなぁ(^^;)


でも全体的に期待通りの面白さでした。

今邑さん、もっと読んでみたいです。