「LAST」借金には気を付けよう | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

LAST (ラスト) (講談社文庫)/石田 衣良

石田衣良さんの崖っぷちに立たされた人々の

短編7編が入った「LAST」を読みました。



『LAST JOB』

 不況の煽りを受け、何も贅沢なことをしていないのに

 借金が膨れ上がり身動きが取れなくなってしまった

 真弓。毎日仕事に追われている夫には借金のことは

 言わずにいた。

 ある日突然入ってきたいわゆる「出会い系サイト」の

 メールに記された「¥」マークにつられて……


『LAST HOME』

 膝の古傷の痛みの為に仕事を休んでいた聡はそれを

 上司に仮病と疑われ職場を飛び出した。

 失業し部屋代も払えず路頭に迷った聡はホームレスとして

 ブルーシートの家に住むことを考えるがその世界のルール

 が分からず、簡単には入ることができない。

 

『LAST DRAW』

 借金返済に首が回らなくなった出村は中国人犯罪グループが

 どこからか得た通帳の金をおろすという”出し子”の仕事を

 引き受ける。

 収入はよくなり借金返済のめどが立ってきたが

 犯罪の片棒をかつぎ、薬中の中国人と仕事をすることに

 不安を抱きはじめる。

 

『LAST BATTLE』

 借金返済の為に消費者金融の看板を持ってSL広場に

 一日中立ち続ける都筑。

 ある日同じように看板持ちをしていた落合が脳溢血で死に、

 ボスに呼び出された都筑はある仕事を任されることとなる。

 同業者の死を目の当たりにした都筑はこれからの人生を賭けて

 その仕事を受けることにするが。


                             (他3編 全7編)



絶望的な状況に置かれた主人公達の様々ストーリーがあります。

最後まで救いようのない話もあれば大逆転を起こす爽快なストーリーも

あり、読み応えはありました。


さすが石田さん、裏世界を調べて書いてるなぁと

思いました。


ただ目を背けたくなるような裏社会もありエンターテイメント

としては若干重い話もありました。

あらすじ紹介はしてませんが、『LAST SHOOT』というベトナムの

児童買春の話です。


事実そういうことがあるのでしょう。告発も必要でしょう。

でも、何か、すごく……気持ち悪くなります(:_;)


ご紹介させてもらった短編は全部何となく前向きな雰囲気で

終っていていいな、と思ったものばかりです。

特にお気に入りは『LAST DRAW』。

「やったー!」と主人公と一緒に万歳したくなる逆転劇です。


借金のお話ほとんどなのですが、あまり好きじゃないなと思った

短編の『LAST CALL』と『LAST SHOOT』は2つとも主人公に

借金があるわけではなさそう。金がらみの話じゃないんですよ。


不思議なものですが借金に追われている主人公の

話の方がよかった(^^;)

借金返済に追い込まれた人間の強さが描かれているから

でしょうか。


とにかく借金には気をつけないと、と思った。