別れ際 | とりやまだもの

別れ際

昨夜、唐さんが芝居に来て、他のお客二人と四人、高円寺に流れた。お客共々芝居の余韻を確かめるべく30分ほど飲んだ。高円寺駅で唐さんだけ残し、私を含む三人は終電に飛び乗った。唐さんだけもう一杯やって帰るというのでそうなった。別れ際、エレベーターから振り返ると唐さんはなにか私たちの更に向こうを観るように、じっとしていた。少し不安になり手を振ると、一秒遅れて力無く私に手を振り返す…明らかに集中していない、作家のほうけたような厳しいような目を観てると、なんだか寂しく感じた。かつて、唐さんのお母さんが亡くなった時、お通夜で二人っきりになり道端の猫を撫でた時に観た、恐ろしく剥き出しな 悲しい表情にも似ていた。私が唐さんの一番弟子だと自認するのは、この、人間のむき出しになった唐十朗の表情を知ってるからだ。私だけが知るこの作家の深い淵…25年付き合い、私だけが教えられたこと…
とりやまだもの-110127_194844.jpg浪子は今日も、ステージをこなし、そこに佇む。