孫の一言で、娘はようやく前を向く決心をしたようでした。
「自分より、この子を守らなきゃ」
そう心を決めた娘でしたが、元夫はそう簡単には引き下がりませんでした。
毎日のように娘のスマホが鳴ります。
画面に表示される名前を見ただけで、娘の手は震え、声も出せずに泣き出してしまうのです。
対人恐怖症、という言葉が頭をよぎりました。
それくらい、娘の心は追い詰められていたのだと思います。
同じように、私のところにも電話がかかってきました。
私は迷わず、こう伝えました。
「養育費も慰謝料もいらない。
綺麗に別れてほしい。
なんなら弁護士に入ってもらうことも
考えている」
「弁護士」という言葉に、
少しひるんだのかもしれません。
それから電話の様子は
少しおとなしくなりました。
けれど、簡単には終わりませんでした。
「生活費はどうするんだ」
「養育費は本当にいらないのか」
「よく考えた方がいい」
心配しているような口調で、
何度も同じことを聞いてきます。
まるで「別れない方がお前たちのためだ」と言っているようでした。
娘本人の口から聞かなければ納得できない、
そんな様子も伝わってきました。
けれど、震えて声も出せない娘に、
電話の対応をさせるわけにはいきません。
守るべきものが、はっきりしていました。