
吉野家 安部修仁
逆境の経営学
戸田顕司 著 日経BP
本書は72年にアルバイトから正社員として吉野家で働きはじめ、80年の会社更生法申請、2004年の米国牛肉輸入停止と2度のどん底、いや崖っぷちを経験した社長の安部修仁へのインタビューがベースとなっている。
「勝つまでやる。だから勝つ」
2004年、吉野家から牛丼が姿を消す直前の部店長会議で、社長の安部修仁はこう叫んだという。
本書の構成は、MBA講義のように各章が分類されている。逆境の経営は時に平時の経営とは相いれないこともある。経営者として2度にわたる地獄を見た男の経営学講義といっていいだろう。
安部修仁という経営者のバックボーンには、創業者の松田瑞穂氏、会社更生法の申請により管財人として吉野家の再建にあたった増岡修三弁護士、この2人からの影響が強くある。
本書では各章がコンパクトにまとまっていて読みやすい。とくに【第2講:リーダーシップ】の「上位者視点で考える」は共感できる。
自分の立場だけで考えた問題提起は、はっきり言って、8割は愚痴や不満ですよ。(中略)会社で働いていると誰しも矛盾を感じる時もありますが、上位視点を持つことで、会社の取り組みに対して正当性に気づいたり、前向きに理解できたりできる。つまらないことで、くよくよしたり、腹を立てたりせずに済む。
本当に一生懸命に仕事をしていると、どんどん深堀りしていくから、縦に深くなるけれども視野狭窄になる。だから、外部のアドバイザーの意見を聞かないといけない。(中略)視野狭窄にならず、評論ばっかりやっているやつはものにならない。
大抵の上司は、部下の短所と自分の長所を比較している。それでは人は伸びない。(中略)比較するのは、自分の短所と相手の長所にしろ。
レーサーは時速200kmを超えると、カーブを曲がる時に逆ハンドルになる。会社も同じだ。200店を超えると、これまで良かれとしてきた組織もマニュアルも制度も全部、変えていかないといけない。
リーダーの心得7カ条
~社員一人ひとりが経営者感覚をもとう~
常に上位者の位置にいるつもりで思考し、自分の発想が真っ当かどうか、客観視する姿勢を持つ。
上には苦言、下には厳しさ。どちらからも嫌がられていないやつは、自らの役目を果たしていない。
一生懸命に仕事をしていると、視野狭窄になるので、外部の意見に耳を傾ける。
ダメ集団もリーダーで変わる。人材が活躍できる場を作ることが求められている。
皆が誤解せずに内容を共有できるように、分かりやすいメッセージで伝える。
上司は自分の短所と部下の長所を比較することで、自分の課題が見えてくる。
会社が共有すべき思想を、日常の仕事における局面や状況で、意識的に語りかける。
吉野家 安部修仁 逆境の経営学/戸田 顕司

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