TAKE’S【FEVER日記】




日本列島改造論


田中角栄 著 日刊工業新聞社 1972(昭和47)年






 本書『日本列島改造論』、著者である田中角栄について説明は不要であろう。今の時代に読めば、経済学の視点としての功罪が指摘されよう。その一方、政治学においてはどうであろうか。「土建国家」をつくったと指摘するのは容易である。また、現在も当時の高速道路や新幹線の整備といったモデルを踏襲しているのも事実だ。そういった意味で、いまだ田中角栄と日本改造論はこの国に生き続けている、または呪縛のなかにあるとも言えないだろうか。



 ずいぶん前のことになるが、学校の講義で「日本列島改造論」を利用したことがある。無論、現在の結果から見れば批判する部分が多々ある。ただし、「日本列島改造論」は、日本経済史の一つのテキストでもある。そして、政治家が明確にビジョンを示し、官僚を動かすスタイルで作成されたものでもある。そうした意味では政治主導の一つのカタチでもある。



 最近、私は、本書「日本列島改造論」を取り出してきてしまった。政治家としての田中角栄を論ずることも重要であるかもしれない。しかし、田中角栄という稀代の政治家の人物像をしっかりと直視し、本書「日本列島改造論」を読むと、また新たな気づきの発見を見出せるように思えてならない。



 田中角栄には、荒唐無稽とすら言える「三国峠をダイナマイトで破壊して大雪をなくし、その土を使って佐渡と新潟をつなぐ」という演説があった。本書で、新幹線と高速道路で都市と地方を結ぶことはもちろん、コンピューターの情報通信で都市と地方の情報格差が縮小するとも明言している。田中角栄という政治家の野心的なアイデアを彼を取り巻く、秘書や官僚たちが現実味のある論述に仕上げたのだ。本書の内容そのものではなく、「日本列島改造論」という思いをカタチにしたという意味において、稀有な政治主導だったと言えないだろうか。