大局観 ―自分と闘って負けない心
羽生善治著 角川oneテーマ21 2011年2月10日初版
平成の時代を代表する将棋棋士といえば、やはり羽生善治さんだろう。小学六年生でプロ棋士育成機関の奨励会に入会し、19歳でプロ初のタイトルを獲得。その後も数々のタイトルを獲得し「将棋界はじまって以来の7冠」達成という偉業を成し遂げる。その羽生さんも40歳となったのだ。
私はそれほど将棋が強くはない。しかし、子どもの頃に父に教わったこともあり、時よりNHKテレビで放送される対局を見る。少し前にもテレビで羽生さんの対局を見たのですが、形勢、持駒とも不利に見えたが、ある一手からあっという間に勝利した。本書以外にも『決断力』という本も読んだが、今回もやはり読みたくなってしまった。
大局観では「終わりの局面」をイメージする
勝負の手を読む力は若いときの方が上だが、棋士は年齢を重ねるごとに「大局観」を身につけ、逆に「いかに読まないか」の心境になる。それは年齢とともに熟し、若き日の自分とも闘える不思議な力を与えてくれるのである。(本文より)
本書は、将棋棋士として羽生さんが経験したことの中から、勝負に対する考え方を綴ったものである。
考え抜いても結論が出なければ「好き嫌い」で決めていい
・「選択肢」が多いことは迷いにつながる
・「感情」の起伏が生むエネルギーをつかむ
・「視野」を広げてリスクを軽減する
・「慣れ」によって心の余裕が生まれる
・「自己防衛」で疲れきった心は癒しを求めている
・「野生のカン」で難局に立ち向かう
私は読んで、共感できるものが多かった。羽生さんのような勝負師ではないが、やはり経験することによってのみ得られる何かを説いているからだろう。一つに絞るのは難しいが、あえてあげれば「鍛えの入った一手」というのは、ビジネスパーソンにも通じるものではないだろうか。
鍛えの入った一手
スマートではないかもしれないが、もがき続けて習得したものは忘れにくい。というより、忘れることができない。泥臭く頑張るのは現代にマッチしにくいのかもしれないが、それでもある部分においては、なくてはならないことなのではないかと考えている。(中略)「鍛えの入った一手」とは将棋界ではよく使われる言葉の一つで、負けにくい一手、慌てない一手、今まで苦しい思いをしていなければ指せないような一手を形容する。
似た表現としては「泣きの入った一手」というものもある。勝負の厳しさを知ったシビアな一手の事だ。
鍛えの入った一手や、泣きの入った一手には、慎重に、手堅く、負けにくく、思慮深いという傾向があり、それは経験を重ねていくなかで身についていく。
しかし、いつまでもセーフティーゾーンのなかで局面を進めることはできない。どこかで思い切った決断が必要な時がくる。
新書で読みやすいのですが、将棋棋士というロジカルな仕事人が著した文書は、一読の価値あり!です。

