他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス
――核密約の真実 若泉 敬
文藝春秋(新装版2009年)
コードネーム「ヨシダ」。米国側、リチャード・ニクソン大統領、キッシンジャー補佐官(肩書は当時)と日本の首相だった佐藤栄作の4人だけの「密約」。「ヨシダ」は総理の密使として交渉にあたった本書の著者である若泉敬その人である。
本書の最初に、著者が覚悟を記した宣誓文がある。 この宣誓をご紹介したい。
宣誓
永い遅疑逡巡の末、
心重い筆を執り遅遅として綴った一篇の物語を、
いまここに公にせんとする。
歴史の一齣への私の証言をなさんがためである。
この決意を固めるに当たって、
供述に先立ち、
畏怖と自責の念に苛まれつつ私は、
自ら進んで天下の法廷の証人台に立ち、
勇を鼓し心を定めて宣誓しておきたい。
私自身の行った言動について
私は、
良心に従って
真実を述べる。
私は、
私自身の言動と
そこで知り得た真実について
何事も隠さず
付け加えず
偽りを述べない。
右、宣誓し、茲に署名捺印する。
一九九三年(平成五年)五月十五日 若泉 敬
本書の表紙カバーは、キッシンジャーから若泉敬に手渡された「極秘合意議事録」英文章案である。
文章の末尾「R・N」「E・S」は、リチャード・ニクソン、佐藤栄作が、それぞれサインすべきだった箇所を示している。
沖縄返還を実現し、その後、経済成長を加速させる日本ではあったが、日米同盟の姿が著者にとって、まったく別のものに映って見えていたのではないか。沖縄返還は実現されたが依然として基地があり続ける。自分が行ったことは本当によかったのかという結果責任を感じながら、沖縄を見つめ続けた若泉敬。
激動の世界変化の時代、そして沈滞する日本の政治。
著者の高い志と外交や安全保障が直面する本質を知ることのできる、必読すべき一冊ではないだろうか・・・。

