AW11を何台か所有されているSさんが通勤用に使っているというスズキのツインです。

以前から存在は聞いていましたが、これまでこちらへ乗って来られる事が無かったので初めて拝見します。

 

 

作業したのは少し前の話になります。

 

 

ベルト鳴きするという事で、車検などを頼んでいる車屋さんでベルトの交換や調整などを行ったそうですが、しばらくすると再び鳴き出すという状況を繰り返しているそうです。

 

ベルトの周辺、特にオルタネーターのところにベルトのゴムが擦り減って飛び散ったと思われるゴムのカスが蓄積していますねー

 

これよりも前の世代のスズキ車でもベルト鳴きが多発して、対策用のプーリーキットなる物が販売されていたのを思い出し、この型でも同じ様な事例がないかと色々調べてみますと・・・

 

確かにワゴンRやアルトなど、同じ年代のスズキ車で同じK6Aエンジンの車両で似た事例がよくあるそうです。

取引先の部品屋さんで調べてもらいますと、スズキからの回答では他の車両では対策部品の設定が有るけど、ツインは対象外との事でした。

 

同じエンジンなのに?

と言ってみても部品屋さんやメーカー側は車両のデータで管理しているだけですので、それ以上の判断はできません。

 

一旦取り寄せた物は返品できない事は承知の上で「違っていても買い取りますから取ってください」と、いつもの様に注文をしてみました。

 

 

 

右が付いていたクランクプーリーで、左が他の車両で対策品として販売されている物です。

 

事前に情報を集めたところ、問題の起こるプーリーはダンパー付きになっていて、そのダンパー部の劣化とかが原因でベルトが滑りやすくなるという見解だそうです。

他にもオルタネーターのプーリーに水が掛かる可能性とか、真上にブレーキのマスターシリンダーが有るからとか、複合的な要素も考えられます。

 

何にしても新旧のプーリーを比較して取り付けに問題は無さそうですから、ツインが設定から外されている理由は分からないです。

 

それとは別に、これまた少し違う年式の同型エンジンで「クランクプーリーのボルトが緩みやすい」という問題が有ったので、その対策として出ているボルトも用意しました。

なぜか対策品のほうがツバの部分の径が小さいという話を、以前に取り上げた事がありましたねー

 

 

そしてオルタネーターですが、ベルトを外してゴムのカスを掃除しようとしたところ、なんだかプーリーの回転が重い事に気付きました。

ベアリングが寿命になった時のゴロゴロ感とは違いましたが、とにかく微妙に重いのです。

 

オーナーと相談した結果、走行距離からもそろそろ交換しておいたほうが安心という事で、リビルト品を手配しました。

通常ならベアリングが新しいリビルト品のほうが少し重く回るくらいのはずですが、やはり古いオルタネーターのほうが明らかに回転が重いので、何かしら異常が有る事は確かですね・・・

リビルトのコアで返却が必要ですから分解して確認はしませんでしたが、まずオルタネーターの回転が重くなった事がきっかけでベルトの滑りが発生したのか、もしくはプーリー側が原因で滑りが発生し、滑らない様にと強めにベルトを張ってオルタネーターに負担が掛かったのか、どちらの可能性も考えられます。

 

 

こちら、オルタネーターに繋がる配線のカプラーなのですが、なかなか抜けてくれなくて悪戦苦闘していたらケースの部分が割れてしまいました・・・

 

こちらも部品屋さんに補修用のカプラーが出るのか聞いてみたところ、やはり同じ事例が多いそうで、スズキからは部品として出していないけど、トヨタ用は有るので、それで行けるとの事でした。

 

 

こちらが補修用のカプラーです。

 

本来はコードを途中で切断して繋ぐのですが、今回は配線部や端子に問題は無かったので、端子部分を抜いて差し替える方法を採用しました。

 

 

 

そして、こちらはウォーターポンプです。

どうせなら同じベルトで回しているウォーターポンプのプーリーも交換しようと思っても、部品としてプーリー単体の設定が無くて、ポンプASSYでの供給となってます。

 

カムシャフトの駆動がタイミングベルトのエンジンなら、10万キロあたりでウォーターポンプも交換しようという流れになりますけど、この車両は現在12万8千キロなので、おそらく新車時から交換されていないと思われます。

 

ベルトの張り過ぎでこちらもダメージを受けている可能性もありますので、こちらも新調する事になりました。

 

 

 

こちらは古いウォーターポンプを取り外そうとしてるところです。

 

割と作業性は良さそうかと思いきや、エンジンブロックへ取り付けるボルトが一か所だけエキマニの裏側になっていて、もう少しのところでソケットが入りません。

色々な形状のメガネレンチで何とかアクセスしようとしてみますが、最終的には3番シリンダー側(ミッションのほう)からロングタイプのメガネを入れて、すごく小刻みに回して緩め、少し緩んでからは板ラチェを使ってなんとか抜き取る事ができました。

 

もしエキマニを外す様な機会があれば、ソケットが入る様に加工しておいたほうがいいかもしれないです。

 

 

 

そして、こちらはクランクプーリーを外したところ。

 

特にオイル漏れは無かったですが、こんな機会にオイルシールも交換しておきました。

ここは作業スペースに余裕が有るのでサクサクと完了しております。

 

 

 

 

各部の組み付けが完了し、LLCを入れてエア抜きをしますが、このエンジンってラジェーターキャップを空けたままエンジンを少し吹かしたりすると、そんなに水温が上がってないのに注水口からいきなり吹き出したりするので、エア抜き作業は慎重に行います。

 

 

エア抜きが完了してリザーブタンクにもアッパーレベル付近までLLCを入れ、少し試乗をして帰って来ると車の下かポタポタとLLCが垂れてきました。

 

なんだか広範囲に渡って垂れているので頭を抱えそうになりましたが・・・

 

時々あるのが、以前にどこかから漏れていたのを漏れ止め剤で止めていて、それがLLCの入れ替えで洗い流されて再び漏れが発生とか、最悪のケースが思い浮かびましたが、漏れの源流を辿ってみるとリザーブタンクの裏側に小さなクラックが有り、そこから垂れてきたLLCがフレームの中に入り込んでラジェーターの下側や、フロア側のほうへも伝わっていたので、ちょっと焦る状況だったんですねー。

 

幸い新品がすぐに入荷したのでサクッと交換しております。

 

 

これで終了と思いきや、試乗した時にメーターの液晶部分が表示せず、スピードメーターも作動しない状態で、またまた問題が発生です。

 

オーナーに確認すると寒い時に時々あった症状らしく、急に冷え込んできたせいで悪化したのかもしれません。

 

メーターユニットを取り外し、この手のメーターを修理しているという業者へ頼んで直していただきました。

 

オドメーターの数値は元のままですので、交換するよりも良かったと思います。

 

 

 

以上で今回の作業は完了です。