【縄張りコラム】今度は映画の… | 人生竪堀

人生竪堀

TEAMナワバリングの不活発日誌

 

 久しぶりに仕事の近況報告を少々。

『鎌倉殿』の仕事が終わってホッと息をついたのも、つかの間。今度は、映画の「戦国軍事考証」に携わっている。このコラムが掲載されるのと同日に、正式な制作発表があるはずなので、伏せ字を交えて書いてしまうけれど、『シンG』『シンU』『シンK』を手がけてきた、あのプロデューサーと監督のコンビによる、『シン大M神』である。

 ことの発端は、このコンビの片方が、戦国モノのゲームを制作するさいの参考として、拙著『戦国の軍隊』を読んだことだ。なるほど、と思った彼がスタッフに連絡し、某編集部を通じて僕にコンタクトをとってきた、というわけである。

 そうしてある日、都内某所に呼び出された僕は、例のコンビにお会いすることになったのだが、そのとき、最初に(いきなり)聞かれたのが、

「戦国時代の国衆って、どのくらいの兵力を動員できたのでしょう?」

ご両人は、面食らっている僕に矢継ぎ早に言葉を浴びせてきた。

「やはり戦闘シーンで鉄炮を出したいので、永禄年間くらいに設定したのですよ」

「舞台は山国がよいので、中部地方の架空の国衆という設定で」

「そのあたりの国衆に、鉄炮はどのくらい普及していたもんでしょう?」

 ひとしきり話を聞いているうちに、なるほど、ご両人の意図がわかってきた。僕に求められているのは、単に武器や戦闘シーンの考証だけではないようだ。

 このお話しは、領主の苛斂誅求によって領民が苦しめられることが前提になる。ただ、領主が横暴で強欲なだけでは、ストーリーや人物造形にリアリティが生まれない。領主が苛斂誅求に走らざるをえないような、ストーリー設定の部分でのアイディアがほしいのである。

 ならば、知恵の出しようはある。永禄年間、中部地方の山間部で、国衆が苛斂誅求に走るリアルっぽい状況を考えればよいのだ。僕がザックリと出したアイディアを「ふんふん」「なるほど」と聞いていた両人は、こんなことも言ってきた。

「クライマックスは、やはり城のシーンを撮りたいので、そこはオープンセットを造りたいのですが、ただ予算が限られているので、あまり豪勢なセットは造れない。どうしたら、よいものだろう?」

 それなら、やりようはいくらもある。戦国時代の国衆の城なんて、そもそも技術もマテリアルも現地で調達できる範囲で造るものだ。それに、永禄年間、中部地方の山間部で苛斂誅求の原因になるような築城がされるのである。あり合わせ感アリアリの方が、かえってリアルなセットができそうだ。

 先方のスタッフさんたちも、香川さんのイラスト集などを見ていろいろ考えているようだが、要はイラストだけでは伝わらないような「リアルっぽさ」のアイディアを出せばよいのである。

 …というわけで、今回はストーリーやイメージボードを練るところから参画させていただき、ロケハンにも同行させていただいている。ま、現時点ではここまでしか書けないけれど、お伝えできることは追々お伝えして行こうと思うので、皆さん、お楽しみに!

(以上、4月1日の近況報告でした)