【縄張りコラム】スマホと縄張図 | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 

 まったく遅ればせながら(笑)、とうとう西股もスマホになりました。
 ここまで使ってきたガラケーが、物理的に使用の限界を超えたためで、別にスマホがほしかったわけではない。もう一度ガラケーに買い替えることも考えたのだが、チケットの類の電子化が軒並み進んでいて、とりわけサッカーのチケットが電子化されてしまったので、致し方なくスマホと相成った次第。
 といっても、スマホになったから、あれこれチャレンジしてみようとか、便利に使ってみようなどという気持ちはさらさら起きない。ただ、手にしてみて、一つわかったことがある。
 何年か前に、縄張図をGPSと組み合わせて、スマホで見ながら城を歩けるようなアプリを開発したい、という申し出を何人もの人からいただいた。いただいたけれども全部、ソッコーでお断りした。縄張図をGPSと組み合わせるのが、技術的にというか、原理的に不可能だからだ。
 スマホもカーナビも使わず、GPSに決して詳しくない僕が考えて、一瞬で「原理的に無理」と判断できる。なのに、どうして申し出てくる人たちは皆、縄張図とGPSを組み合わせようという発想になるのだろう? 僕は、いぶかしく思ったものだ。そして、いちいち説明するのもだんだん面倒になって、そのうち「無理なものは、無理」みたいな断り方をするようになった。先方は、「西股って横柄な奴だなあ」と思ったことだろう。
 それが、今になって自分でスマホを手にしてみて、腑に落ちた。
 僕は、縄張図をベースに考えていた。つまり、縄張図はどのように作成されるゆえに、資料としてどのような属性を持っているか。であれば、どのような使い方は有効であるが、どのような使い方はできない、という筋道で考えていた。
 それに対して彼らは、スマホをベースに考えていたのである。スマホでは、こんな事ができる、あんな事もできる。だからスマホを城歩きに活用したい、という筋道で考えていたのだ。たぶん。なので、縄張図がどのような属性を持っているのか、という問題に考えが及ぶ前に、縄張図をスマホで使えるようにするという発想になったらしい。
 なるほど、な。
 一見すると、デジタルベースで発想していた彼らに対して、僕の発想は紙ベースというより、地べたベースだったようだ。ま、アナログ感覚という意味では、紙ベースも地べたベースも同じかもしれないが。
 こうして一つ、積年の謎が解けたわけだ。よかった、買い替えて。
 あ、もう一つ、考古学の心得のある者の立場で発見したこと。手に持って使う道具としては、人類史上画期的に落としやすい形をしてるね、スマホって。

 

西股総生