【今回のワンポイント解説】(真田丸:9月11日放送分) | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 今回、徳川秀忠と本多正信が、雨を理由に上田城の総攻撃をためらうシーンがあった。雨は視界をさえぎり、人の気配を消す。だとしたら、雨にまぎれて城に近づき、一気に攻め込む、という戦法もありなじゃないか? そう思った人もいるかもしれない。でも、実戦経験の豊富な正信は、雨の日に城を攻めるのは不利と判断した。なぜだろう?

 まず、雨が降れば足元がぬかるむ。守備側は、城外のどこに道が通っていて、どこに田んぼがあり、小川や水路があるか知っている。対する攻め手は、勝手のわからない土地を動き回りながら城に接近することになる。後続の部隊が増水した水路に行く手をはばまれたり、退却する部隊が田んぼにはまったりでは、うまくない。
 次に、城を攻めるためには、坂を駆け上がったり、土塁や切岸をよじ登ったり、虎口に走り込んだりしなくてはなせない。一方の守備側は、足場のしっかりした土塁や石垣の上で敵を迎え撃つことができる。足場の悪さが不利にはたらくのは、どう考えたって攻める側なのだ。
 しかも、雨の中では鉄炮が使えない。えーっ、それは守備側も同じでしょう? な〜んて、言わないで下さいよ。城というのは、屋根のあるところで鉄炮を使えるシステムのことだ。要するに、忍びの集団による奇襲攻撃ならともかく、ガッチリと備えを固めている城を相手に、全軍を挙げた総攻撃をかけるなら、雨はどうしたって不利というわけだ。

 もう一つ、今回のストーリーでポイントになっていたのが兵粮。「兵粮攻め」という言葉があるけれど、実際に兵粮の手当が大変なのは、攻め手の方だ。攻め手は敵地に乗り込むわけだし、人数が多い分、消費する兵粮も格段に多いからである。今回のストーリーには、この原理がうまく活かされている。

(西股総生)

《ワンポイントイラスト》



 久しぶりに昌幸の軍略ターン! 兵糧、兵力差、地形に加え、制作予算、撮影スケジュールも考慮しなきゃ…

(みかめゆきよみ)

☆お知らせ☆

◎徳川秀忠にも読ませたかった!



これを読めば、第2次上田合戦がもっとよくわかる!
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◎12月23日(金)のトークイベント「信繁と幸村の2016年をふり返る」では、『真田丸』における第2次上田合戦の描き方について、裏話も交えて解説します。
場所 : 新宿クラブツーリズム(新宿アイランドウィングビル)
第1部【 コース番号=C2021−098】入場料 1,000 円
第2部【 コース番号=C2022−098】入場料 500 円

◎9月15日(木)19:00〜
ちゃらぽこ連続講座でも、関ヶ原合戦と第2次上田合戦についてお話しします。