人生竪堀

人生竪堀

TEAMナワバリングの不活発日誌

 世の中はお城ブームということで、ここ数年は戦国時代の土の城を歩く人も増えてきた。その結果として、縄張り図の需要が高まっているようなのだけれど、現状では供給が需要に追いついていない、感がある。
 というのも、縄張り図はもともと個人が研究資料として作成するのが基本で、とくに城の特徴をよく捉えた良質の縄張り図は、充分な経験と力量のある縄張り研究者でないと作成できない。それらは、専門的な研究書や調査報告書、研究会誌などに載っているのが普通なので、一般のお城ファンにはなかなか入手しにくい。
 その一方、趣味として城を歩く人たちは、現地を歩く際の、いわばガイドマップとして縄張り図をほしがる。こうして需要と供給のアンバランスが生じているところに、さまざまな歪みが生まれてしまう。以下は、そうした歪みの中で起きた、残念な話。
 東京近郊の某城には、地元の人たちが中心になって城跡の保存活用に取り組んでいる団体がある。その団体の中心メンバーが、僕の縄張り図を勝手にコピーして、城を訪れる人たちに配っているらしい。僕はある方からご連絡をいただき、その方から配布物を見せていただいて驚いた。
 僕の図は、隅のところに城名と所在地・作図者名と作図年月日を記入したラベルが付いているのだが、その作図者名が中世城郭研究会のN氏となっていて、図中には遺構名や矢印なども加筆されている。以下は、後で判明した話。
 以前に中世城郭研究会がその城の見学会を行った際、N氏作成の図を配ったのだが、例の人物は、自分たちは城跡の保存活用に取り組んでいる団体だと挨拶して、N氏から「何かあったら、この図を利用してもらってかまわないですよ」みたいに言われたらしい。
 その後、その人物は、ナワバリング編として出している僕の縄張り図集も入手し、なぜか僕の図を使いたいと考えた。ところが、僕の図集には複製・転載禁止と明記してある。そこで、西股の名前のまま使うのはマズイと考えて、作図者名をN氏に差し替えてコピー・配布したのである。
 N氏と僕とでは、その城の評価が違っている。というより、N氏は僕に反論するために自分なりの図を描いた、といってよい。それを、名前を差し替えて流布されたのでは、たまったものではない。
 何より、ネームラベルを差し替えるという行為は、N氏に対しても僕に対しても失礼千万ではないか。僕はこの件を、中世城郭研究会のメンバーに相談したが、皆やはり看過できない、という意見であった。N氏は当然、怒り心頭である。
 一方、例の人物は、周囲から「問題ではないか」と指摘されてマズイと思ったらしく、今度は自筆と称する図をバラ撒き始めた。これは、はっきりいってかなり粗雑な図であったが、曲輪の輪郭の取り方や堀幅などが明らかに僕の図と一致していて、どう見ても僕の図を下敷きにリライトしたものである。〈つづく〉

※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。
①歴史系WEBサイト『レキシペリエンス』連載のお知らせ

『レキシペリエンス』に西股が連載中の「見つけて楽しむ! お城のツボ」、第5回は「本当は怖い堀の話」。ホンモノの天守が残っている城は、全国でたったの12か所。でも、ホンモノの堀が残っている城は、全国にいくらでもあります。つまり、堀を見て面白い!と思えるようになれば、城歩きの楽しみは数千倍にふくらむのです!
 
②兵庫県立図書館の講座「明石城の軍事に迫る」
10月 1日(火)受付開始!

日  時 : 10月19日(土) 
13:30〜15:00 (13:00 受付開始)の予定

場  所 : 明石市・兵庫県立図書館(明石城のすぐ裏)
1階・第2会議室

要申込み : 兵庫県立図書館のホームページまたはFAXにて
受付期間 : 10月 1日(火) 〜 10月16日(水) 
 明石城築城400年を記念した月イチ講座「明石城に迫る」シリーズの第1回目ですが、明石城はいつ誰が築いて、どんな特徴があって、明石城のこんなところがスゴイ! みたいな話をするわけではありません。そーゆー話が聞きたい人は、第2回目以降をどうぞ。僕がするのは、鉄炮の普及が戦国の合戦と城造りにどのような影響を及ぼしたのか? 東国の土の城と織豊系の城とでは、鉄炮への対応がどうちがったのか? みたいな話。でも、みんな聞きたいでしょ、こういう話。

お申し込み :

(FAX) 078−918−2500 兵庫県立図書館

お問い合わせ:
(TEL) 078−918−3366 

定員50名とのことですので、お申し込みはお早めに!
 
③速報!

11月3日(日)に神保町で開催される「おもしろ同人誌バザール」にTEAMナワバリングが出店、西股も売り子しますよ。
11:00~16:00/入場無料

場所はベルサール神保町アネックス イベントホールです。
 城好きさんと、どんなふうに城めぐりを楽しんでいるか、みたいな話をしていたら、
「せんせーは、調査や研究で城へ行くときは、どんな所に泊まるんですか?」
と聞かれたので、
「ビジネスホテルか駅前旅館かな」
と答えたら、
「えっ!? 駅前旅館って、何ですか?」
と、びっくりされて、こちらがびっくりした。僕らの世代の縄張り研究者で、駅前旅館のお世話になったことのない人はいないのだが、どうやら死語らしい。
 
 こういうジェネレーションギャップを感じる昭和的死語の一つに、「三角ベース」がある。「三角ベース」とは、公園の片隅や空き地などで行う、草野球のしょぼいやつだ。
 野球ではベースは4つあって、正方形の内野(ダイヤモンド)を4人の内野手で守備する。ところが、ベースを一つ省略して内野を三角形にすると、2人で守れる。そもそもが公園の片隅や空き地でやるわけだから、外野も1人か2人。
 これだと、子供が10人も集まれば野球ができてしまう。ベースは、そこいらから拾ってきたベニヤ板の切れ端や、読み終わったマンガ本などが用いられたが、それでも昭和の少年たちは、空き地で魔球やら必殺打法やらの研鑽に余念がなかったのである。
 
 そんなことを考えているときに、書店でふと見つけたのが『野球消滅』(中島大輔著・新潮新書)という、ショッキングなタイトルの本。今の状況を放置すると、30年後には日本ではもう野球が見られなくなるかもしれない、と警鐘を鳴らす書だ。
 プロ野球も高校野球も、観戦するお客さんは増えてスタジアムは大入り満員だけれど、一方で野球にまったく関心を持たない層も増えている。高校野球では、多数の部員を擁する強豪校のレベルが上がる一方で、部員数が確保できない学校も増えている。
 全体とするなら、観る側も競技する側も二極化が進みつつあって、野球界を下支えしていた中間層が解体してしまい、子供が野球に触れる機会そのものが減って、競技人口は減少の一途をたどっている、と著者は指摘する。
 読んでいて感心したのは、「今どきの子供は」「最近の若い人は」的な書き方をしていないこと。大人たちが作ってきた組織や、社会や、地域の側に問題点を求めないと、建設的な解決策は打ち出せないことを、著者は肌感覚で理解しているのだろう。
 この本は、野球関係者だけでなく、いろいろな人にヒントになると思う。地元の城をもっとどうにかしたいと思っている人とか、歴史や城を地域の活性化につなげたい人。「最近の若い人は…」などとボヤいている人、なんかもね。
 
西股総生