いけ。いけ。いけ。いけ。
テレビの画面に食い付くように、戦況を見つめる。
いけ。いけ。いけ。いけ。
僕は強く願う。
皐月賞。いつもならばどの馬を軸にしようか、オッズはいくらか、距離適正はどうか、枠順や馬場状況はどうか、そんなことを考えてレース展開を読み、馬券を買う。
だけど、今日は違った。
僕は迷わず一頭の馬を買っていた。
なぜって……4月10日に帰らぬ人になってしまった藤岡康太騎手が、死んでしまう直前まで調教をつけていた馬だったから。
自分が乗らない馬(回ってこない馬も含めて)でも、本気で一生懸命、いい走りをする馬を作ろうという騎手だった。
僕はそこが好きで、よく彼の馬券を買っていた。
損得関係なく、馬や人やレースに、そして普段は見えない裏側にも真剣に向き合う男だった。
康太が作った馬だ。
この馬に、勝って欲しかった。
鞍上は東の戸崎騎手。
一流の腕、そして剣道も極め、心で感じてくれる騎手である。
騎手全員が喪章をつけレースに臨んだ、この土日。
皆、康太のことを思っている。
僕もだ。どうしてこんなに、あの騎乗姿を思い出すのだろう。あの笑顔を思い出すのだろう。
「行け―、ミラノ!!ジャスティンミラノ!!康太、康太、持ってこい、勝てーーーッ!!」
気が付けば叫んでいた。
僕がこんなに感情的になるなんてどうかしている。いや違う。どうかなるくらいに、彼の死は僕らを打ちのめしたのだ。
こんなに心が揺れて、正直週末の競馬を観るまでどうなるかわからなかった。
でも、やっぱり見始めたらそれは本当に魅力的だった。
ジャスティンミラノ号
皐月賞、勝利。
まず一冠。
最後の差は、康太の魂が押したのだと僕は思った。
だって、そこに藤岡康太がいたのだ。間違いなく最後の直線で彼の魂は、自らが鍛えまた作り込んでいた愛馬の背に乗っていた。
戸崎騎手のインタビューが全てだと、僕は思う。
「この差っていうのも……康太が後押してくれたんだと……つくづく思います。康太、ありがとう」
明日15日、栗東で彼の葬儀が行われる。
葬儀の前に、クラシックを獲りたかったのだろう。
勝負師であり、ジョッキーだから。
友道調教師が泣いていた。
スタッフが泣いていた。
そりゃあそうだろう。
僕だって……涙が止まらない……。
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