旅行記~神々の国を訪ねて
~空の旅~
日常から遠ざかっていくとき、
移動距離が長いほど、
移動速度が速いほど、
日常を忘れるスピードが、
二次関数のように加速していきます。
時間は光速度に支配された普遍的なものであるはずなのに・・・。
不思議な感覚です。
羽田を定刻に離陸したANA295便は、
出発前から到着地鳥取が低気圧の影響による強風のため、
最悪の場合、米子か伊丹に変更することもあるという、
アナウンスが流れていました。
東京は曇り、現地は弱い雨、
しかし、雲の上に出ると、
青空。
雲の存在を感じた一瞬です。
離陸後すぐに、富士山頂が雲海に浮かび、
「富士山が見えるよ。」
などと話しているうちに、
日本アルプスを過ぎ、
中国山地が見えると、
すぐに着陸態勢に入り、
シートベルト着用のサインが点灯しました。
眼下に日本海が広がっていました。
美しいブルーの海、
天気もそれほど悪くなく、
このまま無事に、
何事もなく、
鳥取空港に着くと思いました。
が、
着陸時、
かなり強い風が吹いていたため、
機体が大きく揺れ、
機内から叫びに近い声が聞こえました。
空港のゲートを過ぎると、
あちこちから安堵の声が聞こえ、
ツアーの添乗員も、
「こんなに揺れたのは初めてでした。」
と話していました。
実際、着陸後の機内アナウンスも、
「ご心配おかけ致しましたが、無事、・・・。」
と流れていました。
僕自身も、
一瞬、
乱気流に飲みこまれたまま、
無力な自分が、
このまま、
消えてしまうことも考えました。
~雨の砂丘~
悠久の時が作り出した自然、
長い時間をかけて、
岩石が削られ、
風に運ばれ、
堆積した砂丘でした。
しかし、
看板はあるけれどもそこにはらくだの姿は見えない、
雨のせいで砂紋も見えない、
ゴミまで落ちていました。(天然記念物なのに)
思っていたほどの大きさも感じませんでした。
短い砂丘体験が終わり、
商業ペースに完全に乗り遅れてしまった観光地の末路を見てしまいました。
というか、
僕自身があまりに商業ベースに振り回されているのかもしれません。
~お菓子の壽城~
コトブキの洋菓子かと思ったら(笑)、地元の和菓子の製造元でした。
和菓子や観光地に良く有るお菓子が並び、
地元の特産品も売られていました。
それにしても、
日本はどこに行っても、
同じようなお土産ばかり売られているのですね。
と思いつつ、
赤福に似た“とち餅”という生菓子を買いました。(赤福は好物なのです)
~瑪瑙~
出雲は神々の国。
三種の神器の一つ、瑪瑙で作られた曲玉を売る観光センターでも、
地方の悲しい一面を見たような気がします。
着いた時間も遅かったのですが、
なんだか、コンセプトが見えず(見逃したのかも・・・)、
やはり、
どこでも売っている水晶などの半貴石が並び、
興味を惹かれませんでした。
確かに自分自身、
東京という日本一のサービス業の発達した都市に暮らし、
それ相応のサービスを受け、それに慣れてきたせいか、
地方の対応の遅れを感じてしまいました。
しかし観光地には、
大都市に暮らす人々が数多く訪れるのですから、
やはり、冷え込んでいる地方といえども、
訪れる人のニーズを研究し、
訪れる人が楽しめるようなサービスを提供しなければ、
ますます、地方の経済発展は難しくなるのでは、
と強く思いました。
~温泉宿~
玉造温泉は“美人の湯”として有名だそうです。
(行くまで知りませんでした。)
温泉宿と言えば、
良質の源泉から引かれたお風呂と、
美味しい料理が、
“売り”になると思います。
もちろんサービスを提供する側の人の心は言うまでもなく、
大切なのですが、
それこそ、きちんと掃除が行き届いてさえすれば、
建物や設備が多少古くても、それは“趣がある”ということになるでしょう。
しかし、今回、泊まった宿は、
二つ欠けていました。
料理と掃除です。
致命的です。
どちらも、何より心を表すモノですから。
リピーターを生まないでしょう。
地元や近場から来るお客さんを逃しているのでしょう。
確かに1泊2日、往復の飛行機代、二日間の大型バス貸切費用、宿泊代金込みで
一人40,000円のツアーですから、ツアー会社の利益を考えると、
宿泊代金がかなり値切られてしまっているに違いなく、
これでは、豪華な料理は期待出来ません。
しかし、それはツアー参加者だって期待はしないでしょう。
(おそらくほとんどの人が・・・)
しかし、この宿はもうダメでしょう。
よほどの改革をしない限りは、
そして、
サービスは設備ではないということが分からなければ、
いずれ無くなってしまうことでしょう。
一緒に行った仲間も、
「お風呂は良かったけどね。」
と、皆が声を揃えて、言ってました。
夜は遅くまで、
話が尽きることなく、
眠ったのは、
日付が変わってからでした。
~足立美術館~二日目
横山大観や北大路魯山人の作品を数多く所蔵している
日本有数の美術館の一つと言うことでした。
枯山水庭園が周りの自然を借景として、
自然美を売りにしているようでした。
足立美術館庭園です。
残念ながら、日本画(特に水墨画を基本とした作品)に対して、
まだ知識も興味もなく、
すごい作品が並んでいるのでしょうが、
あと10年、理解するのは無理かなと思いました。
ちなみに、全く芸術に興味がないという訳ではなく、
横浜美術館でのルーブル展や、
上野の近代美術館でのバーンズ・コレクション展には行きました。
(ずいぶん前ですが。)
歳を取って歴史が面白く感じられるように、
日本画もそうかな、と思っています。
~松江~
小泉八雲で有名な城下町です。
ラフカディオ・ハーンの生い立ちや、
どんな人生を送ったのかを、
小泉八雲記念館で垣間見ることが出来ました。
今まで知らなかったことが分かるというのは、
うれしいことです。
もちろんインターネットで調べれば、
たいていのことは分かりますが、
その場所に行けたら、
それは幸せなことです。
現役のポストです。
お昼は、
八雲庵という蕎麦屋で、
鴨南饂飩と小割蕎麦を食べました。
「旅行に来て、一番美味しかった!」
と、全員が言っていたというのは言うまでもありませんが・・・。
趣のある処でした。
ツアーなので時間もなく、散策をしたとは言えませんでしたが。
~日御碕~
海抜60メートルの崖の上に建つ、
高さ40メートルの立派な現役の灯台があります。
ここは、海猫の繁殖地として有名な経島(フミジマ)もあり、
やはり時間の関係で経島を見に行っただけでした。
ただ、ここからの眺めはなかなか良いものでした。
人も車も少ないせいか、
空の色も、
海の色も、
東京近郊とは全く違っていました。
日御碕から経島を臨む日本海です。
~出雲大社~
最後の観光地でした。
古(いにしえ)の日本の伝説に出会える場所として、
ほとんどの人が認識しているのではないのでしょうか。
が、やはり滞在時間も少なく、
良さを感じるまでには至りませんでした。
出雲大社神楽殿5トンの七五三縄です。
もう少し、日本の伝承文化、古代史を勉強してから、
また行ってみたいと思いました。
以上が全ての訪問地です。
島根はのんびりした感じの人が多く、
住みやすいのかなと思いました。
~帰郷~
JAL1670便にて予定通り帰ってきました。
帰りは風も弱く、
何事もなく、
帰ってきました。
~昔を思う~
たった二日間で、
直線距離でもおよそ2000kmの旅でした。
明治時代以前なら、往復2ヶ月くらいを要する旅なのでしょう。
もちろん旅は目的地に行くことだけが目的ではなく、
その過程が大切なのであり、
これは人生に通ずるものがありますが、
味気ないという思いと、
こんなに遠くまで来られたという、
まるでタイムマシンに乗ったような気分になります。
高速移動をした時には。
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