つれづれ 1 啐啄同時 (そったくどうじ) | ティーチみやぎの「活動ブログ」|自閉症の子どもの自立支援

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宮城県仙台市を中心に、ティーチプログラムを活用して自閉症の子どもの自立支援を行っております。アメブロには、日々のティーチみやぎの日々の活動を記録して参ります。

私が支援学校で教員をしていた時のことです。ある年、小学部4年生の子ども6人をT先生と二人で担任することになりました。その時T先生は自閉症の子どもの支援について悩み、納得のいく自閉症支援を学びたいと思っていました。T先生は一緒に仕事をしている私に、自閉症の子どもについての質問を毎日するようになりました。少しの時間も惜しんで、子どものこと、自閉症について、TEACCHプログラムについて、具体的に支援の在り方について根掘り葉掘り聞いてくるのでした。
 ちょうどどその頃、県の子ども総合センターで支援者のための「自閉症療育実践セミナー」というワークショップがあることを知り、T先生も参加することになりました。そしてその研修会から戻るや、一人ひとりのための構造化による支援を実践し始めました。特にOさんのスケジュールを工夫し、自立課題をどんどん作り始めるや、Oさんが実に生き生きと自立して活動するようになってきました。T先生は自宅に帰っても教材研究に励み、朝とても早い時間に起きだして自立課題を作るようになったそうです。その頃からT先生は水を得た魚のようにTEACCHプログラムを学び、1年後には頼もしい先生になりました。
 当時、納得のいく自閉症支援を学びたいと熱望していたT先生。そして同じ教室にTEACCHの実践をしていた私、さらに子ども総合センターにTEACCHの普及に力をそそいでいた臨床心理士さんたちがいた。この三者がタイミングよくそろったことにより、T先生の学びが一気に広がったと考えられます。
 これが禅の教えにある「啐啄同時」(そったくどうじ)ということではないでしょうか。「啐」とは、今まさに生れ出ようとするひな鳥が内側から殻を懸命につつく様子。「啄」とはひな鳥の様子を察した親鳥が外側から殻をつつく様子。「啐啄同時」とは、この二つの動きが同時に起こることを指します。ここでは、学ぼうとするもの(T先生)とそれを手助けするもの(私や臨床心理士さん)の存在ではないでしょうか。
 その後T先生はさらにTEACCHプログラムを学びながら実践を積まれ、多くの自閉症の児童生徒や保護者、そして先生方から大いに頼りにされる存在になっています。そして今では本当のTEACCHを日本に紹介してくれる先生のいる大学で履修生として学びを深め、TEACCHについての最新の知見を私たちに伝えてくれるなど、かけがえのないTEACCHの仲間になっています。