それは、先週の月曜日の朝…。

 

我が家の前の道の向こう、徒歩1分しないところにトラムの駅がある。

街に行く方は、手前なので、ホームの向こうに渡らなくてもいい。

 

ホームにトラムを待っている人が立っているのがよく見える。

 

夫が、いつものように(数分、遅かったかな?)車で家を出て、

トラムのホームを横目で見ながら、右折しようとしていた時・・・

(雪の凍った道でもあることと細い道であることもあり、いつも徐行)

誰か(男性)が、ホームから道に下って、夫の車に近づいて・・・

そして、何やら話しかけている様子・・・で、

そして、なんと車に乗り込んだ様子・・・。

 

いったい誰だろう??? なぜ? 

トラムを待っている人の中に知り合いでもいたか?

いや、うちの車を認識しうるような人が、そうそういるわけはない。

大家さんのほか、せいぜい、お隣さんたちか?(裏庭の向こうのP氏、

お二階の家族のK氏、

その他だとしたら、夫が職場付近で見かける人たち(数人、顔見知りはいる

らしい)の誰かが、たまたまいたのか???

 

気になって仕方がなかったので、夫に、(職場についただろうと思われる頃)

SNSで、『駅で誰に話しかけられたの? 相乗り・・・』とメッセージを

送った。

 

結果・・・というか、事の次第は・・・。

 

話しかけてきた人は、まったくの見ず知らずの他人。

名前は、F氏。

一本前のトラムに乗りたかったらしいが、一歩、遅かった。

乗り遅れた。 

~~ 次のトラムも、夫の車が角を曲がって走り去った5分後くらいには来た

のだけど。まあ、間引かれることもあるので必ず来るとは保証されない~~ 、

 

それで、F氏は、とても困って、焦っていた。

会社の会議に間に合わない!!!と。

ちょうど、通りかかった夫の車🚙を見て、意を決したらしい。

呼び止めて、「街の方へ行くのか?」と聞いたのだそうだ。

運よく?夫の車は、徐行していたことと、私たちが日本人であること(?)も

あって、F氏の接近に気づき、止まった・。

 

「街の方に行くなら乗せて行ってほしい・遅れてしまいそうで、焦っている」と。

 

F氏いわく、普通、この国の人(スウェーデン人)は、こんなこと(見ず知らずの

車を呼び止める)しないし、呼び止められても、止まってくれない、、だそうだ。

だから、本当に、一か八か・・・

ラッキーだったと。

 

街へ行くためには橋を渡るのだが、その橋に行くまでには何通りか、行き方がある。

夫が、通常、よく使う道ではなく、朝の混雑を避けるために、曲がったところ、

ちょうどバスを一台、追い越した。

すると、F氏、

「!あ!思い出した。今日、息子は弁当を忘れて行った。弁当を渡したいのだけど、

 寄り道してもイイか?」と、おもむろにカバンを開けて、ランチボックスを見せた。

寄り道と言っても、その次のバス停にということ。

そこに、その息子が忘れたランチ(パンケーキとリンゴか何かが入っていたらしい)

ボックスを置いておくから、バス停でピックアっプするように追い越したバスに

乗っている息子に電話をかけた。

息子は、その先の、右側にある学校(高校)に通っている。

その後、無事、ランチを確保したと息子からF氏にも連絡がきたそうだ。

零下3度くらいだったと思うが、そんな日の、外気温にさらされるバス停に

ランチボックスを置いておく・・・すごい、アイディアというか荒業だ!

 

乗るはずのトラムに乗れたら、ランチボックスはどうなっていたのか?

それは分からないが、たまたま夫がそっちの方へ曲がったので、それを渡そうと

思ったらしい。そうでなければ、昼休みにでも、届にもどるつもりだったか?

 

この人の職場環境は分からないが、この国、かなりフレックスなので・・・。

 

ランチボックスを下ろした後は、一路、街へ。

橋を渡り、地下鉄の駅のある且つ車の駐車(一時停止)できる場所で

F氏を下ろしたそうだ。

 

F氏は、うちの前のトラムの駅の、もう少し向こう側にあるタウンハウスに住んで

いるご近所さんだった~見ず知らずの人だったけど~。

夫が日本人だと解ると、日本にも行ったことがある云々の話もしたそうだ。

F氏いわく、離婚して、息子が2週間に一度、会いに来る、と・・・。

息子は8年生。

F氏は、何度も何度も、「いや~助かった、ラッキーだった!」と夫に繰り返し

言ったそうだ。

 

シングル・パパは、以前、うちの半地下に住んでいた父子もそうだったので

この国ではよくあることだと解ってはいたけれど、8年生の息子が両親の間を

往復するという、ドラマでしか見たことのなかった親子関係をまた知った。

 

同じ島の高校に通っているということは、離婚した相手(F氏の息子の母親)も

同じ島にいるのかな・・・。そうじゃないと通学が大変だよね。

そんなことを考えた・・・。

 

 

とにもかくにも、無事、弁当も届けたし、F氏も彼の使える地下鉄駅そばで

車から降り、夫は、職場へ・・・。

 

なんとも、ありそうでありえない・・・「普通こんなことしない」と言いながら、

乗り込んできたF氏・・・。

 

お互い、よかったね。

そう、こういうのがお互い様っていうんだろうな。

 

帰宅した夫に、「来世では、F氏がきっと助けてくれるよ」と

笑ったのでした。

 

~ 了 ~ 

 

読んでくださって、ありがとうございました。

クリスマスだからというわけではありませんが、クリスマスは、、、

いわゆる助け合い(愛)の季節。

昔、小学校で、夏休みや冬休み、休みの前になると

休みにやることといって、「一日一善」という言葉が黒板に書かれた。

休み中も、周囲を気遣い、他人を思いやり、過ごそうねって・・・。

 

休みに限らず、そうありたいと思う今日この頃です。