今日は、40年前に知り合ったアメリカ人の友人Lさんの誕生日。

このご時世、エアメールではなくSNSを通して、ハッピーバースディ~♪。

 

40年前の6月のある日のこと・・・

到着したばかりの米国の寄宿舎にて、シャワーを浴びたいと思って

シャワールームに行ったのはよかったのだけれど、蛇口を右に捻っても

左にしても、何十秒待っても、お湯が出てこなかった。

赤とか青とか、蛇口に印があれば、赤い方を回していればお湯が出るんだろうと

推測できたけれど、色が剥げているのか???すべてステンレス色。

 

仕方なく、、、一度シャワールームから廊下に出て、誰かに尋ねようと

きょろきょろ・・・。

その頃、私の英語力は初心者マークのまま。

そこで出会ったのが、Lさんだった。

 

6月といえば、米国はすでに夏休みで、ほとんどの米国人学生は休暇に入り、

郷里に戻ってしまったか、どこかインターンやバケーションに行ってしまって、

キャンパスは閑散としていて、寮にも人がいるのかもしれないが静かだった。

 

私は【英語を学ぶコース】の外国人学生の一人で、夏休みの(米国人学生が

留守の間、寮の部屋がたくさん空くので)そのコースに到着したばかりだった。

Lさんは、たまたま一週間、残っていた米国人学生の一人・・・。

 

私が、シャワーのホットウォーターはどっちですか? 

~まあ、身振り手ぶりも併せて通じたに過ぎないと思うが~ と

尋ねてみた・・・どっちに回しても、水しか出てこない・・・と。

壊れているのなら仕方ないけれどと思いながら・・・。

 

その寮(女子寮のうちの一棟)にはシャワーは二つだけ。

どちらも水しか出てこないようだ・・・。

Lさんは、「こっちに回していれば、そのうちお湯が出てくるわよ」と

親切にも回して見せてくれた。

 

~ 確かに、壊れてはいなかった。

ここのシャワーも、この後、私の人生でよくお目にかかることになる、

ホットウォーターギザのシステムだったと思うが、ある程度の量のお湯が

使える量として決まっているのだが、パイプを通して蛇口に出てくるまで

時間がかかるし、それを水と調整して適温にしなくてはならない。

とにかく、、、しばらくだれも使っていないとお湯が出てくるのに時間が

かかったようだ。

 

この時の、ほんの少しの会話が、彼女の小さな親切が、どれほど私には

ありがたかったことか・・・。

 

日本語に、「初めが肝心」ということばがあるが、初めに失敗したり、

良くないことがあったりすると、「出だしに躓く」という。

英語には【get off on the wrong foot 】という言い方がある。

これは、はじめの一歩が、”違う(正しくない)足”から降りる”という意味

なのだが、どこかで、「朝、目覚めて、ベッドから降りるときに、いつもと

違う足から(床に)降りる・・・と、なんか違うなという変な感じがするろころ

からそういう言葉になった」というような話を聴いたことがある。

 

この、朝のベッドから降りた時の足(普段、右から降りるのに、その日は

左足の方を先に床についた=みたいな)だという解説が正しいかどうかは

解らないが、つまりは、最初の一歩が違う(感覚がずれる)ために、その後の

影響を受ける~(※)出だしでつまづく、、、というような意味であることは

間違いない。

 

さて、Lさんは彼女の取っていたコース(英語を外国人に教える教師になる

ためのコース)を終え、研修に出る前の数日だけキャンパスに残っていたの

だが、その数日の間に、私は彼女に出会い助けられ、少しだけ話をするように

なった。

ほとんど英語の会話らしいものができない私だったが、彼女が、その”外国

人に英語を教えるための教師”のインターンであったこともあり、親切に

おぼつかない調子の私の英語を根気よく聞いてくれた。

 

もし、この時、Lさんが不親切だったり、誰にもお湯の出のことを尋ねる

ことができなかったりしたら、私のこのキャンパスの印象はだいぶ悪いものに

なったと思う。

先行き真っ暗くらいの不安な気持ちに襲われ、米国人の印象や米国の学校の

施設について悪印象を持ったスタートとなっただろう。

 

人生、、、時々、そういう残念ながら、悪いスタートを切ってしまったために

その後、どうしても”好い”イメージに変えられず、悪い印象・嫌な感じを

持ったままの相手との関係を続けたり、物事を進めて行ったりということが

ままあると思われる。

 

私の知人のCさん(南欧の人)もそうだ。

残念ながら、彼女一家は、この街に越してきたばかりの頃、ご近所との間で

嫌なことがあり、それ以来、この国の人たちの悪い面ばかりが目についたよう

だ。それゆえ、ここで出会った外国人(私とか)との友人関係はうまく

行って、楽しい時間を過ごしてはいたものの、別の国に転勤(引っ越し)して

行くときまで、この国については苦い言葉で表現してばかりだった。

 

少し前に、来月去ってしまう友人Aさんを囲んで話をしていた際、

Aさんは、「私はこの国がとても好きだった(冬の暗さは辛かったけれど、

春や秋はきれいだし、困ったこともあるけれど、たいてい人々は親切だった・

等々)けれど、Cさんはこの国から去ることができて嬉しいと言っていた、

彼女たちは結局、この国を好きになれなかったね、」と話した。

私はその時、Cさんたち家族は、この国に着て間もないころの残念な出来事=

「got off on the wrong foot」によって、その後もずっと、この国の人と暮ら

しが嫌だと感じてしまうようになったにすぎない、それはとても残念なこと

だったと思う、たまたま”違う足”から始めてしまったんだ、と相槌をうった。

 

たかが第一印象、、、されど、大事な、はじめの一歩、第一印象だ。

 

人との出会いも、どこかでのイベントや何か出来事も、、、。

試験会場に向かう時、靴のかかとにガムがくっついて嫌な気持ちになって、

それが気になって試験に影響してしまうことも有るかもしれないが、

たとえば、慌てて転んだ時に誰かが助けてくれたりすれば、その嫌なことも

好い印象に変わって、がんばろ~と思えるかもしれない。

~たいてい、転んだりすると、運が悪いなと落ち込んでしまうけどね・~

 

Lさんとの出会いから40年。

もう、今後、私たちの人生で再会することはないと思うけれど、

それでも、彼女の40年前の親切は、今でも私にとって忘れられない。

彼女の親切は、私にとって大事な出来事として、英語が上達しなくて落ち

込んだりした私の気持ちを支え続けてくれた・・・。

 

小さな親切・・・大きな印象・・・気持ちの好転にも繋がっていく。

場合によっては、その人の国の印象、その人の民族の印象にさえ‥影響する。

 

小学校低学年の時、「行進時に、間違って右足から出てしまったり、リズムが

崩れた時に、もう一回、同じ足を踏むと次からは正しい方の足に戻る~」と

教えられた。

焦らず、、、もう一回同じ足を下ろす・・・同じ足を二回踏むというか・・・。

 

ほらね、直し方はちゃんとある。

 

できれば第一印象はいい方がいい。

でも、初めにつまづいてしまっても、次に直せる~、そう思うことも有りだ。

 

その先は、おそらく思っているより長いのだから・・・。

 

 

~ 了 ~

 

 

読んでくださって、ありがとうございました~。

 

 

蛇足)

※英語の辞典によると:[they make a bad start by doing something in 

completely the wrong way ] (=何かの拍子に、まったく違う方法で何かを

することで悪い始まりを切ることになる。

”彼は、遅刻したことで 私の両親との(関係の)出だしに失敗した(got off 

on the wrong foot)・・・”

~ 団体で行進する時に、通常、左足がはじめの一歩を踏むわけだが、

これが、右足から始めてしまうと、ずっと足並みがそろわない、周囲とも

合わないし、自分でも感覚がヘンだなということになるので、起床ベッド説に

こだわることもないかなと、最近思う・・・~ 

 

 

Lさんは、その後、研修のためカリフォルニアに発ち、私は彼女に手紙を

送った。彼女からも返事が来た。

その後、私の英語も少しずつ上達し、出会ってから数年後、一度、彼女が

住んでいたサンタ・クルスのLさんを訪ね、彼女のアパートに滞在した。

そして、今につながっていえる。

よく、人と人の繋がりの強さは、一緒にいる時間では計るのではない、と

言われるが、Lさんと私の間も、その一つだと考えている。 (了)