(1) 政府が紙幣を刷って、これを財源として、予算を組み支出する。
(2)中央銀行(日本銀行)が、紙幣を刷って、これを発行する。
現代の日本においては、(1)の政府紙幣発行は全く行われていないが、(2)の日本銀行が日本銀行券を刷って、これを世の中に送り込んでいる。
(1)の政府紙幣の場合は、通貨発行益が生まれる。
通貨発行益とは、例えば1万円札を印刷する場合は、1枚につき製造費用は約16円なので、1万円札を1枚発行すると、政府にとって、9984円の収益が生まれる。
(2)の日銀が1万円札を刷って、これを発行しても、通貨発行益は生まれない。
なぜ、日銀が発行するお金には、通貨発行益が生まれないのか。
旧日本銀行法第32条に「日本銀行は銀行券発行高に対し同額の保証を保有することを要す」とあるからだ。
保証とは、手形や債券などの金融資産のことだ。すなわち、日銀は手形や債券などを買い取るのと引き換えに、お金を発行することができるということだ。
これに対し、政府が政府紙幣を発行する場合、何も買いとらないまま、ただ紙幣を刷って、これを社会に対して使用するから、通貨発行益が生まれる。
一方、日銀のように資産を買い取ってお金を発行する場合は、通貨発行益の生まれようがない。
なぜなら、買い取った手形や債権は、日銀のバランスシート上、資産の項目に記入され、それと引き換えに発行した日銀券は、バランスシートの負債の項目に記入されるからだ。
すなわち、日銀が発行したお金は、日銀にとっては負債になるのであるから、当然、通貨発行益が生まれるはずがない。
そんなものは、単なる一応の取り決めに過ぎないのではないか、と考えるだろうが、しかし、この単なる取り決めに、日銀は、がんじがらめに縛られて、身動きが取れないのだ。
いや、日本国全体が、大変な損失を被る結果なるのだ。
それは、日本が戦後、急激に経済成長し、生産力が著しく増大したことと深く関係する。
1955年の日本の国内総生産(GDP)は、約8.6兆円でしかなかったが、それから42年後の1997年には、国内総生産は521兆円に増大している。
わずか半世紀足らずで、生産力がおよそ60倍になっているのだが、これは凄まじいほどの生産力の増大であり、経済の発展である。
生産力が増大すれば、生産されるモノ、サービスの量が増えるのだから、当然、それを売り買いするお金の量も増えなければならない。
そこで日銀は、大量の金融資産を買い取って、お金を大量に発行したのであるが、実に残念なことに、通貨発行益のないお金を発行してしまったのだ。
日銀は、大量に金融資産を買い取ったが、その金融資産は、民間が発行するものだけでは不足するようになり、次第に国が発行する金融資産、すなわち国債を大量に買うようになった。
そして、そのためには、国(政府)に国債を大量に発行してもらわなければならないことになる。
そうでなければ、著しく成長する日本経済、およびその生産力の増大に、見合うほどの大量のお金を発行することができない。
国債とは、国(政府)が、税収以上に歳出をするために発行していると、多くの人は考えているだろうが、実はそうではない。
世の中のお金の量を増やすために、発行しているのだ。
なぜそうなるのかと言えば、日銀は民間企業と同じように、バランスシートと言う帳簿を元にして、お金を発行するからであり、そのお金には通貨発行益がないからだ。
正しいお金の発行の仕方は、政府による政府紙幣の発行でなければならなかった。そうすれば通貨発行益が生まれていたのであり、今日あるような1千兆円と言う国債残高は生まれていなかったのだ。
