財務省が頑強にこだわる「財政均衡主義」とは、政府は税収の範囲内で、財政支出をしなければならないと言う考え方です。

言い換えれば、国債を発行して借金をしてはならないと言うことです。


しかし、よく考えて欲しいのですが、国民から税を集め、そして財政支出としてその集めた税を、再び国民に戻すと言うことを繰り返すだけなら、日本に出回るお金の量(貨幣量)は、全く増えないはずです。


貨幣量が増えなければ、経済成長は実現できません。

貨幣量が増えて、国民全体の所得が増えてこそ、モノやサービスを買う総額も増えるからです。

科学、技術が絶えず進歩し、国全体の生産力が向上する時代にあたっては、生産されるモノ、サービスの量も増えるので、それを購入するためには、人々の所得が増えなければなりません。


そして、所得が増えるためには、当然、日本全体の貨幣量も増えなければならないのです。

したがって、「財政均衡主義」は、経済成長を否定し、不可能にする考え方なのです。


ところが、そうであるにもかかわらず日本では、現実には貨幣量もGDPも増えています。


1967年から2023年の56年間で、貨幣量(マネーストックM2) は40倍に、又GDPは12倍に増えています。これは一体どうしたことでしょう。


「財政均衡主義」を忠実に守っていたら、確実に貨幣量もGDPも停滞したままだったでしょう。


では、なぜ増えたのでしょう?

それは、政府が毎年のように国債を発行して、巨額の財政赤字を積み上げてきたからです。

なぜなら、政府が国債を発行すると、そのうち約半分を銀行が買います。銀行が国債を買うと言う事は、政府が銀行からお金を借りることになるのです。


銀行は、「信用創造」によってお金を貸します。

「信用創造」とは、銀行が無から有を生み出すように、新たにお金を生み出して貸すと言うことなのです。

したがって、銀行が国債を買った額だけ、世の中の貨幣量は増えるのです。

この仕組みによって、貨幣量(マネーストック)は、56年間で40倍に、額にして実に1200兆円も増えたのです。

そして、このことによってGDPの成長12倍も達成できたのです。


ちなみに、貨幣量(マネーストック)は、銀行の信用創造以外では、全く増える事はありません。

これに対して、反論が起きるでしょう「何を言うか、日本銀行が紙幣(日本銀行券)を発行しているではないか!!」


なるほど、しかしこれが、人々の勘違いの始まりです。

日本銀行は、確かに日本銀行券を発行しますが、それを銀行に送りこむだけで、後は何もしません。それから先は銀行任せです。

すなわち日銀は、直接世の中にお金を送り込む事はしないのです。(何しろ、日銀の職員が、民間人に直接お金を配るところを見た人はいないでしょう。)


したがって、銀行が日銀から送り込まれたお金を、民間に貸し出しした時、初めてお金は世の中に出ていくのです。(もし、銀行が貸出をしなければ、お金は銀行に溜まったままです。)


なぜそうなるのか? その理由は、日本は「管理通貨制度」を採用しているので、日銀は紙幣(日本銀行券)を銀行にしか送り込めないのであり、世の中に直接送り込むことができないのです。


したがって、「管理通貨制度」においては、政府がお金を発行するためには、国債発行と言う借金の形をとる以外に方法がないのです。

よって、政府の「国債発行」は、「通貨の発行」と同等なのです。


再び反論が起きるでしょう。

「しかし、そうは言っても、国債は国の借金なのだから、必ず返さなければならない。」と。

いえ、返さなくて良いのです。

なぜなら、国債は立派な金融資産として、社会に受け入れられているからです。

国債は国が発行する債券なので、これほど安全な資産はありません。

その上、当然利子がつきます。現金には利子がつきません。

したがって、利子のつく国債のままで保有したい者が多数います。


銀行や保険会社等は、預かったお金を運用する上で、国債ほど確かなものはありません。

さらに、国債を現金に変えたい場合は、「国債市場」でいつでも簡単に売却することができます。

国債を買いたいものはいくらでもいるのです。

現在、1千兆円以上の国債発行残高がありますが、これらは立派な金融資産として、世の中に流通しているのです。

これを全て返済してしまうと、日本の金融及び経済は、大混乱をきたします。


そもそも、日本経済は、日々進歩発展する生産力と、貨幣量及び金融資産とのバランスが、うまく取れていれば良いのです。

そして、そのバランスを的確に表す指標は、「インフレ率」です。

日本が30年間、デフレに苦しんだ理由は、需要を産む「貨幣量+金融資産」が不足していたからです。

したがって、まだまだ国債の発行が足らないと言うことです。

以上が、積極財政が必要な根拠です。