国内総生産(GDP)とは、国内で生産したモノ、サービスのうち買ってもらえたモノ、サービスの総額のことです。(海外との取引は無視する)
国内の生産能力を表したものではありません。どんなに生産能力が高くても、買ってもらえなければ無駄になるので、生産者側は買ってもらえると予測できる量しか生産しません。
したがって、GDPとは国全体の生産能力を表す指標ではなく、国民全員の買うことのできる能力、すなわち、国民全員の所得の合計額に相当します。
そうであるので、国民の所得が増えなければ、GDPも決して増える事はありません。日本はこの30年間、国民の所得が増えたでしょうか?いいえ増えていません。
何しろ、労働者の所得(賃金)が全然増えていないのだから、日本のGDPが増えるはずがありません。
ものすごく当たり前の事ですが、持っているお金以上に、ものを買うことはできないのです。
日本は、生産性が向上しないからGDPが増えないのではありません。賃金が増えないからGDPが増えないのです。
この単純なことがわからないので、経済学者も政治家も、日本は何とかして生産性を上げなければならない、などと大間違いを平気で言います。
設備投資が少ないとか、デジタル化が遅れているとか、労働者の能力(スキル)をもっと高めなければならないとか。
これらは全て大間違いで、日本の生産性は非常に高いのです。ただただ、賃金が上がらないのでGDPも増えないのです。
それでは、なぜ日本では賃金が上がらないのか?
科学、技術が著しく進歩発展したからです。これはパラドックスのように思えるでしょうが、よく考えてみてください。
科学、技術が進歩すれば、機械、コンピューター、ロボットなどの生産設備が、優れた能力を発揮して、大いに生産を高めるようになります。
そうなれば、一国全体の生産能力は著しく向上していきます。生産能力が向上すると、労働者の賃金も当然上がると、普通は考えるでしょうが、事実はその反対になります。
なぜなら、人間の代わりに機械、コンピューター、ロボットが仕事をしてくれるからです。それも人間よりもはるかに高度な技能を発揮し、人間よりもはるかに早く仕事をこなします。
要するに、人間の代わりに人間以上に優れた生産活動をするので、人間の労働の価値が低下します。
企業は競って機械、コンピューター、ロボットを導入し、不要になった労働者は削減するでしょう。残った労働者も、機械、コンピューター、ロボットの補助的作業しかこなさなくなるので、当然高い賃金を与える必要はなくなります。
以上が、賃金が上がらない理由です。
科学、技術が著しく進歩発展したために、賃金が上がらないのであり、したがって、GDPが増えないのであり、経済が成長しなくなったのです。
本末転倒も甚だしいではないですか。
本来、人々が豊かになるために、科学、技術を発展させたのではなかったのか?ところが、現実は逆に貧しくなっているのです。
人間が、科学技術の進歩を豊かさに結びつけることができないからです。
機械、ロボットが人間以上に働くようになれば、人間の労働価値が低下し、賃金が下がるのも当然ではないですか。どうして誰もこのことに気づかないのでしょうか?
政治家も学者も、生産現場の急速な進歩になぜ目を向けようとしないのでしょうか?
製造業だけではなく、サービス業においても、凄まじい進歩を我々は目にしているはずです。
スーパーのレジは、自動かもしくは半自動になっています。銀行に行けば、ATMが客の取引に対応します。大きな病院では、機械が診察券を受け付け、料金の支払いも機械が対応します。
人間の仕事が、どんどん奪われているのです。
ところが、多くの人々は以上の説に対して、疑問を持つでしょう。
そんなに機械、コンピューターが発達して、人間の仕事を奪ったと言うなら、なぜ現在の日本は「人手不足」と盛んに言われるのかと。多くの生産現場で「人手不足」と言う言葉が、聞かれない日はないほどではないかと。
なるほど、これには複雑な「カラクリ」があるのです。
玄田有史著「人手不足なのになぜ賃金は上がらないのか」と言う本にその説明があります。
「中小零細企業では、過酷な労働の割に賃金が安いので、せっかく就職しても短い期間で辞めてしまう者が多い。企業は何度も新たに募集をかけるので、求人倍率は必然的に高くなる。これが人手不足と言われる社会現象の実態である」と言うことです。
そもそも、本当に人手不足なら、労働力の奪い合いが起きるので、いやでも賃金は上がるはずです。
さて、GDPが増えない理由は、賃金が上がらないからであり、その根本原因は、科学技術が著しく進歩したからだと言うのであれば、一体どうすれば良いのか?
もはや、民間の力ではどうすることもできません。政府に力を発揮してもらいましょう。
機械、コンピューター、ロボットが発達して、大いに生産能力を高めているのに、その高い生産能力を正しく賃金に反映することができないのであれば、政府が失われた賃金の補填をするのです。
その補填の仕方は、減税と給付によるのです。そして、高い生産能力にふさわしい所得を、国民に与えるのです。
デフレから完全に脱却できるまで、これを続けるのです。永久に続けるわけではありません。
そして、その財源はもちろん国債発行です。国債を発行すると、およそその半分は銀行が買います。この時、銀行は信用創造によってお金を生み出し、国債を買うのです。
すなわち、銀行が国債を買った額だけ世の中のお金の量が増えるのです。このお金を政府は、減税と給付に当てれば良いのです。
そもそも、政府には「通貨発行特権」があるのです。このようにして、科学技術の進歩による高い生産能力に、国民の所得を一致させれば良いのです。
これ以外に、デフレ不況を解消する方法はありません。
以上はMMT の説明でもあります。
