日本の経済成長が、ストップしてしまったのは、賃金が上がらないことが原因であると、ようやく政治家たちは気づいたようです。

人々の賃金が増えなければ、当然日本全体で、ものを買うお金の額も増えようがありません。

買う額が増えなければ、GDPも増えません。せっかく、国全体の生産力が向上しても、生産する側は買ってもらえなければ、何にもならないので、生産を縮小する以外にありません。


これが、日本のGDPが30年間停滞したままである理由です。

要するに、日本国民の持っているお金の量が少なすぎるのです。


ところが、実に不思議なことに、GDPが増えないのは、生産力が向上しないからと、考える人たちがあまりに多いのです。

そんな事はありません。日本は、機械化、コンピューター化、ロボット化による生産性の向上は素晴らしいものがあります。

工場などの生産現場を覗いてみれば、よくわかります。

いくら生産性が向上して、たくさんモノ、サービスを生産しても、日本国民全体が買うだけの十分なお金を持っていなければ、ものを買うことができません。そしてGDPも増えません。


そこでまず、賃金が上がらなければならないが、どうすれば賃金は上がるのでしょうか?

その前に、「マネーストック統計」と言う日本銀行が公表する重要な統計について、考えてみる必要があります。

マネーストックとは、世の中に出回るお金の総額のことです。


日本は、1997年以降、経済成長(GDP)がストップしてしまったのですが、1997年から現在までの26年間の「マネーストックM2」の伸びを見ると、約2倍に増えています。

2倍に増えれば、充分なように思えますが、それでは1997年より以前の、経済が順調に成長していた時代の26年間(1970一年から1997年)の「マネーストックM2」の伸びを見ると、なんと約10倍に増えているのです。

そして、この26年間のGDPは、約6.3倍に増加しています。もちろん、この時代、賃金は毎年必ず上昇していました。


以上をまとめると、

1997年より前の26年間

  マネーストックは10倍増

  GDPは6.3倍増

1997年より後の26年間

  マネーストックは2倍増

  GDPは1.2倍増

(日本銀行「マネーストック統計」

内閣府「国民経済計算確報」より)


両者を単純に比較してみると、マネーストックが大きく増えると、GDPもそれなりに増えるが、マネーストックが2倍に増えた程度では、GDPはほとんど増えないようです。

大体、この20年、30年の間に大企業の内部留保は大幅に増えていますが、マネーストックの2倍増は、ほとんどこの内部留保にまわって、一般社会には流れ込んでいないようです。


まず、一般社会に流通するお金の量が、増えなければ、賃金も上がりようがありません。世の中に流通するお金が増えてこそ、賃金も上がるのです。


現在、盛んに人手が足らないと言われているが、中小零細企業は、賃金を上げることによって、人を集めようとしても、潤沢な資金がないので、上げようがありません。

要するに、中小零細企業は、儲からないので、賃金を上げたくてもあげることができないのです。

なぜ儲からないのか?

それは、人々の賃金が上がらないので、消費が増えないからです。


実に[賃金が上がらない] →[消費が増えない] →[中小零細企業が儲からない] →

[賃金を上げることができない]です。


日本は、どうしようもない悪循環が、30年も続いているのですが、その大元の原因は、世の中に出回るお金の量(マネーストック)があまりにも不足しているからです。

先の統計で見たように、1997年以降のマネーストックの増加は、2倍ではなく10倍ぐらいは必要だったのです。

世の中に出回るお金の量が増えてこそ、初めて日本全体の企業の賃金を上げることができるのです。


ものすごく単純なことですが、日本中でお金が不足しているんです。日本は重い金欠病にかかっているのです。これではどうしようもありません。


お金を増やす方法は、「銀行の信用創造」によるしかありません。

銀行から多額のお金を借りて、そのお金を世の中に注ぎ込むのです。

民間が借りなければ、もはや政府にしかできないことなので、政府はこれまで以上に国債を発行して、銀行に買ってもらい、それを財源にして財政出動すればいいのです。

まず、金欠病を治すのです。

国債の発行は、貨幣の発行と同等です。

国債発行残高は、政府はいくらお金を発行したかと言う記録でしかありません。

国の借金ではありません。

金欠病を直さないで、どんな手を打ってもダメです。