戦後の日本は、著しく生産が増大し、モノやサービスの量が増えて、国民は豊かになりました。
この場合、生産の増大に合わせて、お金の量も増やさなければなりませんでした。そして、本来、最も適切なお金の増やし方は、政府が紙幣を刷って増やすと言う方法でした。
1万円札なら、1枚印刷するのに、十数円費用がかかりますから、残り9,900円以上が政府の収益となります。この収益は、通貨発行益と呼ばれるもので、政府だけが、通貨を発行する権限を持ち、通貨発行益を得ることができます。
政府は国民の代表であり、国民の福祉のためにこの収益を使うことができます。
すなわち、道路や橋を作り、公共の建物を建て、あるいは、医療費や年金などの社会保障費に使うことができます。
政府は、国民から税を徴収し、これを国民のために使いますが、それだけではなく、通貨発行益も使うことができるのです。
ただし、通貨発行益は、生産が増大したときにしか生まれません。なぜなら、生産が増大しなければ、紙幣を新たに刷って増やすことができないからです。
生産が増大しないのに、お金を刷って増やすと、たちまちインフレとなり、国民が苦しむことになるからです。
しかし、生産が増大したなら、政府は必ずこの通貨発行益を利用しなければなりません。生産の増大に合わせて、お金を増やしたのであるから、インフレにはならないからです。
政府が、紙幣を刷って生み出した通貨発行益は、まるまる国民の利益となります。
ところが、驚いたことに、政府は1度も紙幣を刷って、通貨発行益を得ることをしませんでした。そのかわり、政府がした事は、国債を刷って、国民からお金を借りることでした。すなわち、借金をしたのです。言い換えれば、マイナスの貨幣を発行したのです。
生産が増大し、モノやサービスの量が増えたのであるから、世の中にプラスの価値を持つものが増えたのです。
そうであるなら、お金の種類も、当然プラスの価値を持つもの、すなわち、通貨発行益のあるものでなければ、道理が合わないでしょう。
しかし、政府はマイナスの貨幣である、国債を発行したのです。

戦後、日本は著しく生産が増大し、国民は豊かになりました。しかし、われわれは、モノやサービスの量に関しては豊かになったが、お金の面でとても貧しくなってしまいました。なぜなら、ほぼすべての国民は、国は一千兆円もの借金を抱えていると、思い込んでいるからです。
しかし、これは、お金の出し方を間違えてしまっただけで、実質的には、借金ではありません。

国会では、緊縮財政派が圧倒的に多いので、増税して、歳出削減することばかり議論しています。彼らは、プラスの貨幣を発行すべきところを、間違えて、マイナスの貨幣を発行してしまったことに気づいていません。
緊縮派は、お金の計算しかしません。彼らは生産が著しく増大したことに、全く目を向けていません。
経済の実体は生産です。お金は、生産に合わせて、適切に発行すればいいのです。生産が主であり、貨幣は従です。ところが、緊縮派は、お金が主であり、生産は従であると考えているのでしょう。
まったく、本末転倒です。

戦後の日本は、人類史上、希有なほどの生産の増大があったのです。70年間で、国内総生産(GDP)が、約70倍以上になると言うほどの増大でした。
考えてみれば、政府の貨幣発行の対応の仕方に、混乱が起きても、無理のないことだったかもしれません。しかし、もう、今となっては、この対応の間違いに気づかなければなりません。
日本国民全員が「国の借金一千兆円は、途方もない勘違い」ということに気づかなければなりません。
なお、日銀には、貨幣発行の権限がありません。日銀は、債権や手形などを買い取らなければ、日銀券を発行することができないからです。