政府は毎年のように国債を発行していますが、これを多くの人々は、政府(国)の借金であると、信じて疑いません。
しかし、これはとんでもない大間違いです。
国家において、通貨を発行する権限を保有しているのは、唯一政府のはずです。その政府に巨額の借金があるとは、一体どういうことなのでしょうか?
これは途方もない矛盾、と言うものではないでしょうか。
そもそも日本において、お金(通貨)を発行しているのはどこでしょうか?
「それは、日本銀行に決まっているではないか!」と言う答えが返ってくるでしょう。
いえいえ、これがそもそも間違いなのです。確かに、日本銀行はお札(日本銀行券)を印刷し、これを発行しています。しかし、日本銀行は、お札を民間銀行に送り込むだけであって、それから先は何もしません。
日本銀行は、民間銀行から手形や債券などの金融資産を買い取るのと引き換えに、その代金として、日本銀行券を民間銀行に支払います。これで終わりです。
後は、民間銀行がその受け取った日本銀行券を、企業や個人に貸し出すことによって、お金は世の中に出ていくのです。
もし銀行がお金を貸さなければ、お金は銀行に溜まったままになります。
したがって、実質的にお金を発行しているのは、日本銀行ではなく、民間銀行と言うことになります。
その証拠に、日本銀行が直接世の中の人々に、お金を配って回るところを見た人はいないでしょう。
以上が、わが国における通貨発行の現実なのです。
ただし、日本銀行は金利を操作することはできます。
金利を下げれば、人々は銀行からお金を借りやすくなり、世の中にお金が出て行きやすくなるので、マネーストック(世の中に出回るお金の量)は増えます。
反対に、金利を上げると、お金を借りにくくなり、マネーストックは減るでしょう。
日本銀行は、この金利操作によって、間接的にマネーストックを調節することはできます。
しかし、この方法は万能ではありません。その良い例がアベノミクスです。
「異次元の金融緩和、ゼロ金利政策」によって、マネーストックを増加させ、2年で2%のインフレを引き起こすと歌いましたが、結局10年以上たっても、デフレ不況から抜け出すことができませんでした。
ところで、現代は科学、技術が長足の進歩を遂げつつあります。情報通信革命(IT革命)は既に終え、AIやDX (デジタルインフォメーション)と言われる第4次産業革命の時代に突入しつつあります。
これらの優れた技術革新の成果は、いち早く産業界に取り入れられ、国全体の生産能力は著しく向上しつつあります。すなわち、生産されるモノ、サービスの数量は格段に増大しているのです。
そうすると、マクロ経済(国全体の経済)と言う観点から見た場合、生産力(供給力)が高まるのであれば、それにふさわしい需要が生まれなければ、供給と需要のバランスがうまくとれなくなり、この場合はデフレ不況に陥るでしょう。
したがって、供給力にふさわしい需要を、国全体が持たなければなりません。需要とはすなわち購買力です。ものを買うお金が充分あるかどうかです。
供給力(生産力)が高まるのであれば、それに合わせて、政府は通貨を発行し、供給量と貨幣量のバランスをとれば良いのです。
もちろん、高いインフレにならない範囲で通貨を発行するのです。もしこれを行わなければ、この国は必ずデフレに陥ります。
日本が30年間、デフレ不況から抜け出せなかったのは、供給量に対して明らかに貨幣量が不足していたからです。
本来、政府が通貨を発行しなければならないのに、実質的には通貨を発行することができるのは民間銀行なので、もし、企業や個人が銀行からお金を充分に借りないようであれば、代わりに政府が銀行からお金を借りて、貨幣量(マネーストック)を増やす以外にないのです。
これが「政府による通貨の発行」になるのであり、政府はこれ以外に通貨を発行する方法がないのです。
さて、政府が国債を発行すると、その約半分を民間銀行が買います。これで銀行からお金を借りたことになり、その分貨幣量(マネーストック)が増えるのです。
大変奇妙なことですが、これが政府による「通貨発行」であり、「国債発行」とは、すなわち「通貨発行」と同等なのです。
したがって、通貨を発行すれば、財政が赤字になるしかないのです。
政府が、マクロ経済に必要な通貨の発行を行うと、制度上あるいは会計上、巨額の財政赤字が生まれるだけで、本当はそんなものは無いのです。見かけ上のものに過ぎないのです。マボロシです。
日銀が公表する統計に「マネーストック統計」と言うものがあります。
日銀は、1967年から毎年この統計を公表していますが、1967年の「マネーストックM2」は約30兆円でした。日本全体のお金の総額が30兆円と言うことです。
ところが、2025年の「マネーストックM2」は約1260兆円です。なんと58年間で1230兆円も増えているのです。
この1230兆円はなぜ増えたのかと言うと、企業、個人が銀行からどんどんお金を借りたおかげもありますが、それだけではなく、政府が巨額の国債を発行して、銀行からお金を借りているからです。
それでもなお、この30年間、日本がデフレ不況から抜け出せなかったのは、政府による国債発行が、まだ足らないことを意味しています。
科学、技術がとどまることなく、進歩発展し、生産力が絶えず向上する社会にあっては、必ず国全体の貨幣量は増えなければ、経済成長は達成できません。
その貨幣量が増えるために、政府は国債を発行したのであるから、これは経済成長に貢献したのであり、「国の借金」と考えるのは大間違いです。
国の中で唯一、通貨を発行する権限を持っているはずの政府は、経済の成長に合わせて通貨を発行するのは、極めて重要な仕事(役割)なのです。
財政均衡主義では、世の中のお金は増えません。
財務省は、財政均衡主義を固くなに守ろうとしています。しかし、よく考えてみると均衡財政では、世の中のお金の総量(マネーストック)は増えません。
すなわち、税として国民からお金を集め(歳入)、そのお金をそっくりそのまま歳出するわけであるから、同じ額のお金が政府と国民の間を行ったり来たりするだけで、お金の増える理由が全くありません。
もし政府が、財政均衡主義を貫いていたら、過去58年間で1230兆円のマネーストックは増えなかったはずであり、経済成長も1967年のままでストップしていたはずです。
財政均衡主義は大間違いです。
