科学が進歩し、技術革新が起きると、当然国全体の生産力は向上します。

しかし、生産力が向上すれば、働く人々の賃金が上がるかというと、決してそんな事はありません。

むしろ、賃金が下がる原因になるのです。


モノを生産する工場の中を覗いてみましょう。

コンピューター内蔵の機械が、プログラムに従ってものすごいスピードで、しかも正確にものを生産していきます。

この機械を操作する人間は、特に高度な技能を身に付ける必要はありません。なぜなら、機械がほぼすべての工程をこなしてくれるので、人間自体は、時々機械の調整をする程度の仕事しかしないからです。


要するに、機械が優秀になれば、人間はそれほど優秀である必要はありません。

かつてのような、年月をかけて高度な技能を習得した「熟練工」と言うような人たちは、今はあまり見られなくなりました。

人間を雇う側(会社側)としては、熟練工には高い給料を出したものでしたが、現在のように、機械の補助や調整をする程度の、誰にでもできるような仕事をする人間には、高い給料を払う必要はないでしょう。


建築現場を見ると、作業員が建材をトラックで運んできて、瞬く間に家が出来上がっていきます。

よく見ると、寸法通りに作られた建材を、ポンポンと組み立てているだけのようです。

あらかじめ、工場のコンピューター式の機械で、建材を正確に製造しているからです。かつての大工は、それこそカンナがけ何年、ノコギリ引き何年と言う修練を積んで、ようやく一人前の大工さんになったものでした。

こういう優秀な大工は、高い賃金を受け取ったでしょうが、今の組み立て作業員には、そんな高い賃金は出ないでしょう。


スーパーに行くと、セルフレジ、もしくは半セルフレジのところがほとんどです。

かつてのレジ係は、商品の値札を見ながら、ものすごいスピードで、レジのキーを打っていたものですが、今の半セルフレジは、店員が「バーコード読み取り機」を当てているだけです。

後は、客が機械にお金を入れて、釣り銭を受け取っています。

このレジ係は、何の技能もいらないので、あまり高い給料はもらえそうにありません。


どこの会社にも、経理係がいますが、会計ソフト、給与ソフト、税金ソフトさえあれば、これをパソコンに入れて、必要な数字を打ち込めば、たちまち帳簿が出来上がります。

簿記や会計の資格を持つ人間は必要なのでしょうか?

などなど、他にもたくさんありますが、キリがないので、これぐらいにしておきましょう。


どうも、機械、コンピュータが進化すればするほど、人間は、だんだん「でくのぼう」でも良くなるようです。

その上、機械、コンピューターが人間の仕事を奪っていくので、人が余る状況が進みます。そうなれば、ますます賃金は上がりにくくなります。(前回のブログで述べたように、日本は人手不足ではない)


さて、賃金が上がらなければ、日本経済はどうなるのか?

[働く人たちの賃金の合計額+企業、自営業者の利益の合計額] が日本のGDP(国内総生産)を決定します。

すなわち、これらの合計額以上には、GDPは決して増える事はありません。

現実にも、1990年代後半から、賃金が上がらなくなると、それに連動してGDPも増えなくなりました。


我々は、どんな底なし沼にはまり込んでしまったのか?

科学技術が進歩発展すればするほど、貧しくなると言う底なし沼です。

これからは、AIの時代になります。

その上、現在研究開発中の「量子コンピューター」が完成すれば、今のコンピューターの何万倍と言う計算速度になります。

「量子センサー」が完成すれば、車の自動運転は、一挙に現実化します。

人余りは、ますます加速するでしょう。


技術革新のスピードは、恐ろしく早いのです。そして、マクロ経済に、とてつもない影響を与えます。

すなわち、賃金はますます上がりにくくなり、日本はどんどん貧しくなるのです。


さて、科学技術が進歩発展すれば、本当は豊かになるはずなのに、そうならないのは我々が、科学技術の発展を豊かさに結びつけることができていないからです。

機械、コンピューターの性能が高くなれば、当然人間の仕事を奪い、あるいは、人間の高い能力を必要としなくなるでしょう。

そうなれば、人間を雇う側は、賃金を下げようとします。

これは「自由な経済」においては、企業の当然の行動であり、誰も責めることができません。

もはや、[民間の力] ではどうすることもできないのです。


そうであるなら、民間ではない別の強力な権限を持ったものが、登場して力を発揮しなければなりません。

そのものとは「政府」以外にはありません。どうするのか?

生産力は高まる一方であるのに、賃金が上がらないので、消費(需要)が上がらない状態、すなわち、30年も続く構造的デフレーションを打開すればいいのです。


その方法は[減税] と[給付] によって、生産力に見合った所得を国民全体に与えるのです。

上がらない賃金の、その不足分を政府が補填するのです。そして、生産力(供給力)と消費(需要力)を一致させればいいのです。

その財源は、もちろん国債発行です。

この一致した状態が、マクロ経済にとって、最も良好で健全な状態だからです。

その時、国債発行によって生まれる財政赤字は、政府の通貨発行の記録でしかないので、気にする必要はありません。

これを気にして、最も良好な経済状態をダメにする方が、よほど愚かなことなのです。それでは、日本経済は永久に立ち直ることはできません。


何しろ、AIや量子コンピューターの時代が来るのです。日本はもっともっと貧しくなりますよ!!


以上は「MMT 」「ベーシックインカム」「れいわ新選組の経済政策」の具体的な説明になるはずです。