そんなバカなと思うだろうが、ここに立派な証拠があるのです。

それは、日本銀行が発表する「資金循環統計」です。


この統計は、日本の経済主体を部門別に分類し、それぞれが保有する、金融資産と金融負債を「極めて詳細かつ包括的に記録」したものです。

これを見ると、実に不思議なことに、日本全体の金融資産の合計と金融負債の合計が、ほぼ同額であると言うことです。

この事は一体、何を意味するのでしょうか?

そうです。すべての金融負債を返済してしまうと、日本中の金融資産がゼロになると言うことです。驚くではないですか?

例えば、金融資産の合計額の方が、金融負債の合計額より多ければ、すべて返済しても、金融資産は差し引き額だけ残ります。多くの人は、こちらのイメージを抱いているのではありませんか?しかし、現実は違うのです。

何しろ、日本銀行が総力を挙げて調査した結果が、上の「資金循環統計」なのですから、間違いありません。


では、なぜそうなるのか、少しずつ解明していきましょう。

まず、金融資産とは何か? 当然の事ですが、お金(現金、預金)は金融資産です。次に証券(債券、株式、手形など)、保険、年金なども金融資産になります。

証券や保険等は、保有する側にとっては資産であるが、発行した側にとっては負債になります。そして、発行した側が、これを返済すると、証券や保険と言う金融資産は消滅します。

したがって、すべての証券や保険等を返済すると、これらの金融資産はゼロになります。

しかし、それでもお金(現金、預金)が残るではないかと言うでしょう。いえいえ、お金も返済するとゼロになるのです。

お金は、誰かが銀行から借りることによって、世の中に存在するからです(信用創造)。

例えば、企業は設備投資や原材料購入のために、銀行から融資を受けます。1億円ほど借りると、1億円が新たに世の中に生まれるのです。そして、企業はそのお金を設備や原材料の支払いに使います。そうすると、設備会社や原材料の会社は、そのお金を従業員の給料やその他の支払いにあてます。

こうして最初の1億円は、ぐるぐると世の中を巡っていくのです。

多数の企業や団体、自営業者、家計が銀行からお金を借りては支払いに充てるので、多額のお金が世の中に存在しているのです。もし銀行からお金を借りている者が、全員お金を返済してしまうと、日本中からお金がなくなるのです。

まさに、このことを日銀が公表する「資金循環統計」は証明しているのです。いや、そんなはずは無い。俺が持っている1千万円のお金は、絶対になくなるはずはない、と言ってもダメなのです。


大口の負債を抱えている部門は「法人企業」と「一般政府」です。右端の欄の差額を見ると、それぞれ680兆円程度の純負債を抱えているのがわかります。このうち「一般政府」の負債が重要なのです。

政府が国債を発行すると、銀行がその大半を買い取ります。すなわち、政府が銀行から大口の借金をするわけです。そして、政府はそのお金を財政出動することによって、世の中に多額のお金を送り込んでいるのです。

このことによって、国民は1千万円、2千万円の貯金を持つことができるのです。

「それはおかしい。お金(お札)は日銀が発行しているではないか」と言うでしょうが、日銀は、銀行から国債を買い取ることによって、銀行にその代金として日銀券を支払っているのです。

すなわち、日銀が発行する日銀券は、銀行に行くだけであって、それから先は誰かが銀行からお金を借りなければ、お金は世の中に出て行きません。誰も借りなければ、銀行の中にお金が貯まるだけです。

だから、政府は国債をどんどん発行して、銀行からお金を借りなければならないのです。そして、そのお金を財政出動することによって、世の中にお金を送り込んでいるのです。そうすれば、それが国民の資産になるのです。

もう一度「資金循環統計」を見てください。「法人企業」の680兆円の負債と、「一般政府」の680兆円の負債を合わせると、およそ家計の1500兆円の資産になるでしょう。


ところで、「国の借金を減らし、健全財政を目指さなければならない」と言う国会議員、官僚、学者、評論家がたくさんいますが、この人たちは、とてつもない勘違いをしているのです。

頭の中でシュミレーションをしてみましょう。

政府が680兆円の純負債を、すべて返済すると決定し、行動を起こすとします。どうなるでしょう? 凄まじい増税をやらなければなりません。

まず所得税の平均が50%以上になるでしょう。次に消費税は30%でしょう。その他の税も皆上がります。

これでは、一般家庭は収入だけではとても生活ができないので、貯金を切り崩さなければなりません。1千万円、2千万円の貯金はどんどん減っていきます。

その上、支出を極端に切り詰めるので、生産者側(企業、自営業者)は売り上げが激減し、倒産、廃業が続出し、ここで働く人たちは失業します。

どうにか生き残った企業も、苦しいので賃金を大幅カットします。さぁ、人々はますます貯金を切り崩さなければなりません。

政府は、国民から吸い上げた税金を銀行に返済します。銀行に返済したお金は、世の中から消えるのです。銀行からお金を借りると、世の中のお金が増えるが、その反対に、銀行にお金を返すと、世の中のお金はそれだけ減るのです。


680兆円ものお金が、世の中から消えれば大変です。もう貨幣経済は成り立ちません。日本は滅亡するでしょう。

それに対して、「いや大丈夫だ。また銀行から借りれば良いではないか。」と言うでしょう。

そうです!!  全くその通り、銀行から借りればいいのです。ただし、この不況の中では、民間はなかなかお金を借りようとはしません。では誰が借りるのでしょう?

もちろん、民間がダメなら、残るは政府しかいません。政府がしっかりお金を借りて、世の中に流し込めはいいのです。

ええ?? それなら、政府は最初から借金を返済しなければよかったではないですか。


はい!!!  これで決定。

政府は健全財政を目指して、借金を返済してはいけないのです。借金したままで良いのです。何の問題もありません。現実に何の問題も起きていません。

政府はより一層借金をした方が、国の経済は活況を呈して、日本は繁栄するのです。その上減税をした方が、なおいっそう良くなるのです。


以上のことを、日本銀行は「資金循環統計」によって証明しているのですよ。日銀の総裁及び理事は、このことを声を大にして言わなければならないはずです。