子粛が言った。
「教師は『気付かせ屋』であると同時に『気付き屋』であるべきだ。子供たちが、生き方に感動し、感謝し、見習いたい、その後に続きたいと思う存在であることが必要だ。
自分の責任において、それを世界に示すことが出来る人こそが、教壇に立つべきだ。こういう人と出会うことで、学ぶことがどんなに大切なのか、子供たちはわかるようになる。『学びたい』という衝動を呼び起こす力になるんだ。
自分自身がどう感じるか、どう考えるか、どう行動するかを学ぶ。真摯に学ぶと、学んだことにより確信を持つことが出来る。それではじめて、世界のために役立つことが出来る。そうは思わないか」
「子粛、お前は『べき』が好きだな」
私はそう言った。
「そうだな。わたしは自分の短所が嫌いなんだ。だから、理想の人物になろうとしている。それゆえ、かもしれない」
「とにかく、人格の欠陥者を教育者の立場につけてはならない、私はそういう例を多分に知っている。ああいう輩が、どれだけ子供の心を傷つけるか・・・・・・」
ふと、気配に気付くと、先生がこちらを見て、にこりとされていた。
「子粛、行こう」
子粛と私は駆け出して、先生のもとへ向かったのだった。