それは秋も深まった頃だったが、長らく職を休んでいるという男性が先生を訪ねてきたのだった。彼は、さる国の教師であった。それも熱意にあふれる。
「もう学校へ行きたくないのです」
めっきり疲れ果てた様子で彼は語った。
しばらく、彼を見つめていた先生はこうおっしゃった。
「よくそこまでがんばりましたね。あなたはがんばりました。病気になるまでがんばったのです。これからは、まず自分のため、それから人のため、世のため。さらに、より大切なもののために生きてください。
迷いが生じたら、何のために何をやっているのか。常に原点に立ち戻って考えてください。出来上がったものに身を任せるのでなく、日々、自分で切り開いていくのです。これはみなそうなのです。私たちの通った後に道が出来るのです。
多くの人は新しいもの、新しい変化を歓迎致しません。たとえ、今よりも素晴らしい変化だとしても、多くの人々は現状維持を望みます。人々は、自らはもとより、周りの環境もそうあってほしいと願うものです。私たちは、自分の考えを押し付けつけるべきではありません。人々は、それぞれにベストなタイミングで気付くことになるのですから。
大人は言葉でごまかされます。子供たちは言葉や理屈でなく、五感で相手を感じ、すぐに本質を見抜きます。子供たちに何か伝えたいときは、子供たちに聞く用意が出来るまで待つことです。時には非常な時間がかかります。忍耐が必要です。こればかりは計画通りには進まないものです」