叔母には、言葉に尽くせぬほど色々と世話になったのだが、お葬式へは行かなかった。
嫌いな叔父と顔を合わせることが嫌だったというのが一番の理由だが、もうひとつ理由があった。
叔母は頭の弱い人、知恵おくれ、精薄、障害者に対しても優しく接して、お小遣いをあげたりする性格だった。
僕がいちど、数百メートル離れた叔父の家まで「金魚を見にいこう」と言って、まだ幼い甥と姪の手を引いて歩き出したとき、道路の反対側から叔母が「行っちゃダメ」とまるでキチガイのように必死になって止めたことがあった。
あまりにもしつこく止めるものだから、甥と姪は金魚を見に行かずに、叔母の家に戻った。
あとで甥は「金魚を見たかった」と言って泣いてたそうだ。
あれだけ必死に止めるというのは、叔母が僕のことをまるで信用していない証拠にちがいない。
知恵おくれや精薄にも優しく接していた叔母は、僕のことを同類と見ていたに違いない。
まるで、誘拐犯か性犯罪者に甥と姪を連れ去られるのを必死に止めるかのようだった。
色々と世話になった叔母の葬式へ行かなかったのは、それがもうひとつの理由だ。




