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十年以上前、家族で京成ホテル1階のレストランへ行ったとき、若い男のウエイターが注文を取りにきて「赤ワインにしますか?白ワインにしますか?」と訊いてきたとき、007の映画を観ていた私は「肉料理なら赤ワインに決まってるじゃないか」と言ったところ、その若いウエイターはよほど癪に障ったらしく、運ばれてきたワインのグラスにべっとりと幾つも指紋がついていた。
気の弱かった当時の私は「気にしない」と言って、その赤ワインを飲んでしまったのだが、もしも今であれば「この店の責任者を呼んでください」と言って「こんなにグラスが汚れている不潔な店で食事はできない!」と言って「こんな店出よう」と言って、勘定を支払わずに、みんなで店を出たと思う。
いま思い出してもムカつく。あの馬鹿ウエイター、今頃どうしているだろうか?
叔母には、言葉に尽くせぬほど色々と世話になったのだが、お葬式へは行かなかった。
嫌いな叔父と顔を合わせることが嫌だったというのが一番の理由だが、もうひとつ理由があった。
叔母は頭の弱い人、知恵おくれ、精薄、障害者に対しても優しく接して、お小遣いをあげたりする性格だった。
僕がいちど、数百メートル離れた叔父の家まで「金魚を見にいこう」と言って、まだ幼い甥と姪の手を引いて歩き出したとき、道路の反対側から叔母が「行っちゃダメ」とまるでキチガイのように必死になって止めたことがあった。
あまりにもしつこく止めるものだから、甥と姪は金魚を見に行かずに、叔母の家に戻った。
あとで甥は「金魚を見たかった」と言って泣いてたそうだ。
あれだけ必死に止めるというのは、叔母が僕のことをまるで信用していない証拠にちがいない。
知恵おくれや精薄にも優しく接していた叔母は、僕のことを同類と見ていたに違いない。
まるで、誘拐犯か性犯罪者に甥と姪を連れ去られるのを必死に止めるかのようだった。
色々と世話になった叔母の葬式へ行かなかったのは、それがもうひとつの理由だ。
従姉妹の姉のほうが、母に「ごちそうを食べに行く」と言って車で連れて行かれたのがマクドナルド。
べつにマクドナルド自体は悪くないんだが「マクドナルドがごちそう」って、一体どんなセンスしてるんだ?
その従姉妹の料理自慢は「何分で作った」という時間だけ。
時間のかかる料理もあるし、料理は味の善し悪しや見た目の良し悪しであって、時間は関係ないと思う。
私が材料を用意して、作り方の本も持っていったチリビーンズも台無しにして平気な顔をしているし、使わなかった材料のトマト缶と豚肉も返さなかった。食い物の恨みは恐ろしいぞ。
もう10年以上前からだろうか? 「ぬるぬる動く」というキショい慣用句が登場したのは?
「ヌルヌル動く」というのは「主にコンピューターで作った映像が滑らかに動く」という意味だが、「ぬるぬる動く」という言い回しは、なんだか下品で嫌いだ。
そもそも、高価で高性能なグラボを搭載したPCを見て「ヌルヌル動く」なんて、高価なマシンを貶しているとしか思えない。
「滑らかに動く」でいいじゃないか。それか、もっとマシな言い方はないのか?




