今までは瞼の下垂を
自律神経系のアンバランスに焦点を当てて見てきましたが
今回は筋肉とそれを支配している神経(運動神経)の関係に
焦点を当てて考えて見ます。
瞼を閉じる眼輪筋は
顔面神経支配の筋でしたね。
顔面神経は
眼輪筋のほかにも顔面の口輪筋や
頬の筋肉、額の筋肉なども支配している脳神経です。
ですから
神経の大本で障害があるならば
ほかの顔面の筋肉にも何らかの症状が現れても不思議ではない。
しかし、問題は瞼の筋肉だけです。
では眼瞼(上まぶた)の下垂が
眼輪筋の痙攣によるものであるとするなら
瞼の筋肉が痙攣を起こしやすくなるメカニズムとは如何に?
筋肉が痙攣を起こすということは
神経と筋肉の間での反応が過敏になっているということが
ひとつ考えられますが
これには神経系の生存条件が鍵です。
神経系の生存には
刺激と燃料の供給の両者が不可欠と
考えられています。
神経系の燃料は何でしょうか?
それは皆さんよくご存知の酸素とグルコース(ぶどう糖)です。
この二つの燃料供給を支えている生命現象は
呼吸、胃腸の消化吸収、血液循環です。
神経機能は
この3つの能力に依存していると考えられます。
これらに問題が生じると神経系への
燃料不足が懸念されます。
燃料不足によって細胞の中のミトコンドリアのATP生産が低下し、
これをエネルギー源とする細胞膜にある
ナトリウムカリウムポンプの機能低下が引き起こされます。
このポンプは、神経細胞内の余分なナトリウムを
細胞の外に汲み出して細胞内のミネラルバランスを保つ装置です。
ポンプの低下が細胞内のナトリウムイオンの正常な量をコントロールできなくなると
細胞内は水ぶくれを起こしてしまいます(細胞の腫脹)。
ナメクジに塩をかけると
干からびてしまうのと同じ原理で
ナトリウムは水分を引っ張る力を持っていますので
細胞内に水分も同時に引き込まれてしまうわけです。
燃料不足によって細胞内浮腫が引き起こされ
神経細胞の変性が起こると
興奮しやすい、疲労しやすい細胞に変化すると考えられています。
興奮しやすくなった神経細胞は(静止膜電位が閾値に近くなる)、
正常な状態に比べて筋肉を頻繁に強く収縮させる
要因となりえるのではないだろうか?
興奮した神経細胞のシグナルによって
眼輪筋での神経筋接合部においてのアセチルコリン分泌が増えて
筋肉が収縮しやすくなっていると考えられます。
ボトックス注射は、ボツリヌス菌の成分を筋肉に与えて神経麻痺を起こさせる、
つまりアセチルコリンの分泌を阻害して筋収縮を抑えようとするものです。
ですから筋肉の興奮を一時的に抑えることはできても(対処療法)
その原因である根本問題にアプローチしているわけではないので
薬の効果が消えると再発する可能性があるわけです。
そこでもう一度、
燃料不足を引きおこす3つの要素について
みてみましょう。
呼吸、胃腸の消化吸収と血液循環機能は
自律神経系によって調節されています。
慢性的なストレスは自律神経を崩す原因となり
呼吸機能の低下、胃腸の機能低下、
血管の持続的な収縮、血管の動脈硬化を招く恐れがあります。
さらにこれらの3つ機能に影響を与える重要な因子として
姿勢も忘れてはならない重要な要素です。
持続的、不適切な姿勢が生体に与える影響は
決して少なくありません。
肺の運動、横隔膜の運動、肋骨の動きを妨げて
呼吸を抑制し、
胃腸の蠕動運動を妨げ、血管の圧迫を引き起こして
消化吸収能力を低下させ
心臓にかかる負担と血管圧迫が
血液循環に影響を与える可能性があります。
ということで
筋肉の痙攣を引き起こす燃料不足は
呼吸、血液循環、胃腸の消化吸収機能の能力に依存している。
その機能は自律神経によるところが大きいけれど
姿勢にも影響を受けるという側面も無視できない。
つまり筋肉の痙攣の大本をたどると
自律神経に大きな影響を与える心の姿勢、
そして身体の姿勢、
このそれぞれの危うさ、両者のあやうさが
見えてくるように思います。

