つばめグリルの片隅で | 街を歩く 山を歩く

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街や山を歩いた時の事を中心に書いてみようと思います。

昼休みのつばめグリル、隣に老夫婦らしき男女二人がいた。


地味な感じの二人は最初は私の意識の中に入っていなかったのだけど、女性の方の声がして、その存在に気付いた。


「このお芋、美味しいわね。」とボソっと。
それを受けて男性は、
「そうだね、美味しいね。きっと、ゆっくり作っているんだよ。焼き芋だって、ゆっくり作ると美味しいじゃないか…」

楽しそうに話す声が可愛くて、隣の席をこっそり見ると、優しい目で話す男性と、黙々と食べる女性。

あらあら、話しふっておいてスルーなのね。でも、じいちゃんかわいいな。
などと、思っていたら、


しばらくして、
「この店はドイツ系なの?」
「そうだねぇ、洋食屋というより、とくにドイツっぽいみたいだね。そういえば、この間行ったライオンもドイツ風だったね…」

と、また同じ間合いの会話が続いた。

この二人はこれで良いんだな、きっと、と勝手に想像。


また、しばらくして、
「ドイツ人は芋ばかりで飽きないのかしら。日本人のご飯と同じかしらねぇ。」
「そうだよ、ご飯みたいなもんだよ。」

おっと、この会話は続いていたのかぁ、ゆっくりしたテンポの二人だなぁ、

なんだか、この方々を段々好きになってきました。




また、しばらくして、


「抗がん剤は二週に一回って言ってたかしら?二週続けてだったかしら?」



あぁ、
この二人は病院の帰りだったのか。

どうやら、ご病気なのはおばあちゃんの方。
じいちゃんは、何を話して良いかわからず、何かきっかけがあると、努めて明るくこたえていたのかもしれない。。

「今度やる抗がん剤は、○X△☆という種類でね…」
治療法についても勉強したようです。

愛だなぁ。。


ふと、おばあちゃんに動きが。

二人ともジョッキのビールを頼んでいたが、おばあちゃんの方はほとんど進んでなく、おじいちゃんのジョッキに移したのだ。

だまって注ぐおばあちゃん、だまって受けるおじいちゃん。


注ぎ終わって、また、声が。

「見て、また泡がたったわ。新しいビールみたい。ウフフ。。」
「アハハ」



二人の笑い声は、優しく温かく、私の心にしみるのでした。