夢の中、俺は親父に会っていた。
穏やかではあるが、二人とも思いつめた感じがある。
よくわからない。もっと知りたいが何も聞こえないしわからない。
夢の中の親父がどんどん遠くに行く。
そして、夢の中の俺が叫ぶ。
待ってくれと。
それだけ聞き取れた。
ふと、振り返った親父は笑顔だった。
白谷「あ、起きちゃった?」
浅木「んあ?」
目の前に麻美さん?
あれ?なんで??
まだ半覚醒の俺にとってよくわからない状況。
白谷「かわいい♪・・・チュ・・・」
ほっぺにキスされてしまった。
浅木「って!!ぇ!!何どうして!!」
白谷「どうしてって、徹夜明けで、私の家に寄っていくって私が誘ったから?かな。」
あ~思い出した。
だが・・・不意にキスはせこすぎる・・・
胸の鼓動は早まって、半覚醒から覚醒状態に・・・色々な意味で・・・
白谷「あ!そうだ。お腹すいたでしょ。ご飯食べる?」
浅木「いただきます!」
と、少しでもばれないように・・・他の話題にいってくれたことが助かる。
白谷「さっきのキスは先に寝ちゃったからゴメンってことで♪」
誤魔化せてなかったようだ・・・。
最近麻美さんが積極的なのは気のせいだろうか・・・
まぁ悪い気はまったくしないんだけどね。
こんな日がいつまでも続けばいいと思う。
そんなことを考えていると、朝食のようなメニューが出てきた。
魚に味噌汁にご飯。
そういえば、今何時か確認していない。
午後2時。
6時間近く寝ていたらしい。
浅木「うまそうだ。」
白谷「どうぞ。」
魚がうまい・・・
何を隠そう俺は魚が大好きなのだ。
味噌汁も多分合わせ味噌で俺の好きな味だ・・・
浅木「幸せだ・・・」
白谷「え?何か言った?」
浅木「え?い、いや!!美味しいなって言ったんだ。」
心の声が言葉に出てしまった。
時間的には昼食になるだろうから、昼食を食べ終えて、飼える準備を始めた。
浅木「今日はありがとう。また来るよ。」
白谷「わかった。また誘うね。」
そして、自宅まで急いで帰った。
洗濯とか炊事とか色々と中途半端な感じで家を出てきたから、大変なことになっているだろう。
自宅に着いて鍵を開け中に入った。
が・・・見知らぬ靴二人分ある・・・
誰かがいる?
でも、ここの鍵は親父と母さんと俺しか持っていないはず・・・
親父・・・か?
いや、いつもならはっきりと帰ると言うから違う可能性もある。
恐る恐るリビングへと向かう俺。
テレビの音が聞こえる・・・
まぁ泥棒が靴を玄関に置いたままリビングでテレビなんて見ないだろう。
リビングの扉を開けるとそこには・・・
浅木「親父・・・なんでいるんだよ・・・」
浅木父「今は何時だと思っているんだ?」
浅木「ひ、昼の3時だけど・・・それが何か?」
まさか誰かの家に泊まっていたことなんて知れたら何されるかわかったもんじゃない。
浅木父「昨日の夜から何処かへ行っていただろう?」
浅木「お、親父は何時にご帰還されましたでしょうか?」
可笑しな言葉遣いになってしまった・・・
もう夜のことから聞かれたら回避不可能だ・・・
浅木父「昨日の真夜中だ・・・」
はい、もう無理よぉ~
説教されることを覚悟し、親父の前に正座した。
浅木父「まぁいい、それより紹介したい人がいる。」
奇跡!回避できた!!
が、紹介??何のことだろう。
浅木父「静香出てきなさい。」
??「はい。」
清楚な感じな、なんとも綺麗な人が出てきた。
不覚にも見惚れてしまい、言葉をなくした。
高山「私は【高山 静香】と申します。」
俺の目の前まで来て、正座をし、頭を下げた。
浅木「あ、これはどうも。純っていいます。」
普通に流れに任せてしまった・・・
そういえば、親父から連絡が来てたことを思い出す。
浅木「って!この人は何なんだよ!」
浅木父「何ってお前をこれからサポートしてくれるパートナーだよ。」
浅木「そんな・・・勝手に・・・」
そういえば・・・高山?何処かで聞いたことがある・・・
浅木「まさか高山って・・・あの?」
お願いだから違っていて欲しい。
高山家・・・浅木家より会社の名前では劣るものの、世界にしてみれば強豪社である一族である。
浅木父「何だ。知っていたのか。」
浅木「知っているも何も・・・有名じゃないか・・・」
頭の中で色々考えてみる。
この人がパートナーとなってしまっては、俺は麻美さんと別れることになるだろう。
実際、親父の言うことに俺は逆らえない。
逆らえないようになぜか手を回される。
でも、ここ半年こっちに帰ってきていないから、麻美さんには手を回せなかったんだろう。
知らないはずだ・・・多分・・・
高山「叔父様一ついいでしょうか?」
浅木父「何だ?」
高山「私は叔父様は尊敬はしていますが、まだ学生の坊やを尊敬しろというのは無理があります。」
何を初対面の俺がいる前で言ってやがる。
まぁ確かにこんなお嬢様で、俺より年上であるのは確かだが・・・劣っているとは思いたくも無い。
浅木父「確かにもっともだ。ならテストでもしてみるか?」
高山「テストと申しますと?」
浅木父「お前の好きなようにしていいということだ。」
また勝手な・・・
浅木「ちょっと待てよ!俺はこんな初めて会った奴とパートナーになる気はないからな!」
浅木父「ほほう。お前にはもっと相応しい人でもいるということか?」
浅木「あぁ、そうだよ。俺にはこの人より相応しい人はいる。」
今まで口答えなんてしたことがない俺が、なぜか俺だけではなく麻美さんまでも馬鹿にされたような気がして頭にきていた。
俺だけが馬鹿にされるならともかく、大切な人を馬鹿にされるのは我慢ができない。
高山「私以上に能力の高い女性はいないと思いますが?」
言い切りやがった・・・
とんだ自信過剰のお嬢様のようだ。
浅木父「調べはすべてついているんだぞ?それでも口答えするのか?」
調べって・・・
浅木父「お前には半月前から監視をつけていた。だから、恋人がいることも知っている。あんな不幸を呼び寄せるような女の何処がいいんだ?」
不幸を呼び寄せるだって?
今この目の前にいる男は、息子である俺が選んだ人を侮辱した。
俺のすべてを侮辱された。
浅木「不幸を呼び寄せるだって?ははっ!笑わせる!!一番不幸を呼び寄せてるのはあんたじゃないか!!」
俺は今までの不満をぶつけた。
両親がいない寂しさ。家に帰っても何も無い。誰もいない。
あるのはテーブルの上にあるお金だけ。
確かにそれは腹を膨らましてくれるだろう。
だが、俺のこの寂しさを誰が埋めてくれる?
誰が支えてくれる?
浅木父「知ったような口を聞きよって・・・ならば証明してみせろ。お前が今まで歩んできた道でどれほど強くなったかを。」
高山「ならば、剣術ではどうですか?あなたは中学のころ剣道をしていたのでしょう?」
ふふっと笑いながら俺を見ていた。
まるで、馬鹿にしているかのように。
もうこの状況ではあとには引けない。
浅木「明日の13時だな・・・場所は学校でいいか?」
高山「いいですわ。」
そして、親父と高山は家から出て行った。
この広い家には俺一人となった。
なんともいえないこの寂しさ。
あれだけ口答えして負ける訳にはいかない。
これでも、全国レベルの腕は持っている。
勝てないわけではないが、そのことを知っていて相手はこの勝負を振ってきた。
ならば、相当な実力者であることは確かである。
油断はできない。
それに麻美さんにはこのことは言えない。
俺が負ければ別れることになるなんて。
こんな別れ方なんて言えない。言いたくない。
多分、負ければすべてをなくすだろう。
親父の言いなりになんてもうなりたくない。
だから、明日は勝つ。どんなことをしてでも勝たなければならない。
俺は明日の試合に備えてもう休むことにした。