旅人の小説

旅人の小説

本当に趣味の小説を書いています。

真面目に書いているつもりですが^^;

やはり、文章能力の無さに少しなけるところです(´;ω;)ブワッ

暖かい感じで見守ってくれることを旅人は望みます^^

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 相手との距離を少しずつつめる俺。


 それを睨むかのように見つめる剣士が目の前にいた。


 足を止めてしまいそうになるくらいの殺気。


 1秒1秒が5分10分と勘違いしてしまいそうな感覚。


 汗が尋常じゃないぐらいにでてきてしまっていた。


 それでも歩みを止めずに一歩ずつ近づく。


 もう二人が打ち込めるか打ち込めないかわからないぐらいの距離まで近づいていた。


 あとは、どちらかが一歩・・・いや半歩近づけばどちらかが打ちにくる距離。


 超絶的な絶対領域。


 相手が少しでも動けば勝負が始まるのだから、自分の打ち込みやすいタイミングを見計らわなければならない。


 少しでもずれると相手に隙を与えてしまう。


浅木「(くそ・・・隙がまったくねぇ・・・)」


 このままじっとしてても切りがない・・・


 賭けに出てみるか・・・


 俺は大きく一歩を踏み出し、一回り身体の小さい相手にぶつかっていった。


 これで少しは体制が崩れ・・・る??


高山「それだけですか?」


 高山は受け止めていた。


 俺の押しに一歩も引かない相手の押し返し。


 女だと思えないくらいの力。


 そんなことを考えていたのか、目の前の高山が消えた。


 前のめりになり若干体制を崩してしまったことに気づいたときには脳天に激痛が走っていた。


高山「やぁぁぁーーーー!!!」


 目の前がぐらつく。


 多分横か後ろから面を打たれたのだろう。


 足がぐらつき、膝を着きそうになった。


 が、ここで倒れるわけにはいかない・・・


高山「へぇ。よく倒れなかったですね。脳震盪を起こしていてもおかしくないのに。」


 目の前はぐちゃぐちゃに揺れていた。


 気を抜けばすぐに倒れそうになる。


浅木「へっ・・・そんな打ち込みで倒れるほどやわじゃないんでね。」


高山「よく言ったわ・・・なら倒れるまで打ち込むのみ・・・」


 俺は打ち込むことができずに相手の打ち込みに耐えるのみ。


 俺は練習台に打ち込むかのように防戦一方だった。


高山「ほら!!早く参ったと言ってしまえ!!お前では私には勝てん!!」


 勝てない。


 確かにそうかもしれない。


 だが、負けを認めるわけにはいかない・・・


浅木「うるせぇ!!」


 相手もこっちが攻撃を仕掛けてくるなんて思っていなかったのだろう。


 大振りになっていることにすら気づかないほど俺に打ち込んでいたのだから。


 その一瞬の隙を突いて、全身全霊の力を込めて相手の胴に打ち込んだ。


浅木「どおおおおおおおおお!!!!!」


 確かにこれは剣道ではない。


 剣道の試合なら俺はもう負けているから。


 だから、最後の一太刀だけ。


 それだけ入れられれば俺はもう次を打ち込むことはできないことはわかっていた。


 高山の胴に入った瞬間俺の竹刀は中部から異様な音を出しながら折れた。


浅木「はぁはぁはぁ・・・」


高山「・・・・・・」


 高山は動かなかった。


 油断していたとはいえ、自分自身が反応できなかったことにびっくりしたというのもあるが、ここまで綺麗な一太刀を入れられたことはなかったからだ。


浅木「はぁ・・・はぁ・・・」


 身体が動かない。


 意識も歪んでいてもう何がなんだかわからない・・・


 そして、俺はその場に倒れこんだ。

 現在12時。


 身体を動かすこともやめ、俺も精神統一を始めていた。


 心の中のざわめきは収まることは無い。


 なぜなら、今現在目の前には親父と麻美さんがいるからだ・・・


 親父は審判役、麻美さんは応援に来てくれたそうだ。


 麻美さんには今日のことは何も話してないから事情もまったく知らない状態で応援してくれている。


 そっちのほうがやりやすいんだがな・・・


 格好悪い俺をあまり見せたくは無かった。


浅木父「二人とももう身体が暖まっているみたいだな。」


高山「朝から居ましたから。」


浅木「俺も・・・」


 緊張しないほうがおかしい。


 こんな運命を変える試合なんて始めてだからだ。


浅木父「ならば、時間は早いがそろそろ始めるとしよう。」


高山「私はかまいませんが?」


浅木「ちょっと5分だけ時間をくれないか?」


浅木父「・・・よかろう。」


浅木「麻美さん・・・ちょっといいかな?」


 麻美さんは頷くと俺と一緒に道場を出た。


 いつもと変わらない学校のはずなのに、いつもと違う雰囲気だ。


 日差しが身体を焼くようにジリジリと照っていた。


白谷「今日は相手のための練習試合とかなのかな?」


浅木「まぁそんな感じかな。」


 本当は麻美さんに本当のことを話したい。


 でも、その勇気が出ない。


白谷「辛そうな顔・・・どうしたのか聞いたら駄目なのかな?」


 そこまで俺は顔が辛そうなのだろうか・・・


 これから起きる惨劇が俺の顔に表されているのかもしれない。


浅木「大丈夫。負けないから。」


 それだけ言うと俺は道場に戻ろうとした。


白谷「うん・・・」


 それから麻美さんも何も聞こうとはしなかった。


浅木父「もういいのか?ならば始めよう。」


 俺と高山は準備を整え竹刀を構えた。


 構えた・・・だけなのに・・・


 相手のこの威圧感は何なのだろう。


 今までにこの感覚に陥ったことは無い。


 だが、それ以上に俺の集中力も上がっていく。


 それは相手も同じことだった。


 高山も威圧感に似るものを感じていた。


 相手の集中力の高さ。


 それは自分以上であることがわかった。


 自分自身の集中力を超える者。


 でも、負けられない理由はどちらにもある。


 私もそれにつられるように集中力を高めていった。


浅木父「それでは、ルールの説明だ。試合は剣道ではない。相手が参ったというまで続けてもらう。所謂根競べだ。この道場すべて使ってもらって構わない。」


 試合・・・もとい現在では使わない死合い・・・


 相手に止めを刺すまでは止まらない戦い。


白谷「・・・え??」


 当然そんなことを知らない麻美さんは驚いていた。


 剣道の練習試合であるだろうとしか考えていなかった。


 でも、素人にでもわかるこの試合の緊張感。


 それを感じてしまった自分は止めることすらできず、ただ見ていることしかできなかった。


 浅木の父もそれを感じていた。


 自分が仕掛けた試合だったが、ここまで成長している自分の息子を見ることは初めてだった。


 嬉しさもあり、相手の強さを知っているこの試合を止めることは当然なのだろうが、もう後には引けなかった。


浅木父「それでは・・・始め!!」


 そして、この終わりの見えない試合の合図が下された。

 目覚めの悪い朝とはこのことだろう。


 夢の中で俺はあの子に一度も勝てていない。


 悪夢・・・


 それも一太刀もあびせることもできていなかった。


 こんなことってあるわけがない


 確かに俺は高校に入って部活はやっていないが、剣術が4,5ヶ月どころでそれほど衰えるとは思っていなかったからだ。


 時計を見ると午前6時。


 約束の時間までまだ時間はある。


 俺は久しぶりに竹刀を握った。


 外に出て、一振りずつ確認する。


 まだ身体は覚えている。


 立ち回り、切り込みの速さ、死角をなくす行動。


 すべてにおいて忘れていない。


 だが、なぜだか勝てる気がまったくしなかった。


浅木「くそっ!!」


 無我夢中で竹刀を振り続ける。


 2時間は経過しただろうか。


 身体中汗でびしょ濡れだった。


浅木「はぁはぁ・・・・・・」


 だが、不安を拭い去ることなんてできなかった。


 風呂にでも入って身体を少しでも休めよう。


 この状態じゃあ誰にも勝てないと思うくらいに体力がなくなっていた。


 半年前の自分と今の自分の違うところ。


 それは体力が減っていることだった。


 半年前までは2,3時間素振りをしていても疲れは感じるものの、倒れそうになるなんてことはなかった。


浅木「ははっ、やばいな・・・」


 体力がなくなることはつまり隙が生まれる。


 それだけでも、強者に挑む自分にとって敗戦になることは目に見えていた。


 風呂に入り汗を流し、リビングにあるソファーに座った。


 汗は流したものの、焦りと不安が身体を支配している。


浅木「まだ9時か・・・学校で少し落ち着こう・・・」


 支度を済ませ、学校へと向かう。


 いつもの登校とは雰囲気が違う道。


 すべてが俺をあざ笑っているかのように思える。


 お前は勝てない。何もできない。と・・・


 だが、そんなことは関係ない。


 俺は勝たなければならないからだ。


 学校に着くと、真っ直ぐ道場へと向かう。


 だが、道場の中で音がしているのが聞こえた。


 風を切るかのごとく綺麗な音が響いている。


 誰か気になり小窓から覗くことにした。


 そこにいたのはあの高山静香だった。


 綺麗なフォーム。無駄のない動き。何者も寄せ付けない覇気。


高山「はっ!!やーー!!」


 一人稽古。


 それは見惚れてしまうほど綺麗だった。


高山「ふぅ・・・ん?誰だ!!」


浅木「(や、やば!)」


 俺はすぐさまその場を離れ校内へ逃げた。


 まさか見つかるとは思わなかった。


 でも、あれを見て核心した。


 俺は勝てないと。


 俺の剣術はたかが中学レベル。


 相手は師範と言ってもいいくらいのレベルだった。


 あれだけ自身があったのも頷ける。


 だが、逃げるわけにもいかない。


浅木「はぁ・・・」


 ため息しかもう出てこなかった。


??「ため息なんてついてどうしたの?」


浅木「うわっ!!」


 急に後ろから声をかけられびっくりしてしまった。


 そこにいたのは麻美さんだった。


白谷「びっくりさせてごめんね。どうして学校にいるの?」


 まだ胸の鼓動が収まらない。


 この状況で一番会いたくない人に会ってしまった。


浅木「い・・・いや、ちょっとな。麻美さんこそどうして?」


白谷「私は風紀委員だからね。仕事が残ってたからちょっと着たの。」


 なるほど・・・タイミングの悪いことに・・・


白谷「あれ?その袋って剣道の??」


 見つかってしまった・・・


 隠すこともしてなかったが、痛いところを突付いてくるのが本当にうまい麻美さんだった。


浅木「ちょっと精神を鍛えようかと!!」


白谷「そうなんだ、じゃああとで見に行くね。道場でしょ?」


 はい、状況は最悪になりました・・・


 試合が始まる前にしろ後にしろ、もう逃げられない。


浅木「はい・・・」


白谷「じゃあ、頑張ってね。応援してるよ。」


 そして、麻美さんは残りの仕事を片付けてくるといい、走っていった。


 もう最悪です。


 どちらにしろ、今の状況を説明していないこと、嘘をついているということになるんだから、非難されることは確実。


 それも、負けるとなったらいきなりのお別れという事実。


浅木「仕方ない・・・道場に向かおう・・・」


 校内にいても仕方がないので道場に引き返すことにした。


 道場からは素振りの音と掛け声が響いていた。


 高山静香にも負けられない試合だった。


 それは自分の父を助けるため。


 浅木家グループから飲み込まれることを避けるためであった。


 叔父様は勝てば援助をすることを約束してくれた。


 負ければ、会社は飲み込まれ、格下扱いされる。


 そんなことはプライドが許さない。


 後が無いのは高山も一緒だった。


 負けられない。


高山「ふぅ・・・」


 素振りをやめ正座をし、一息ついた。


 入り口を見るとそこには憎き浅木家の息子が立っていた。


 またしても見惚れていたらしい。


 彼女の素振りは本当に綺麗だった。


 こんな人と相手をして一太刀でも入れられれば本望ってところだろうな。


浅木「ども・・・」


高山「・・・・・・」


 返答はないようだ。


浅木「こんな朝早くから練習ですか?」


高山「・・・日課よ・・・」


 言葉にトゲがある。


 この人と一緒になったとしても、毎日はこんな感じなんだろうな・・・


 まぁなる気はさらさらないけど。


高山「男ならこそこそしないでいられないの?」


浅木「な・・・何のことですか?」


高山「さっき覗いていたの気づいていないとでも?」


 やはりばれていたようだ。


 この人は本当に凄い人だ。


 俺なら気づかないだろう。


 特に今の俺は。


浅木「剣戟・・・凄く綺麗ですね・・・フォームとか・・・」


高山「え?」


浅木「見ればわかります。俺とはレベルが違うことぐらい・・・」


高山「なら、やめる?」


浅木「それは無理です。」


高山「なぜ?」


浅木「それは俺には守らなければならない人がいるからです。」


 嘘偽りのない言葉。これだけは誰にも譲れない。


 この人なんかに譲れるくらいなら初めから恋愛なんてしない。
 

 なんなの?この子・・・


 恥ずかしさの欠片もなくこんなことを堂々と・・・


 でも、私だって負けるわけにもいかない。


高山「あなた・・・だけじゃない・・・」


浅木「はい?」


高山「負けられない理由があるのはあなただけじゃない!!」


 目の前の男はびっくりしていた。


 いらいらしてしまう。


 こんな男に負けたくない。


 負けるわけにはいかない・・・・・・。


 俺は目の前の女性にも負けられない理由があることを知った。


浅木「なら・・・お互い引けないわけですね・・・」


高山「そうね・・・」


浅木「それなら全力でいきますから覚悟しておいてください。」


高山「楽しみにしているわ。」


 そして、俺は素振りを軽くし始めた。


 この人の前でも関係ない。


 自分のレベルを教えて手加減してもらおうとかそういうんでもない。


 ただ、今何かをしていなければ、プレッシャーに押しつぶされそうだったから。


 ただそれだけの理由だった。


 精神統一をしながら私は彼の素振りを見ていた。


 とても私に勝てるレベルじゃないことはすぐにわかる。


 でも、なぜか一振り一振り怖いものを感じた。


 思いが詰まっているこの振り。


 例え自分よりも格下でも、なぜかそれを恐れてしまう。


 なぜだかわからない。


 でも・・・


高山「(そんなはずはない!!)」


 その恐怖から逃れるために私は完全に目を閉じ、精神を集中させた。

 夢の中、俺は親父に会っていた。


 穏やかではあるが、二人とも思いつめた感じがある。


 よくわからない。もっと知りたいが何も聞こえないしわからない。


 夢の中の親父がどんどん遠くに行く。


 そして、夢の中の俺が叫ぶ。


 待ってくれと。


 それだけ聞き取れた。


 ふと、振り返った親父は笑顔だった。


白谷「あ、起きちゃった?」


浅木「んあ?」


 目の前に麻美さん?


 あれ?なんで??


 まだ半覚醒の俺にとってよくわからない状況。


白谷「かわいい♪・・・チュ・・・」


 ほっぺにキスされてしまった。


浅木「って!!ぇ!!何どうして!!」


白谷「どうしてって、徹夜明けで、私の家に寄っていくって私が誘ったから?かな。」


 あ~思い出した。


 だが・・・不意にキスはせこすぎる・・・


 胸の鼓動は早まって、半覚醒から覚醒状態に・・・色々な意味で・・・


白谷「あ!そうだ。お腹すいたでしょ。ご飯食べる?」


浅木「いただきます!」


 と、少しでもばれないように・・・他の話題にいってくれたことが助かる。


白谷「さっきのキスは先に寝ちゃったからゴメンってことで♪」


 誤魔化せてなかったようだ・・・。


 最近麻美さんが積極的なのは気のせいだろうか・・・


 まぁ悪い気はまったくしないんだけどね。


 こんな日がいつまでも続けばいいと思う。


 そんなことを考えていると、朝食のようなメニューが出てきた。


 魚に味噌汁にご飯。


 そういえば、今何時か確認していない。


 午後2時。


 6時間近く寝ていたらしい。


浅木「うまそうだ。」


白谷「どうぞ。」


 魚がうまい・・・


 何を隠そう俺は魚が大好きなのだ。


 味噌汁も多分合わせ味噌で俺の好きな味だ・・・


浅木「幸せだ・・・」


白谷「え?何か言った?」


浅木「え?い、いや!!美味しいなって言ったんだ。」


 心の声が言葉に出てしまった。


 時間的には昼食になるだろうから、昼食を食べ終えて、飼える準備を始めた。


浅木「今日はありがとう。また来るよ。」


白谷「わかった。また誘うね。」


 そして、自宅まで急いで帰った。


 洗濯とか炊事とか色々と中途半端な感じで家を出てきたから、大変なことになっているだろう。


 自宅に着いて鍵を開け中に入った。


 が・・・見知らぬ靴二人分ある・・・


 誰かがいる?


 でも、ここの鍵は親父と母さんと俺しか持っていないはず・・・


 親父・・・か?


 いや、いつもならはっきりと帰ると言うから違う可能性もある。


 恐る恐るリビングへと向かう俺。


 テレビの音が聞こえる・・・


 まぁ泥棒が靴を玄関に置いたままリビングでテレビなんて見ないだろう。


 リビングの扉を開けるとそこには・・・


浅木「親父・・・なんでいるんだよ・・・」


浅木父「今は何時だと思っているんだ?」


浅木「ひ、昼の3時だけど・・・それが何か?」


 まさか誰かの家に泊まっていたことなんて知れたら何されるかわかったもんじゃない。


浅木父「昨日の夜から何処かへ行っていただろう?」


浅木「お、親父は何時にご帰還されましたでしょうか?」


 可笑しな言葉遣いになってしまった・・・


 もう夜のことから聞かれたら回避不可能だ・・・


浅木父「昨日の真夜中だ・・・」


 はい、もう無理よぉ~


 説教されることを覚悟し、親父の前に正座した。


浅木父「まぁいい、それより紹介したい人がいる。」


 奇跡!回避できた!!


 が、紹介??何のことだろう。


浅木父「静香出てきなさい。」


??「はい。」


 清楚な感じな、なんとも綺麗な人が出てきた。


 不覚にも見惚れてしまい、言葉をなくした。


高山「私は【高山 静香】と申します。」


 俺の目の前まで来て、正座をし、頭を下げた。


浅木「あ、これはどうも。純っていいます。」


 普通に流れに任せてしまった・・・


 そういえば、親父から連絡が来てたことを思い出す。


浅木「って!この人は何なんだよ!」


浅木父「何ってお前をこれからサポートしてくれるパートナーだよ。」


浅木「そんな・・・勝手に・・・」


 そういえば・・・高山?何処かで聞いたことがある・・・


浅木「まさか高山って・・・あの?」


 お願いだから違っていて欲しい。


 高山家・・・浅木家より会社の名前では劣るものの、世界にしてみれば強豪社である一族である。


浅木父「何だ。知っていたのか。」


浅木「知っているも何も・・・有名じゃないか・・・」


 頭の中で色々考えてみる。


 この人がパートナーとなってしまっては、俺は麻美さんと別れることになるだろう。


 実際、親父の言うことに俺は逆らえない。


 逆らえないようになぜか手を回される。


 でも、ここ半年こっちに帰ってきていないから、麻美さんには手を回せなかったんだろう。


 知らないはずだ・・・多分・・・


高山「叔父様一ついいでしょうか?」


浅木父「何だ?」


高山「私は叔父様は尊敬はしていますが、まだ学生の坊やを尊敬しろというのは無理があります。」


 何を初対面の俺がいる前で言ってやがる。


 まぁ確かにこんなお嬢様で、俺より年上であるのは確かだが・・・劣っているとは思いたくも無い。


浅木父「確かにもっともだ。ならテストでもしてみるか?」


高山「テストと申しますと?」


浅木父「お前の好きなようにしていいということだ。」


 また勝手な・・・


浅木「ちょっと待てよ!俺はこんな初めて会った奴とパートナーになる気はないからな!」


浅木父「ほほう。お前にはもっと相応しい人でもいるということか?」


浅木「あぁ、そうだよ。俺にはこの人より相応しい人はいる。」


 今まで口答えなんてしたことがない俺が、なぜか俺だけではなく麻美さんまでも馬鹿にされたような気がして頭にきていた。


 俺だけが馬鹿にされるならともかく、大切な人を馬鹿にされるのは我慢ができない。


高山「私以上に能力の高い女性はいないと思いますが?」


 言い切りやがった・・・


 とんだ自信過剰のお嬢様のようだ。


浅木父「調べはすべてついているんだぞ?それでも口答えするのか?」


 調べって・・・


浅木父「お前には半月前から監視をつけていた。だから、恋人がいることも知っている。あんな不幸を呼び寄せるような女の何処がいいんだ?」


 不幸を呼び寄せるだって?


 今この目の前にいる男は、息子である俺が選んだ人を侮辱した。


 俺のすべてを侮辱された。


浅木「不幸を呼び寄せるだって?ははっ!笑わせる!!一番不幸を呼び寄せてるのはあんたじゃないか!!」


 俺は今までの不満をぶつけた。


 両親がいない寂しさ。家に帰っても何も無い。誰もいない。


 あるのはテーブルの上にあるお金だけ。


 確かにそれは腹を膨らましてくれるだろう。


 だが、俺のこの寂しさを誰が埋めてくれる?


 誰が支えてくれる?


浅木父「知ったような口を聞きよって・・・ならば証明してみせろ。お前が今まで歩んできた道でどれほど強くなったかを。」


高山「ならば、剣術ではどうですか?あなたは中学のころ剣道をしていたのでしょう?」


 ふふっと笑いながら俺を見ていた。


 まるで、馬鹿にしているかのように。


 もうこの状況ではあとには引けない。


浅木「明日の13時だな・・・場所は学校でいいか?」


高山「いいですわ。」


 そして、親父と高山は家から出て行った。


 この広い家には俺一人となった。


 なんともいえないこの寂しさ。


 あれだけ口答えして負ける訳にはいかない。


 これでも、全国レベルの腕は持っている。


 勝てないわけではないが、そのことを知っていて相手はこの勝負を振ってきた。


 ならば、相当な実力者であることは確かである。


 油断はできない。


 それに麻美さんにはこのことは言えない。


 俺が負ければ別れることになるなんて。


 こんな別れ方なんて言えない。言いたくない。


 多分、負ければすべてをなくすだろう。


 親父の言いなりになんてもうなりたくない。


 だから、明日は勝つ。どんなことをしてでも勝たなければならない。


 俺は明日の試合に備えてもう休むことにした。

ある日を境に僕はすべてを失った…

僕は一人の女性に恋をしていたんだ

その人と一緒にいるだけで、笑顔になれたし幸せだった

隣じゃなくていい近くにいられるだけでよかったんだ

あれはいつだったかな

僕の毎日は平凡

そんなつまらない毎日に少しは楽しさを知った

彼女に出会ったから

彼女は笑顔を僕に向けてくれた

色々な遊びもした

近くに今まではいられたんだ

知っていた

そんな日々は長くは続かないってことぐらい

でも、それを求めることに意味はあるのだろうか

その人を思い、隣にいられることを願い、そして失う

それをわかっていながら思い続ける

失う日がいつになるかわからないが、その日は刻一刻と近づいてきているんだ

そして

その日がやってきた

彼女の隣には僕ではない人がいた

僕は大切な人を失った

でも前とは違う感情があった

彼女が幸せになれるのならそれでいいと思うようになった

例えそれが自分自身の心を傷つけることがなったとしても……

それにまだ心には残ってる

幸せに思える日々があったことを

僕はそれを大切に過ごしていこう

僕の大切な人の幸せを願いながら

白谷「もう朝だぁ~!!」


 時間はもうすでに7時を過ぎていた。


 麻美さんはすごかった・・・


 ほぼ8時間休憩なしで歌い続けていた。


 俺も歌い続けたが・・・もう体力の限界だ~。


浅木「もう駄目だ・・・眠い・・・」


白谷「じゃあ、帰ろうか。」


浅木「そうしよう。」


 それから帰宅までボーっとして何を話したのかあまり記憶にない。


 まぁ徹夜なんて久しぶりだからな。


 最初に入店するときに高校生ってばれなかったのが奇跡的だ。


 麻美さんの自宅の前についてお別れをしようとした。


浅木「じゃあ、またメールするよ」


白谷「うん・・・」


 少し麻美さんの様子が変なことに気がついた。


浅木「どうした?」


白谷「眠い・・・よね?」


浅木「まぁ眠いけど・・・それが?」


 頭がちょっとふらついているが、これぐらいならいつものこと。


 心配されることはないと思うんだが・・・


白谷「今親いないから家で寝ていっても・・・いいよ?」


浅木「そうだ・・・な・・・って、え??」


 麻美さんが言った事があまり理解できなかった。


 今の状況は麻美さんの家の前、二人とも徹夜明け、俺も眠い。すぐに寝られる場所が目の前にある。麻美さんが誘ってきているということだ。


浅木「あの・・・麻美・・・さん?それは上がってもいいってこと?」


 麻美さんは無言で頷いた。


 これは・・・もしかして・・・


 間違ったこととか!!


 いやいや、下心とかありませんよ?


 もちろんあるわけないじゃないですか。


 ちょっと若いもの同士寝不足で、それに彼女が彼氏の帰り道を心配してもしかしたら倒れるとか色々想像しているのかもしれないじゃないですか。


 ははっ!そう!それだよ!そうに違いない!!


浅木「じゃ・・・じゃあそうしようかな!」


白谷「どうしたの?もしかして・・・エッチ・・・」


浅木「さぁ!入りましょう!!」


 気づかれている・・・ってか、この場合誘ってる?誘われているのか??


 色々なことが頭の中を駆け巡る。


 もう心臓が口から出てくるんじゃないかってくらい鼓動は早くなってますよ。


白谷「どうぞ。狭い家ですけど。」


浅木「そ、そんなことないですよ!」


 本当にそんなことないくらいの広さはあった。


 家族三人で暮らすには十分の広さがある。


白谷「じゃあ、先にお風呂沸かしてくるね。寝る前に入りたいから。」


 もう・・・頭の中にはあってはならない想像がぐるぐると駆け巡っていますよ・・・はい・・・。


 麻美さんがお風呂の準備をしている間に、俺はリビングでテレビをつけていた。


 特に変わったこともなく世界は平和なようだ。


白谷「先に入ってきていいよ。私ここにいるから。」


 と、タオルを渡してくれた。


 着替えは無いのでそのまま今日着ていた物でもいいだろう。


 風呂に入っても、頭の中のエロスの世界は離れなかった。


浅木「うぅ~。こんなことになるなんて・・・なんの心の準備もしていない・・・」


 いつも以上に身体を入念に洗ってしまったのは内緒ということで。


 風呂から上がり、服を着てリビングへ向かった。


浅木「あ・・・上がりましたよ~」


 もう心臓は破裂しそうです。


 でも、リビングからは返答がなかった。


 どうしたんだろうと思い、リビングへの扉を開いた。


白谷「すぅ・・・すぅ・・・」


 そこにはソファーで寝息を立てて寝ている麻美さんがいた。


浅木「寝ちゃってるね・・・」


 ふぅっと胸を撫で下ろすものの、よかったような残念なような。


 近くにあった毛布を少しだけかけてあげ、その場に座り込んだ。


 身体も暖まり、眠気が襲ってきた。


浅木「もう無理・・・ねむ・・・」


 そのままソファーにもたれかかる感じで俺も眠りについた。

 あれからどのくらいの時間がたったのだろう。


 ベッドから起きようと身体を起こした。


 あれから俺は先輩と散歩に出かけた。


 途中で橘ともあった。


 でも、あいつは声をかけずに肩を叩いただけで走って行ってしまった。


 俺は心から礼を言った。


 それから、如月のところにも行った。


 如月は麻美さんに、「もう喧嘩したらダメだからね。次したときは私が取っちゃうんだから・・・。」と、それだけを言い残し家に入って行った。


 俺たちの関係を認めてくれたようだ。


 それから、俺たちは家に帰った。


 家に帰り着くと、俺は先輩と初めてキスをした・・・・。


 それから、俺は自分の家に帰った。


 精神的に疲れたのだろう。


 すぐに横になった。


 今何時か見ると、午後9時。


 体が少し痛い。


 このごろ運動という運動をしていなかった。


 少し生活時間が変わると体がものすごくだるくなる。


 俺はまた散歩に出た。


 少し涼しくなっていた。


 風がとても気持ちいい。


 俺は近くの公園に向かった。


 自動販売機でコーヒーを買いベンチに座った。


 今日はいろいろあった。


 麻美さんとの仲も戻った。


 如月とも多分いつもどうり友達でいられるだろう。


 俺は携帯を取り出した。


 ちょうど麻美さんから電話がかかってきた。


浅木「どうかしたか?」


白谷「今何処にいるの?」


浅木「俺の家の近くの小さな公園」


白谷「今から行ってもいい?」


 麻美さんとそんな会話が出来ることに嬉しさを感じた。


 離れていた時は本当に苦しかったからだ。


浅木「ああ、待ってるよ。」


 そして、俺は電話を切って携帯を閉じようとした。


 両親から着信履歴が一件入っているのに気づいた。


 そういえば、昨日の夜にかかってきていたことを思い出す。


 それを聞くためにボタンを操作する。


 携帯を耳にあて久方ぶりの両親の声を聞く。


父「純か。お前にとってこれから共に歩んでいく人を連れて行く。そのために心の準備をしておくように」


浅木「はぁ!!??」


 まさかの展開に俺はびっくりする。


 確かに俺は親父たちの会社を継がなければならない。


 だが・・・どうして・・・


 頭の中で色々と考える。


 共に歩んでいく人・・・


 許婚・・・


 そんな馬鹿な・・・


浅木「いや・・・何かの間違いだ・・・」


 留守番電話の履歴を消去し、親父に電話をかける。


浅木「でろ・・・このくそ親父!!」


 がしかし、そんな願いも届かず電話は繋がらない。


浅木「まぁ・・・電話かけたの気づいたらまたかけてくるだろう」


 そんなことを思いながら麻美さんを待つ。


白谷「お待たせ。待たせてごめんね。」


浅木「あ、い、いやそんなに待ってないから大丈夫だよ。」


 急に声をかけられたから動揺してしまった。


白谷「どうしたの??そんなに焦って。」


浅木「本当に何でもないよ。今からどっか行く?」


 話をそらそうと移動を試みてみる。


白谷「そうだね。まだ行ってないカラオケに行きたい!」


 うまく話をそらせたようだ。


 しかし、問題の解決にはなってない。


 どうにかして対処しないとな・・・。


 そして、カラオケに入った俺と麻美さんはそこで一夜歌い続けた。

 俺は携帯を取り出し麻美さんの携帯に電話をかけた。


 出ない・・・。


 家にも何度もかけた。


 でも、出ない・・・。


 俺は携帯を持って麻美さんの家に向かった。


 麻美さんの家に着いた。


 インターホンを鳴らす。


 でも、誰も出ない。


 親もいないのか。


 麻美さんの部屋を見る。


 カーテンが閉められており誰かがいるような気配が無い。


 !!!


 カーテンが揺れている。


 俺は察した。


 今麻美さんが見ていたってことを。


 俺はドアを叩いた。


 ドンドンドン!!!


浅木「いるんだろ!!出てきてくれよ・・・お願いだから!!」


 ドンドンドン!!!


 で反応がない。


 すると、隣の家の人が出てきた。


おじさん「なんだい。朝から騒々しい。」


 俺を見つけて睨みつけていた。


 でも、俺は止めない。


おじさん「君は誰だい?そこで何をしているんだ。場合によっては警察を呼ぶぞ。」


 俺はドアを叩くのは止めた。


 おじさんの方を向くが何も言えない。


 おじさんはそのまま電話を取り出した。


 すると、その時ドアが開いた。


白谷「おじさんちょっと待って。この人は知り合いなの。」


おじさん「そうなのかい。でも、次からは騒々しくしないでくれ。」


 麻美さんは頭を下げた。


 家に入るのに成功した。


 親は二人とも旅行中でいないらしい。


白谷「どうして来たの?」


 俺は覚悟を決めた。


浅木「麻美さんに会うためだよ。」


 麻美さんの肩が震えているのが分かった。


 抱きしめてあげたかったが、まだ我慢した。


白谷「私といるとまた怪我をするかもしれない。」


 俺は黙っていた。


白谷「また、あんな事故みたいなことが起こるかもしれない。」


 俺は我慢できずに少しずつ近づいた。


白谷「それが怖いの。あなたにはもうあんなことにはなって欲しくないの。」


 言い終えたときに後ろからやさしくそっと抱き寄せた。


浅木「いいんだ、そんなこと。俺はもう少し麻美さんに頼って欲しい。俺はそんなに頼りになるかわからないけど、だけど少しでも頼って欲しい。」


 俺は麻美さんを強く抱きしめた。


浅木「もう離したくない。離れたくない。会えなかった日はとても辛かった。苦しかった。」


 麻美さんは無言のままだった。


 何も言ってくれない。


 どうしようもない不安。


 でも、俺はもう覚悟は出来ている。


 例え断られたとしても・・・・・・。


 でも、それまではこのままでいたい。


白谷「私も辛かったよ。あんなこと言わなければよかったって思ってる。でも、もう嫌だよ…。」


浅木「わかった。」


 俺はゆっくりと手を解いた。


 何があっても受け止めると思っていた。


 でも、こんなのって悔しすぎる。


 気づかないうちに麻美さんを傷つけいたこと。


 それが悔しい。


 俺は腕を解いたと同時に涙が溢れ出てきたのを感じた。


 止まらない。


白谷「でも・・・・・」


浅木「え・・・・?」


 麻美さんは俺の方を向いて俺を抱き寄せた。


白谷「それでも、あなたのことが好き・・・。」


 俺は初めて麻美さんから抱きしめられた。


 そして、初めて麻美さんの胸の中で泣いた・・・・。
 

 朝、自然に目が覚めた。


 6時・・・・。


 頬には涙が流れたあとが残ってた。


 あれから一週間経っていた。


 あの出来事が昨日のことのように夢に出てくる。


 麻美さんと別れたくなかった。


 でも、彼女の苦しそうな顔を見ると何もいえなくなる。


 それでも、彼女だけは離したくなかった。


 何も出来なかった自分が嫌になる。


浅木「何やってんだ、俺・・・・」


 ベットから起き上がると服を着替えた。


 散歩をしようと家から出た。


 いつも通っている道。


 何も変わっていない。


 変わったのは俺の周りだけ・・・。


 無償に寂しさが込み上げてきた。


 歩いているとランニングをしている橘を見つけた。


 俺に気づいたのだろう。近づいてきた。


浅木「よう」


橘 「おう」


 軽い挨拶をしただけで重い空気が漂う。


 前まではこんなことはなかった。


橘 「ちょっといいか?」


 俺は黙ってついていった。


 近くの公園につくとベンチに腰をおろした。


橘 「如月とはどうなった?」


浅木「告白みたいなのを受けたよ・・・。」


 橘は真剣に聞いてくれていた。


 橘だけは俺の気持ちをわかってくれていた。


浅木「でも、まだはっきりとは断ってない・・・。今は頭の中がぐちゃぐちゃなんだ・・・」


橘 「そうか・・・。」


 頭の中には麻美さんのことばかり考えていた。


 他に何も考えられない。


 苦しい・・・・。


橘 「白谷先輩とはどうなった?」


 橘はいつも痛いところを突いてくる。


 でも、話せば少しは楽になるかもしれない。


 だから、話した。


浅木「麻美さんとは別れた。」


 別れた・・・・


 その言葉を言った瞬間、胸が痛くなる。


 苦しい・・・・今までに感じたことが無いくらい。


橘 「ぇ?別れたのか?あんなに仲がよかったのに。」


浅木「俺といると俺に迷惑ばかりかけるから・・・って言われた。」


 麻美さんの不安な顔・・・。


 今思い出しただけでも心が痛い。


橘 「なんでそんなことで・・・・」


 橘の言葉に少しむかついた。


浅木「そんなことだと・・・お前に何がわかるっていうんだ!!」


橘 「ど、どうしたんだ?」


浅木「お前に麻美さんのあの顔を見たときの俺の気持ちがわかるのかよ!!!」


 俺は怒鳴りつけたあとすぐに我に返った。


 怒鳴りつけたことを少し後悔した。


橘 「すまん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。」


浅木「俺こそ。怒鳴ったりしてすまん・・・。心配してくれているのに・・・。」


橘 「だが・・・」


浅木「ん?どうした?」


 橘が少し深刻そうな顔をしていた。

 

 こいつのこんな顔を見たのは久しぶりなような気がする。


橘 「お前・・・そんなにモテてたっけ?」


浅木「はぁ?こんなときに何を。」


橘 「だってよ・・・」


浅木「確かに・・・」


橘 「ふはっ。」


浅木「ははっ。」


 少し沈黙があったがすぐに笑えた。


 俺たちの関係はこれだけで修復できる。


 でも、麻美さんとの関係はどうなのだろう。


 如月の事だってまだ残っている。


橘 「あんまり悩むなよ。自分の気持ちに素直になればいいんだ。」


 そんなことはわかっている。


 でも、自分ではどうすればいいのかわからない。


橘 「お前はまだ白谷先輩のことが好きなんだよな?」


浅木「ああ。」


橘 「それならその気持ちをぶつければいい。」


 ぶつけたい。


 でも、拒絶されたらどうする?


 俺は立ち直れるだろうか。


 たかがそんなことで、と片付けてしまえば簡単だろう。


 でも、そんなことは俺には出来ない。


 怖い。


浅木「怖いんだ。拒絶されたときのことを考えると・・・」


 橘はいきなり俺の頬を殴りつけた。


 俺は一瞬何をされたのかわからなかった。


橘 「お前はそんなに意気地なしだったのか・・・俺の知っているお前は後先考えずに突っ走るやつだっただろ。例えどんなことがあっても。」


 そうだ。前までも俺は多分こんなことでは悩まなかっただろう。


 何も考えずに突っ走って失敗しても諦めずにまた突っ走って・・・。


 そんな自分を忘れていた。


 橘に思い出させてもらった。


浅木「そうだよな。こんなに悩むなんて俺らしくないな。」


橘 「そうだ。それでこそ俺が知っているお前だ。」


 俺は急いで家に戻った。


 家に帰り着いた時には10時30分を回っていた。


 俺は麻美さんの所に行く前に如月に会いに行くことにした。


 俺は如月の家に向かい、家に着いた俺はインターホンを鳴らした。


 すると、如月の声が聞こえた。


 俺は公園に呼び出した。


如月「用って何?」


浅木「この前のことはっきりしようと思って。」


如月「そう…」


 如月はやっぱりとても辛そうな顔をする。


 でも、これだけはちゃんとしておかないと自分が許せなくなる。


浅木「如月がこの前先輩に言ったこと覚えているか?」


如月「うん…」


浅木「俺は記憶を無くしていて、高校のことは何も覚えていなかった。でも、俺が起きたときに目の前にいてくれた。病院の先生の話を聞いてみたら、いつも看病してくれていたんだって言っていたんだ。俺は嬉しかった。俺のために看病してくれる人がいるだけで・・・。退院してからもいつも付き添ってくれた。あの時は誰かの支えがなければ俺は何も出来ていなかっただろう。だから、俺はその人を大事にしたい。例えこれからどんなことがあっても。そして、如月にも分かって欲しい。」


 俺は今思っていることを全部話した。


 如月にも麻美さんのことを分かって欲しかったから。 


如月「今はどうなの?先輩とは…。」


 俺は少しためらったが言うことにした。


浅木「今は少し距離を置いてる。」


 如月は不思議そうにこっちを向いた。


如月「なんで?別れたの?」


 俺はそれを否定出来なかった。


 別れたのかもしれない。


 でも、認めたくなかった。


如月「なんで私の所にきたの?ちゃんと仲直りしてこなきゃダメじゃない」


 如月は少し怒ったように言った。


如月「早く言ってあげなよ。」


浅木「ああ。じゃあ、また後で。」


 俺は如月に別れを告げると麻美さんのところに向かった。


如月「私・・・なにやってるんだろう・・・。」


 如月は寂しそうに空を見上げた。

 目覚ましが鳴った。


 が、起きる気になれない。


 なぜかとてもだるかった。


 頭も痛い。


 熱を測ってみると38度くらいあった。


 薬でも飲んで寝ていようかと思って救急箱を開けたが風邪薬が入っていない。


 仕方なく買いに行くことにした。


 家を出て商店街に行った。


 風邪薬を買い、家に帰ろうとして路地に入ったとき、誰かの声がした。


 覗いてみると、そこには麻美さんに言い寄っている二人組みの男子がいた。


白谷「や、やめてください!」


男1「いいじゃん、少し俺たちに付き合ってよ。」


男2「そうだよ。俺たちが誘ってるんだから黙ってついてこればいいんだよ。」


 と、行って麻美さんの手を引っ張った。


白谷「い、痛い!」


 俺はそれを見て飛び出していった。


 男2に体当たりをした。


男2「ぐはっ」


 男2はその場に倒れこんだ。


男1「誰だ、お前は!!」


 俺はかまわずその男に殴りかかった。


 相手のあごにうまく当たった。


 男はその場に倒れこんだ。


 でも、俺は後ろに近づく影に気づいていなかった。


白谷「う、後ろ!!」


浅木「ん?」


 後ろから何かで殴られた。


浅木「いてぇ・・・じゃねぇか!!!」


 でも、ここで倒れたら麻美さんに何があるかわからない。


 最後の力を振り絞りその男の顔目掛けて殴りつけた。


 それがうまく当たり男は壁に叩きつけられそのまま倒れこんだ。


白谷「だ、大丈夫?今救急車呼ぶから。」


 そして、麻美さんは携帯を取り出した。


男1「くっ・・・・痛~じゃね~かこのやろう」


 と、言いながら立ち上がろうとしていた。


浅木「俺の言葉ぱくるなよ・・・麻美さん逃げてください。」


白谷「で、でも・・・・」


浅木「俺のことはいいから早く。ここの路地から抜けて人を呼んできてくれ・・・」


 それを言うと、俺は麻美さんを行かせようと体を押す。


 が、あまり手に力が入らない。


白谷「わ、わかった。すぐに戻るから・・・」


 そういうと、走って路地から抜けていった。


男1「よくもやってくれたな。」


浅木「最近は・・・色々なことに巻き込まれるな・・・」


 どかっ


 俺は男の蹴りをもろに食らった。


浅木「げふっ」


 俺は必死に逃げようと、手を伸ばし前に進もうとしたが、腕に力が入らない。


 男はまた俺に蹴りを入れた。


 どかっどかっ


浅木「ぐはっ」


 俺はそのままうずくまってしまった。


 男は笑いながら蹴りを繰り出してくる。


 その時誰かががやってきた。


白谷「あそこです。」


 麻美さんは警察を連れてやってきていた。


男1「やっべ。」


 男1は男2を置いて逃げていった。


 俺はそのまま気を失った。


 ぽたっぽたっ・・・・


 腕に水みたいなものが落ちているような気がした。


 目を開けるとそこは病院だった。


 俺は病院に来ることが多いようだ。


 腕に落ちてきている水みたいなものの正体を知ろうと横に顔を向けてみると、そこには俺の手を握りながら泣いている麻美さんがいた。


 水みたいなものの正体は、涙だったようだ。


 麻美さんは『ごめんなさい』と何度も言っていた。


 俺が起きたのにも気づいていないようだ。


浅木「麻美さん?」


白谷「純君?」


 俺は握られている方の手で麻美さんの頬をなでた。


浅木「なんであんな路地なんかにいたんだ?」


白谷「純君の家に行くにはあっちの方が近いから・・・」


 そういうとまた泣き出してしまった。


白谷「ごめんね、ごめんね・・・」


 俺はそのまま麻美さんを抱き寄せた。


 このごろ麻美さんの笑った顔を見ていないのが寂しい。


 その原因を作っているのは俺なのかも知れない。


 如月のこととかもいろいろある。


 まだ解決してない。


 そして、立て続けに今回のことがあった。


 そんなことを考えていると、麻美さんは体を離した。


白谷「もう一緒にいられないよ・・・・」


浅木「え・・・?」


白谷「私のせいでこんなことばっかり起きてる・・・・。」


浅木「麻美さんのせいじゃない。」


白谷「ううん。違わない。あの事故だってそう。私がカラオケなんかに誘ったから・・・。私がいたから・・・。如月さんだって私がいないほうがいいと思ってる。」


 俺は何も言えなかった。


 それは麻美さんの心からの声なのだろう。


 麻美さんが苦しいのはわかっている。


 わかってるけど何も言えない。


 そんな俺が嫌だった。


 自分が嫌いになるくらいに。


白谷「だから・・・さよなら・・・だよ?」


 麻美さんは今どんな気持ちで言っているのだろう。


 俺はそれを考えると何も言い出せなかった。


 そして、麻美さんはそのまま部屋から出て行ってしまった。


 追いかけたい。


 追いかけて抱きしめてやりたい。


 けど、そんなことをしても麻美さんの不安は消えないだろう。


 もう、どうすればいいのかわからなかった。


 その時先生が入ってきた。


 今日一日は安静に寝ろとのことだった。


 前回の記憶をなくした事件からまだ一日しかたっていないのに、あまり無茶をするなときつく言い先生は出て行った。


 携帯を確認してみると留守番電話に録音が一件入っていた。


 確認してみると、それは如月からだった。


 ここは病院だし・・・携帯を扱うこともできないな・・・


 そのまま携帯の電源を切り眠りについた。