<東京高裁総則6項のれん事件のまとめ>

 

租税訴訟学会で東京高裁総則6項のれん事件が取り上げられました。議論が錯綜して整理されていないので、私の見解をまとめておきます。

 

相続発生時に営業権(のれん)はなかったという議論は無理があります。

 

相続発生時に営業権(のれん)は結果的に算定されなかったということです。納税者の選択による①セーフ・ハーバー・ルールである純資産価額方式と②類似業種批准方式のどちらでも、結果的に営業権評価額は算定されなかったと言えること(要確認)、②には算式そのものに営業権(のれん)が含まれていないことが重要です。

 

基本合意書に依拠した債権は、相続時には確定していなかった、相続時点で債務が確定していないという言い方は可能かと思います。

 

そして、この事案に限らないのですが、納税者の選択により①セーフ・ハーバー・ルールである純資産価額方式と②類似業種批准方式のどちらを選択するかははあくまで納税者の選択であること、納税者が仮に①セーフ・ハーバー・ルールである純資産価額方式を選択していれば、更正処分等は受けなかった可能性が高いと議論する必要があるのではと考えています。

 

この議論は①と②の比較では必ずしも納税者に有利にならないのですが、今後の同種の事案の指針になると考えています。

 

また、あくまで相続税評価額の否認という時価の事実認定の過程で納税者平等原則が用いられたと整理すれば、東京高裁が東京地裁の租税回避行為の範囲と定義を避けて別の概念を用いたこと、時価の事実認定と租税回避行為の否認は全くの別問題であると整理することが可能です。根拠には令和4年最高裁の調査官解説(山本拓、法曹時報75巻12号)のみを用いると、議論がスッキリするのではないでしょうか。

 

よろしくお願いします。