坂本勇人(さかもと はやと)の税務調査について徹底分析

 

読売ジャイアンツの坂本勇人(さかもと はやと)の税務調査、5年間で1億円の必要経費の否認について分析してみたいと思います。

 

まず、本当に驚かされるのが、「同僚と飲食した費用が、なぜ、経費にならないのか?徹底的に国税と争うべきだ!」「飲食は野球選手には必要な経費!」等、とても税理士とは思えないような、坂本勇人(さかもと はやと)擁護論がSNS上を闊歩していることです。

 

言論の自由はありますが、根拠のない好き勝手なことを垂れ流すのは、どう考えても税理士の仕事ではありませんし、世の中のためにもならないことは明かです。

 

必要経費は所得税法37条に規定されているので、まず、条文の規定を確認して、条文の規定に基づいて解釈する必要があります。

 

これを文理解釈といいますが、税法の基本です。

 

そして、国税庁HPの「No.2210 やさしい必要経費の知識」には、所得税法37条の適用関係が分かりやすく説明されています。

 

国税の言うことが全てではありませんが、税理士の役割として、国税のメッセージを噛み砕いて、易しく納税者に伝えることも大事な仕事の一つです。

 

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

 

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

 

必要経費に算入する場合の注意事項については、次のとおりです。

 

(1)家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。

(例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)

 

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

 

つまり、坂本勇人(さかもと はやと)が必要経費に計上した同僚との飲食費が「業務上の費用の額」に該当すれば費用になりますし、「家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費)」に該当する場合には、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額が費用の額になります。

 

「直接」という条文にない文言が用いられていることから、この解釈を否定する見解も存在しますが、あくまで、家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費)に該当する場合の説明であることから、解釈に齟齬は生じないものと考えます。

 

週刊誌報道によれば、坂本勇人(さかもと はやと)が必要経費に計上した額は、高級クラブでの飲食代ということですから、この週刊誌報道が正しければ、当該費用は所得税法37条後段の「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」には該当せず、家事関連費として業務遂行上直接であったことが明らかに区分できる金額にも該当しない、従って、必要経費にはならないと考えられます。

 

 

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所得税法37条 必要経費

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額ののうち第35条第3項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。