顧客リスト、特許で保護されていない技術(ノウハウ)、データベースは独立営業権?

 

顧客リスト、特許で保護されていない技術(ノウハウ)、データベースは、独立した資産として取引される慣習のある営業権( 法令123の10③ )、独立営業権に該当するという議論があります。

 

会計上の「のれん」と無形資産との区分の議論をそのまま資産調整勘定と独立営業権に当てはめてしまった結果です。

 

無形資産の例示である、顧客リスト、特許で保護されていない技術(ノウハウ)、データベース(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針58、59)は、独立営業権とは限りませんし、減価償却可能な資産ですらない可能性もあります。

 

このような杜撰極まりない議論が、10年以上放置されているのですから、心底、驚きです。

・・・・・・・・・・・・・・

適用指針58(38頁)(法律上の権利の範囲)

「法律上の権利」(企業結合会計基準三2.(3))とは、次のいずれかに該当するものをい う。

(1) 特定の法律に基づく知的財産権(知的所有権)等の権利 これには、産業財産権(特許権、実用新案権、商標権、意匠権)、著作権、半導体集、積回路配置、商号、営業上の機密事項、植物の新品種等が含まれる。 

(2) 独立第三者と締結した契約に基づく権利で未履行のもの

これには、業務委託契約、請負契約、施設利用契約、商品売買契約、フランチャイズ 契約等が含まれる。

 

適用指針59(38頁)(分離して譲渡可能なものの範囲)

「分離して譲渡可能な無形資産」(企業結合会計基準 三 2.(3))とは、企業又は事業と独立して売買可能なものをいい、取得した資産を譲渡する意思が取得企業にあるか否かにかかわらず、単独で譲渡することが可能であれば当該要件を満たすことになる。

法律上の権利ではないが、分離して譲渡可能なものの例としては、顧客リスト(法律や契約により譲渡等が禁じられている場合を除く。)、特許で保護されていない技術、デー タベースなどがあげられる。

 

適用指針366(144頁)

企業結合会計基準 三 2.(3)では、無形資産の認識要件として、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるもの」のほかに、「1)法律上の権利又は2)分離して譲渡可能」という要件をあげている。ただし、企業結合において取得企業は純資産を一括して取得するため、取得原価を無形資産に配分するためには、時価の算定が必要になる。このた め、本適用指針では、無形資産に取得原価を配分できる場合の要件として、3)その独立した価額を合理的に算定できる場合であることを明示することとした。(付番、強調、下線は筆者)

 

適用指針367(144頁)

「取得した資産に1)法律上の権利又は2)分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、 取得原価を当該無形資産等に配分することができる」(企業結合会計基準 三 2.(3))とされている。(付番、強調、下線は筆者)

 

適用指針368(145頁)

法律上の権利(第58項参照)又は分離して譲渡可能(第59項参照)という認識要件を満たさないため、無形資産として認識できないものの例としては、1)被取得企業の法律上の権利等による裏付けのない超過収益力や2)被取得企業の事業に存在する労働力の相乗効果 (リーダーシップやチームワーク)がある。これらは識別不能な資産としてのれん(又は 負ののれんの減少)に含まれることになる(付番、強調、下線は筆者)