居合抜きの達人

-営業権(のれん)のちょっとよい話14-

(重要事項につき、内容を精査して再々掲)

 

 

これは、『M&Aと営業権(のれん)の税務』(税務研究会出版局 2000年)に掲載したものを、2024年3月に改めて書き直したものです。

 

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嘉永2 年(1849年) 高知県吾川郡秋山生まれの細川義昌は、居合抜きの達人として知られています。年少の頃より剣術に格別の才覚をみせ、15歳で師範代を務めました。近代居合を今日の興隆に導いた中山博道も細川義昌に師事していたのです。

 

 

 

興が乗ると、右手の人差しと親指で摘んだ米粒を、「良いか。絶対に真似をしたらいかんぞ。」と言いながら、左手の真剣でこともなげに一刀両断にして見せました。明治天皇の御前では、ロウソクの炎を真剣の一太刀で吹き飛ばすという演武をとりおこない、ロウソクの芯は炎が吹き飛んだ後もチリチリと燃え続けたといいます。 「飛ぶ蠅を切り落とせるのか。」との戯れ言には、「そんなことぐらい、できなくてどうする。」と真っ向から答えたといいますから、漫画の「ルパン三世』(原作 モンキー・パンチ)に登場する、鉄でも何でも切ってしまう剣豪・石川五右衛門も真っ青です。驚いたことに実際に原作者のモンキー・パンチさんは、細川義昌の明治天皇への御前演技を参考にしたそうです。

 

 


私にとって細川義昌は曽祖父の兄にあたります。どちらかというと運動音痴だった私が、こと、剣道に関しては、自分でも驚くほど短期間に腕を上げたり、プロレス、相撲等の格闘技に人並みはずれた関心があるのは御先祖サマと関係があるのかもしれません。「氏より育ち」とはいいますが、一人の人間がこの世に誕生するまでには何百年という月日が費やされているのを実感します。

 

 

実際、私が初めて広島県誠和会の道場を訪れたた小学校5年生のとき、不思議なことですが「前にも何度も来たことがあるな」と感じたのは事実です。そして、子供ながらなに「剣道で駄目だったら、これからの全てが駄目だな」と強く感じたのを今でも覚えているのです。

 


人の能力や性格は本当に千差万別で、その潜在能力を事前に客観的に測定するのは至難の業です。会社 (組織) から短期的な目標を与えられても、短期的に能力を発揮できる人ばかりではないでしょう 。 逆に会社 (組織) がいくら時間を与えても、その会社 (組織)の営業権 (のれん)を高めることに全く貢献できない人もいるかもしれません。 

 

 

多国籍企業のマネジメントの研究は花盛りですが、様々な潜在能力を持つ人達が属する会社(組織)の営業権 (のれん)を高められるか否かは、実は 、会社 (組織) の経営努力よりも、会社(組織)に属する一人一人の資質、感性、そして努力によるところが大きく、測定不可能な要素が多いのではないかと私は考えています。