赤字企業にも営業権は認められる?それはなぜか?

 

超過収益力がないのが明らかな赤字企業にも、当然のように営業権は認められる場合がありますが、それはなぜでしょうか?

 

税理士に必須で大切な能力は、大事なことを聞かれたときに「なぜか?」を説明することと姿勢です。

 

ニヤニヤ笑ったり、「どんな分野にも例外がありますからねえ。」と誤魔化すのは専門家とは言えません。

 

超過収益力が算定されない赤字企業にも、当然のように営業権は認められる場合がありますが、それはなぜでしょうか?

 

大事な話がどこにも書かれていないのです。

 

結論が書かれてあっても、理由が書かれていないのです。営業権の専門家風?のM&Aの専門家に聞いてみても、まともな答えが返ってきたことはありません。

 

松沢智(2003)は「超過収益力は将来の超過収益力をあげうる可能性を意味する限り、営業権は現在損失を生じている赤字企業にも認め得べきものである(いわゆる sleeping goodwill)。けだし、欠損会社でも経営上の何らかの欠陥を排除すれば(買収・合併等の方法により)、超過収益を挙げうる可能性を有するからである。」(261頁)と議論します。「超過収益力が算定されること」と「将来の超過収益力の現在価値があること」は別という議論のようです。

 

赤字企業の営業権(sleeping goodwill)は、「眠れる営業権」、「赤字に埋もれた営業権」と訳せると思います。

 

外交用語でスリーパー(sleepinger)というとスパイを指しますね。

 

関係ないけど。

 

バーン・ガニアの得意技はスリーパー・ホールド(sleeper hold)、この技、ガッチリと極まると抜けられません。赤字企業に潜む、スリーパー(sleepinger)とスリーパー・ホールド(sleeper hold)、さあ、その結末は(^_^)(^_^)(^_^)

 

話が大きく逸れてしまいました。

 

超過収益力を基礎に将来の超過収益力の現在価値を算定することを認めながらも、赤字企業はそれが算定できないとから、「超過収益力」だけでは赤字企業の営業権は説明できないのです。

 

超過収益力の源泉は独占的条件とその譲渡(移転)可能性にあり、ここら辺りに問題解明の鍵があるのではないかとと思います。

 

M &Aにより無能な経営者を排除する、収益性のない古株従業員を解雇する、赤字を垂れ流している不採算部門を切り捨てる等は企業全体の「超過収益力」とは無関係でしょう。

 

企業全体の「超過収益力」から、赤字企業の営業権(sleeping goodwill)は、「眠れる営業権」、「赤字に埋もれた営業権」を説明するのは難しいのです・・・

 

これは、会計が営業権(のれん)を差額概念説、「買収の対価から時価純資産額を差し引いた金額」により営業権(のれん)を算定、評価することが主流になったことと深く関係しているようです。

 

「買収の対価から時価純資産額を差し引いた金額」が赤字であれば営業権(のれん)は存在しないと思考停止しているのでしょう。

 

・赤字企業でありながらも広く価値ありと認められた商標権、商号権

 

赤字企業でも、法律的な独占条件である商標権、商号権が高額な金額で取引される場合もあります。

 

・蓄積した薬価のネガティブ・データとそれに携わった研究員

 

蓄積した薬価のネガティブ・データとそれに携わった優秀な研究員、人的な独占条件が欲しくて赤字法人を丸ごと買い取るような取引も実際にあります。

 

具体的に赤字企業でも営業権が認められる事案、上記のような具体例から一般論を組み立てた方が良さそうです。