映画『評決(The Verdict)』-法律は何のためにあるのか-

 

2007年5月4日「タックスマニアの健康日記」掲載

2021年2月21日facebook掲載 

 

-これは、昔やっていたブログ「タックスマニアの健康日記」とFacebookに掲載した記事の中で、評判が良かったものを再掲載しています-

 

シドニー・ルーメット監督の「評決(The Verdict)」は1982年のポール・ニューマン主演の法廷映画です。エリートコースから大きく外れ、離婚し、アルコール依存症に陥った弁護士フランク・ギャルビン(Frank Galvin)が再起を賭けて医療過誤訴訟に挑みます。

 

『評決(The Verdict)』でポール・ニューマンは弁護士フランク・ギャルビン(Frank Galvin)役を好演しました。

 

日本ではまったく話題にならなかったのですが、『評決(The Verdict)』は『スティング』と並んでポール・ニューマンの代表作でしょう。



医療過誤をテーマにした重いテーマの映画でしたが、30歳位の時でしょうか。TAXMANIA55はそれを繰り返し、繰り返し見て法律英語を覚えました。

 


実を言うと、taxmania55は、足の怪我で3ヶ月自宅療養を余儀なくされまていました。何気なく観たこの映画に、TAXMANIA55は強い影響を受けたのです。

 

これを機会に英語を勉強し直そう、それと同時に自分の専門の租税法を徹底的に勉強しようと決意しました。

 

そして、外資系企業に強い特殊な税務の需要があるのを知ったのもちょうどこの頃です。

 

そして、それから7年後にtaxmania55は、外資系専門の税理士として人生の再出発することになります。

 

出産時の麻酔処理の誤りが原因で植物人間になった女性の弁護、相手はマサチューセッチュ州ボストンの地域に根ざしたカソリック系大病院の有名医師とそれを弁護する腕利きの弁護士コンキャノン、悪魔に魂を売った男、プリンス・オブ・ダークネスと言われた相手であり、到底勝ち目のない裁判でした。

 

ギャルビン(Galvin)は入院係をしていた看護師、キャサリン・カステロ・ プライスの証言により絶体絶命のピンチからの大逆転勝利を掴むのです。

 

元看護師の卵で、看護師の夢をあきらめたキャサリン・カステロ・プライスが反証証人(ributtal witness)として登場し、大聖堂病院の医者、看護師が神のように崇める有名医師を糾弾することで映画は大どんでん返しを迎えます。

 

「1時間前に食事をした」という死亡した患者のカルテを有名医師達は看護師の卵に1から9へ書き換えるように命じたのです。

 

期待に応えて言うとこれが生の事実、核になる事実です。
 

法律的には認めらず(unsubstantiateed)、記録から抹消された(striken from the records)彼女の証言、この生の事実を陪審員が最終的には高く評価します。

 

陪審員制度の存在価値、法律論と常識論の関係が問われ、米国では大きな話題となったのだと想像します。

 

フランク・ギャルビン(Frank Galvin)の陪審員 に対する最終陳述はまさに圧巻で、心に響くものがあります。

TAXMANIA55がその映画を非常に気に入ったのは大病院の杜撰な管理体制が妊婦を殺してしまうというテーマの深さ、重さもありますが、一度大失敗をして酒におぼれ、社会的敗者となった1人の弁護士が1つの特殊なケースを通じて完全復活するところに凄みと運命を感じました。

 

そうです。入院前のtaxmania55は狂ったように酒を飲んでいてアルコール中毒寸前でした。TAXMANIA55は、偶然この映画を観て、大きな転機を迎えたのです。

 

また、法とは何か、法と人間の関係はどうあるべきなのかという常にTAXMANIA55が常に悩まされている問題と大きく重なる部分がこの映画にはありました。

 

この映画がそのヒントをくれたのは間違いありません。

常に病院寄りの発言を繰り返していた裁判長さえも、元看護師の証言を最後まで聴き、真実を知るために一気に方向転換とも思える舵取りを法廷で行うところに米国司法制度の良心を見る思いがします。

 

さらに、12人の陪審員が下した評決はキャサリン・カステロ・プライスの証言が法律的には抹殺されたにもかかわらず、有名医師に有罪を言い渡すのです。

大聖堂病院の幹部2人の会話もきわめて印象的です。



「法律的には終わった。我々の弁護士は素晴らしかった。でも、本当はどうなんだ?(Legally, it is over. Our attorney is brilliant. But, what do you think, really ?)」

 

素人の集まり、情に流されがち等多々批判がある陪審員制度ですが、アメリカ社会が陪審員制度により正義を実現している姿に心を打たれます。


多様な価値観、人種で成り立つアメリカ社会ですが、神の前で宣誓することにより「証言では絶対に嘘はつかない」というキリスト教社会の前提があるからこそ裁判、陪審員制度が成り立つことを思い知らされます。

 

それと同時に、なぜ、日本で裁判制度がうまく働かないかも見えてきます。神が存在しない日本では、証言に信憑性が全くない場合が少なくないからです。


ポール・ニューマン演じる弁護士フランク・ギャルビン(Frank Galvin) が12人の陪審員を説得する最終弁論は圧巻であり、陪審員に語りかけます。

 

「あなた方が、法である。法そのものである。(You are the law. You are law.)」

 

そう、法律は人間が作り、人間の幸福のために作られたです。それは租税法も例外ではありません。


そうです。

 

条文に依拠した、適切な文理解釈だけが納税者を救うのです。

 

細川健税理士事務所 #taxmania55細川健税理士事務所 #taxmania55