うれしいニュースが飛び込んできました。
オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の大元となった発見をした本庶佑先生がついにノーベル賞を受賞されました。
毎年のように筆頭候補として挙げられておりましたが、やっとの受賞となりました。
世界中の学会で免役CPIバブルが起きている今、満を持しての受賞ですね。
どうして癌細胞は免役細胞で殺すことができないのだろうかという問いに分子機構を解明することで答えた本庶先生らのグループの研究は人類史に残る偉大な研究だと思います。

私もこのままいけば12月からキイトルーダ治療に入ります。
PD-1を発見しその機能を粘り強く解析した研究者の皆様と、その成果を薬剤として製品化した小野薬品・ブリストルマイヤーズその他製薬会社のみなさま、そして実臨床に落とし込むために尽力なさった医療者の方々、治験に参加しデータを提供して下さった諸先輩方には感謝の言葉しかありません。

毎年ノーベル賞シーズンになると言われることですが、この研究はだいぶ前の成果であり、今の基礎研究の苦境が続く日本からは今後ノーベル賞が出なくなるであろうという話が今回もちらほら聞こえてきています。

以前にも「正常細胞の死んだ場所へ前がん細胞が素早く滑り込む」で書きましたが、基礎科学の研究は応用科学とは異なり直接何かの役に立つことを目指したものではなく、新しいことを見つけたというサイエンスとしての価値のみを追求した研究です。
しかしながらこのような基礎研究によって明らかにされたことがタネとなって次の応用研究が生まれ、臨床研究にいたり、新薬として治療に役立つことが多々あります。
今回ノーベル賞を獲得された本庶佑先生は、がん治療に革命をもたらしたPD-1を発見した当時は当初がんの研究とは全く関係のない基礎研究の研究者でした。
1992年にPD-1を発見した時にはただ「新しいものを見つけた」というサイエンスとしての価値しかなく、世界中の多くのがん患者を救う薬に繋がるなど誰も思わなかったのです。
それが応用研究のタネとなり、20年以上かけてようやく「役に立つ」研究として実を結びました。
基礎研究の価値とはすぐに役に立つことではないのです。
残念なことにこのような基礎研究は最近では迫害され、すぐに役に立つような研究や、論文にまとまりやすい研究にばかり予算が割り当てられるという状況が長く続いています。
先日発表された科学技術白書では「わが国の国際的な地位のすう勢は低下していると言わざるを得ない」と書かれておりますが無関係ではないと思います。
日本を代表するライフサイエンスの基礎系の研究所が相次ぐ研究不正疑惑に揺れ、ついに解体されてしまったのは記憶に新しいですね。
これほどまでに基礎研究とその研究者が追い詰められてしまった今、かつてのような偉大な研究は生まれにくくなっています。
せっかくの税金を使ってしてもらう研究なのですから、研究者たちの自由な発想を妨げず、長期的な視点に立って本当に人類と国民のためになるように予算を割り振ってもらいたいものです。