たうえです。

 

 そろそろ家にいるだけでゆであがるような暑さの片鱗が見えてきましたね。

 

 そんな時こそホラーゲーム!…と思ったわけではないですが、あれから少しずつ進めてついに夜廻三のトロコンを達成しました。今回はそんな夜廻三のクリア後の感想でも書き連ねようかと思います。

 

 当然ながらちょこちょこネタバレを含みます。特にプレイ中の方がいたらご注意ください。

 

 

1. ボリュームについて

 

 ストーリーの間は特に攻略等見ずにじっくりと、ストーリーが終わってからは攻略情報解禁してさっくりと進めました。

 あれだけあったひろいものの空欄が埋まっていくのはやはり気持ちの良いものでしたね。

 

たくさんの収集物はやりこみの証。

 

 今回はオープニングクリアの実績が5月5日で、トロコンが6月12日でした。だいたい土日に1~2時間ずつくらいのスローペースだったので、全部で20~24時間くらい楽しめたことになりますね。今までのシリーズ作品はなんならこの半分未満で終わっていたので、個人的には満足のいくものでした。この記事書くのに2週間もかかっているのは見なかったことにしてほしい。

 

 

 2. シナリオについて

 

 今作は学校でのいじめに耐えかねて屋上から飛び降りた(ように見える)主人公が、なぜか謎の森で目覚め、何かしらの呪いを受けてしまう。そこで出会った自分を知る謎のおねえさんからアドバイスをもらい、タイムリミットの朝6時までに自分が忘れてしまった記憶と、呪いを解く方法を探して夜の街を探索する…という出だしでした。

 見てわかる通り、どんな呪いか、呪いの解き方、おねえさんが何者か、記憶喪失の原因やそのなくした記憶、とかなり謎が多くなっており、今までのシリーズ作品と比べてもかなり凝っているシナリオであるといえるでしょう。

 参考までに前々作は居なくなってしまった犬と姉を探す、前作は離れ離れになってしまった友人を探す、とかなりシンプルな導入でした。ある程度初めから謎が多い方が物語に深みが出ると思うので、今回くらいの方が好きですね。そんなにシリーズに合ってないってこともなかったですし。

 

 その後は街を探索してキーアイテムを見つけると関係するマップに行けるようになり、そこで何かしらの怪異絡みのイベントをこなすことで記憶を思い出すきっかけのアイテムを手に入れる、の繰り返しで進んでいきます。全部で7つのマップがあり、最初の方以外は自由に進められるようになっていました。前作までの一本道だったストーリーに対して新たな試みだとは思いますけど、賛否両論かなぁと思います。詳しくは後程。

 

今日の思い出がメインストーリーで、各マップはサブ的な位置づけ。

 

 各マップでのイベントは直接主人公の記憶にかかわるものではなく、他の怪異との派閥闘争だったり、主人公と遊びたいだけだったりと、昔マップで落とした主人公の持ち物を取り返すために対峙するというだけでした。もう少し主人公との確執があったりするとより燃えるんですけど、街で好き勝手やってる怪異に振り回される主人公っていうのがシリーズで共通してるので仕方ないのかもしれないですね。好みの問題な気がします。もちろんサイドストーリーらしく背景ストーリーが練ってはあるので、独立した話として全然楽しめました。

 

 各マップで新たに得た主人公の落とし物から忘れた記憶を思い出していくわけですが、選べない選択肢があったり、謎のモヤがあって見られなくなってる掲示板など何やら怪しい要素がてんこ盛り。思い出した記憶を頼りに廃ビルの屋上で待っているおねえさんのもとに行くも、やっぱり完全に思い出してないとかでバッドエンド的なものになり、一応エンディングになります。

 そして流れる巻きのはいった爆速スタッフロール。

 

 その後は正しい記憶を思い出すためのヒントが得られ、回想の中で特定の行動をすることで正しい記憶が開示されるという胸熱展開になります。こういうのオタクは大好きだからな。そしてこれによって隠蔽されていた謎のおねえさんとの会話が開示され、呪いについてやおねえさんの現状など知りたかったことが明らかになります。さらに、初めのうちは枠がなかった最後のキーアイテムが出現したりと、またもやオタクが好きそうな粋な演出をしてくれてにっこり。そちらのイベントを済ませて真の記憶を取り戻し、いざ最終決戦へって感じですね。

 

 総じて熱い展開が多くて、まさかホラゲーでここまでの展開になるとは思ってなかったので、しっかり楽しめました。ちゃんといつもの夜廻的な考察要素、というか明確には明かされない要素もありましたし、大満足でした。

 

 

 3. 難易度について

 

 夜廻シリーズは一般的なアクションゲームに比べ、そもそも取れる行動が少ないのもあってそう難しくなることはないゲームになります。

 しかし今作は比較的自由に思い出巡りをできる弊害か、一本道だった前作までよりシナリオを進めるうえでのヒントが少なめでしっかり探索する必要がある気がしました。

 

 基本的に思い出と関係するマップにはキーアイテムを見つけない限り、回避不能の怪異(コトリさま)がいて進めなくなっているので、まずは何としてでもキーアイテムを見つける必要があります。そして、見つけた後はどのマップが見つけたキーアイテムに対応しているのかのヒントが閲覧できるようになるのですが、ヒントを見てもどこの話なのか分からず、「とりあえず全体マップでまだ埋めてない場所に行くか」でなんとか見つけられたということもありました。

 かといってあらかじめマップを埋めておいてヒントで絶対わかるようにしよう、ということも件の回避不能怪異の決死のブロックで進めないので不可能と、少々噛み合ってない気がするんですよね。

 マップなんてどうせ全部埋めるぜ!っていう僕みたいな人ならいいんですけど、がんがんシナリオだけ進めたいぜ!って人にはちょっとじりじりするかもしれないですね。

 

やることリストもあまりあてにならない。

 

 他で詰まる要素としたらは各マップでのボス戦なんですが、これは初見殺し的な要素が多分にあるので、何度もリトライしてパターンを覚えてノーミスで突破できるまでやるしかないですね。割とスタミナ残量はシビアなので大変なところは大変かも。

 隙あらば自分語りをすると、屋敷と村の怪異なんかは先の展開が読めたりしたのもあって一発クリアできましたが、学校や商店街ではなんでやられたのかがわからなかったり、進め方がわからなかったりで結構苦戦しました。一生言いますけど、たま~に特定の敵にやられた後に演出違いがあるんなら、ボスの攻撃くらいは各攻撃専用のやられ演出にしておいて、自分が今どの攻撃でやられたのかをわかりやすくしてほしいです。

 

 

 4. その他のシステムについて

 

 シナリオだったり難易度だったりでマップや思い出に関しては触れているのでそれ以外のシステム周りについてまとめています。

 

 今作では今までにない要素として、「目を閉じる」という新アクションがありました。これは一部を除いて怪異から認識されなくなって横をすり抜けるのに使ったり、多少気配を察知できるのでどこに怪異がいるかが大まかに分かったり、一部のマップでは目を閉じることに別の意味を持たせたりと、普段の探索から謎解きに至るまで使用する重要なアクションとなっています。

 ちなみに怪しい挙動として追跡状態の怪異の前で目を閉じると怪異が初期位置に戻って動かなくなる、ということがわかったので、早めに目をつぶってうろうろしてる怪異の横を通り抜けるよりわざと見つかってから目をつぶる方が安全だったりします。なんなら一部のボスを完封できたりしたので、救済要素的側面もあるのかなって気がしました。

 他にもジャイロセンサーを使ったコントローラーを振るという疲弊システムもありましたが、一部の謎解きと戦闘だけの要素かつそんなに多用はしなかったですね。どうもこういう直感操作系って反応悪くてグダることが多い印象なのでここは助かりました。

 

 そしてやはり外せないのがキャラメイク要素。最初の感想ではパーツ少ないなぁって言ってましたが、無事やりこみ要素で増えました。

 

…鞄やアクセサリーだけはな!かわいいけど。

 

 というわけで結局パーツ自体は少ない…。服も最後まで二色しかなかったし…。でも狐面とかめちゃくちゃかわいいので許しました。今作では主に一度クリアしたマップに再度訪れることで起きるサブイベントの報酬として追加着せ替えアイテムが手に入る仕様だったので、シナリオ中では気づかない可能性も。もし次回作があるのならば、ぼちぼち街中に落ちているものもあるとかで充実させてほしいですね。

 バッドエンド後からクリアまで使えるちょっと鳥っぽいふさふさ主人公ちゃんが一番かわいいと思う同志の方はいらっしゃいますか???

 

5. 演出面について

 

 夜廻シリーズで外せないのが美麗なグラフィックとしんみりBGMですね。すでに一部は中途感想でも紹介しましたが、スクショしたくなる背景の多いこと。もはや説明不要か。

 

特に最後の橋がお気に入り。

 

 BGMの方も今作ではメインテーマのほかにタイトル画面で流れるオープニングテーマの2曲となり圧倒的パワーアップ(なお今作のサントラでシリーズ3作の全曲が入って4曲)。メインテーマは、初めは夜の街を弾むように歩く主人公が想起される前半部分と、怪異の紹介で使いやすそうな展開のある中盤部分、最後しんみりとした終わりを予感させる後半部分からなっており、まるで夜廻三そのものじゃないか(直喩)というような曲ですね。知らないって人はぜひ公式プロモーションムービーで聴いてみましょう。

 

 

 逆にオープニングテーマは一貫してしんみり全開なイメージですね。これはエンディング後のスタッフロールの後にタイトルに戻って初めて聴くBGMだからっていうのもありそう?

 

 個人的にはやはり何度も見たPVの曲でもあり、実際にクリア後のエンディングでも聴いたメインテーマの方が好きですが、ぶっちゃけどっちも好きです。

 

 夜廻BGMに外れなし。

 

 

6. まとめ

 

 だいたいこんなところでしょうか。

 

 シリーズの課題でもあったボリュームもきちんとあるし、そのボリュームもただ引き延ばしてるとかではなくシナリオ面での作りこみにつながっている良い作品だったと思います。気になったのは探索の導線をもう少しきっちりやってもいいのかなって部分と、一生言ってるやられたときの演出の強化と、河童イベントの時に河童が消滅するバグくらいだったので、安定していたと思います。あとはキャラメイク要素の充実もですかね。でもこれはどちらかというと次回作への希望って気もします。

 

 こういうシリーズってよほど突き抜けない限り3作品くらいがちょうどいいイメージもあるので、今後の展開があるのかわかりませんが、1作目を衝動買いした身としては続編が出たらまた買おうと思えるタイトルにまでしっかり成長してくれて本当にうれしいですね。何年でも待ちたいと思います。

 

 

7. 考察のようなもの

 

 ここからは致命的にネタバレ全開なので要注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここからは今作をプレイしてわかったシナリオ上の気になるポイントについて自分なりの意見を書きなぐる場です。あってるかどうかは責任は全くとれません。

 

 まずは今回のメイン怪異でもあるコトリさまについて。

 

 これはまず間違いなくおねえさんでしょうね。実際最後変身してましたし、拾える文書の方でも匂わせがありました。

 

丸文字はおねえさんの手記。

 

コトリさまはすべての時間を観測でき、鈴を探しているという情報も。

 

 おねえさんも呪いを解くために鈴を探していたはずなので、ちゃんと行動が一致していますね。ここでよくわからない点としては、呪いでおねえさんがコトリさまになる前の時点で昔話や伝承でコトリさまの話が出てくることでしょうか。

 

子供が知ってる物語では鈴要素はなく、教訓みたいなものに。

 

 その理由として考えられるのは、昔から他のコトリさまが何体もいる「コトリさま複数説」か、コトリさまになった時点で同時に過去や未来にも存在するようになる「コトリさまは概念説」あたりでしょうか。

 おねえさんことコトリちゃんのお母さんも過去に呪いを受けて行方不明になっているみたいなので、何らかの怪異になってしまっている可能性が高く、それが先代のコトリさまみたいな感じでずっと続いているのでは?ってのが複数説ですね。その場合、おねえさんは伝承から名前をもらった、とかになるのでしょうか。

 一方、コトリさまはすべての時間を観測できる能力を持っていたり、物語の最初と最後に出てくる時間のゆがんだ謎の森で落ち続けているコトリさまだったりと怪しい描写が多いのもあって、個人的には後者の説を推したいですね。その方が人智を超えた存在に運命すら翻弄される人間という構図が出来上がるし、何よりかっこいいので。

 それにしても過去に戻れるなら戻りたいとらしくない弱音を吐いていたおねえさんが能力的に時間を超えるコトリさまになっているなんて、前作の蜘蛛野郎も相当でしたが、今回のラスボスくんの呪いも相当意地悪なやつみたいですね。

 

 

 そんな呪いを解く方法が2つの鈴をラスボスくんに返すことなわけですが、呪いはおそらく大事な鈴を探せという指令を植え付けるものであって、ラスボスくん的にはさっさとコトリさまとかの怪異になってもらって鈴を探してもらう方が都合がよさそうですね。なんなら徐々に記憶を奪っていくので人間の状態だといずれ探せなくなっちゃいますし。

 この人間の信用してなさが、1作目の信仰されなくなって祟りを振りまいていた山の神だったり、2作目の信仰されなくなって縁切りの神から切断の概念と化したコトワリさまだったりと同じ流れを想起させます。主人公がムギちゃんの死を認識するっていう話も1作目リスペクトって感じですしね。

 今回のラスボスくんは元はいやなことを忘れさせてくれる神様とかなんでしょうかね。何かしら記憶とか思い出に関係する神様なのは間違いなさそうです。

 

 

 最後に家族にまつわるお話。

 

 とある回想でおねえさんに主人公とムギちゃんが写った写真を見せられて、お母さんが撮ったものだよって言われるシーンがあるので、どうやらおねえさんのお母さんと主人公は過去に会っているっぽい。

 

呪われる前から忘れすぎ&落としすぎな主人公。

 

 おねえさんの方は行方不明のお母さんのみ存在が明かされていて、主人公の方は普通にいるらしいお父さんと、バッドエンド後の回想内やムギに鈴を上げたなどの話だけ出てくるお母さんがいるみたいですが、この時おねえさんが主人公のことを「きみ」ではなく名前で呼んでいたり、ムギの写真の思い出後では主人公もおねえさんのことを「おねえちゃん」と呼んでいたり、どうも本当の姉妹らしい。すると素直に考えるなら両者のお母さんは同一人物になるわけですね。

 

エンド後におねえちゃん呼びを確認できる数少ないテキスト。

 

お母さんは回想時点から1年前に失踪とのこと。

 

 ただ円満な家庭だったのかというと、おねえさんの少しよそよそしい「きみ」呼びだったり、主人公が呪いにかかる前にもかかわらずおねえさんのことを忘れていたりもしているので、主人公が小さいころに離婚して離れ離れになったとかその辺のことはありそうですね。

 

主人公に忘れられてて少し悲しそうなおねえさん。

 

 特に明示はされてないので推測の域を出ないですが、一応主人公が手紙という手段を使おうとしている、おねえさんが久しぶりに街に来たと書いている、などそれらしい匂わせはあります。

 

その言葉がなんなのかは出てなかった気がする。

 

 

 

 お母さんが書いたらしいととのったメモは3つあるのですが、怪異への造詣が深そうなのと同時にちょっと責任転嫁してるようにも見えるので、民間伝承の研究家とかで若干性格に難のある人だったのかも?主人公側からの情報だとそんなひどい人でもない気もするので、ちょっとよくわからないですね。

 

見逃しがちだがこれもととのった字のメモ。つまり金時計はお母さんのものか。

 

ちなみにおねえさんにもあんな母だけど、って言われてたりする。

 

 ここまでのことを時系列にまとめると、

 

1. 主人公、おねえさんやムギといろんなとこで遊ぶ

2. ムギ、死亡(ムギの写真の回想でおねえちゃん呼びのため)

3. 何らかの理由でお母さんがおねえさんを連れて離れ離れになる

 

──これより前は主人公が幼すぎたのか基本的に忘れてしまっている──

 

4. 2年前ごろ、お母さん、呪いで失踪(1年前の回想時点で1年前なため)

5. 1年前ごろ、おねえさん、母の手掛かりを求めて久しぶりに街に来る。

6. おねえさん、主人公と再会し、学校の屋上で呪いを受ける

   +おねえさん、主人公にムギの写真を託す(ここが1年前確定)

   +主人公へのいじめ開始

8. 現在、本編開始+解呪成功

 

っていう流れになるんですかね。

 

 主人公がムギの写真を見たときの発言から、おねえさんが主人公と再会してタイムリミットぎりぎりでムギの写真を託したのが1年前で確定なので、お母さんの失踪がさらに1年前で2年前ごろでよさそうですね。お母さんがなんで呪いを受けたのかは不明ですが。

 主人公が謎の森に行ったときはコトリさまになった後のおねえさんと、ぎりぎりなる前のおねえさんに遭遇しているが、これは主人公が推測していた通り時間がゆがんで同時にいろんなことが起こっているためだと思われます。

 1年前までもっていたおもちゃ電灯の記述からおねえさんがいるうちに落としたっぽい印象を受けるんですけど、さすがに時系列が意味不明になるので基本的に物を落とした時の回想はラスボスに改竄された記憶であるというスタンスで行きたいと思います。

 

これと対となるホイッスルの回想では、おねえさんと浜辺に来たときに

船が勝手に動いたのにびっくりして物を落としている。

 

 つまりは主人公、あの状態でおねえさんを1年間も放置してたのか…。バッドエンドでおねえさんと会ったとき、おねえさんが「今のきみをわたしは救えない」とか、「きみが思い出すまで死に続けるの」とかって言いながら屋上から落ちていくんですけど、たぶんここで落ちて行っているのが謎の森で橋を渡るたびに落ちてきていたコトリさまですよね。不死身だから呪いの進行を抑えるために死に続けているとかなんでしょうか。一応おねえさんも鈴を持っているので多少は呪いの鈍化に効果ありそうですけど、学校の時みたいに動けないほどだったら無理ですしね。

 

 結局のところ、主人公の呪いを解いて自分は助からないわけですが、コトリさまの能力で未来に主人公が呪われるのを見ていたとかだったら切ない。最後に主人公に思い出してもらえたことや、主人公を救えたという事実は果たしておねえさんの救いになったのでしょうか。