戦火の故郷を離れ難民として家族でオーストラリアにやってきた女性サリマ。英語はわからない。実は母国語さえ読み書きができない。困窮のなか夫は失踪してしまう・・・。

 

頼る人もいない、言葉も通じない、でも二人の子供を食べさせなくてはならない。ひとりになると泣きながら、それでも夜明け前からのきつい仕事を続けていく。

 

というオープニングに、これはずいぶん暗い話になるのかと思いましたが、読み進めていくと個人的には凛々しい希望の物語でした。

 

きつくても難しくてもずっと続けていくこと。恐れと失敗ばかりでも、とにかく続ける。やがて少しずつ仕事にも慣れ友もできる。そして生きるのに必須の言語、これもまさに継続によって身についていくひとつの力。大いなるパワーだ。

 

この物語にはもうひとり日本人女性の主人公がいる。夫の都合での豪州暮らし。こちらはしかし、母国語はもとより英語を専門的に学んでいるという、一見サリマよりはずっと恵まれた状況。しかし彼女にも辛い悲劇が訪れる・・・

 

このふたりが出会い親交を深めていくのだが、ふたりの名前表記がサリマはナキチだったり、これは何だろう?と。

最終章で種明かしされてみると、これはサユ(日本人女性)の物語だったのかとも思える。

 

 

 

それはもちろんどちらでもよくてw この作品は力に満ちた勇気と希望の物語だと思いました。かなりあちこち線を引きまくりで読みました。

それからこれは全く個人的なことですが、何しろ異国の地でその言葉を学ぶ人達の話なので(ひとりは生きるための生活語を、もうひとりは学術的に)何というか、君(ユーリw)も英語やりかけてたんじゃないの?と発破をかけられたような気がしなくもないwww

作中、敬愛する小説家クッツェーの「Age of Iron」(鉄の時代)が出て来てこれまた積読本でぎくりと💦

 

話が長くなりましたが、けっこうやる気をもらった気がしています。お薦めです。第29回太宰治賞受賞作。

 

この本はきっかけがやはりアメブロでした。ハイジ様いつもながら素晴らしい作品のご紹介ありがとうございました💛