(ひつじしきがたにんげんもぎき・いぬかいとらひこ著)

これはおそらく、最も好き嫌いの分かれる作品かと思います。

 

大まかな物語。「わたくし」によって冒頭ですぐ述べられるので書きますが、一族の大旦那様が御羊になられ、これから一同でその羊肉を食するという話です。これは一族の大切な慣わしであって、一族の主(男性のみ)はその死の直前に御羊に変身するので、3日ほどもかけて儀式を行い由々しき作法にのっとりその肉が一同に供されます。

 

個人的に読みどころがふたつ。ひとつは勿論その御羊の話。

この小説は第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作なのですが、読みながら果たしてこれはSFなのか?とは思いました。幻想小説であることは間違いないところですが。

が、読み通すとこれはアンドロイドや生命の深い話で、それがわずか179ページに展開する見事なSFでもあると思いました。

 

読みどころのふたつめ。外国語に訳出は不可の、稀なる美しい大和の言葉使いによるその世界観の深さ。上述の御羊様儀式のほかに、一族の過去の出来事も語られていきますが、彼等彼女等の住む土地の、その森や池や沼や田圃や・・どこもが幻想的に美しいのに実にリアル。いや、だから、この現実世界は本当に幻想なのです、もともとw

 

 

 

 

ここから 余談ww

この小説は多数決でいくと?嫌いな人の方が多い予想がしますが、コンテストの選考委員の皆さんも意見はいろいろ。その中で強く推されたのがSF界大御所の神林長平氏でした。この方の評は、本の帯にも載っていますが「大げさに言えば、この作品から生きる力をもらった気分になったのだ」と。おお~!

氏の作品は短編集をひとつ読んだきりですが、その短編集「いま集合的無意識を、」の表題作は、語り手のpc画面からあの伊藤計劃ドキドキが語りかけてくるという話なのですよ!!

 

神林長平氏に関してもうひとつ。ユーリのSF師匠の(またまた勝手にm(__)m汗)某P師によると、神林長平作の「戦闘妖精・雪風」シリーズを絶賛しておられ、タイトルが・・何だかなぁと思いつつもwww神林長平氏は凄いのだ!という認識なわけでその方が絶賛する御羊話なのです。

 

この本はkindleで読んだのですが、表紙絵といい、紙の本で買うべきだったと後悔中。これから購入しようかな~。

 

なお、かなり気持ち悪い場面もでてきますのでヨロシクw