タイトルの「古書」、500年も昔に書かれたユダヤ教の本です。ユダヤ教的にはありえない美しい細密画で彩られています。この実在の希少本が1996年にサラエボで発見されたことを受け、本の由来と謎、関わってきた人々の生きざまを描いたフィクションです。
古書鑑定家のハンナのところに、幻の書「サラエボ・ハガダー」が発見されたという一報が飛び込む。修復を依頼されたハンナはすぐにサラエボに飛ぶ。
その貴重な古書を守っていたのは、ユダヤ教とは相反するイスラム教徒の学芸員オズレンだった。
そして古書を調べていくうちに、多くの謎が生じてくる。
戒律に背くような美しい細密画はなぜ描かれたのか。
そもそも家庭用である本になされた豪華すぎる装丁。
そしてハンナがページの間から次々に発見していく蝶の羽、
ワインの染み、白い毛、塩?血痕?・・・・
その謎を辿って解明していくプロの鑑定家の仕事に感嘆させられます。
そして語られる過去の出来事。この古書がたどってきたその世界と時代の人々。
はっきり言って悲劇です。ヨーロッパの過去の数百年は戦争の歴史です(今だに終わってはいませんが)
さらに宗教と民族の違いによる争い。
非道な、あまりに過酷な運命のなかに必死に生きていく人々が描かれて、読んでいくにもつらい場面が多いです
でもそれらの苦難のなかで作られ飾られ守られ続けていく一冊の書物。ハガダー。
個人的にユーリも本は大好きですが、ここには好きなどといった事を超えた、人々のこの書物への尊い想いと行動があって心を揺さぶられます。
そして現代の、この書をめぐる人々、ハンナやオズレンをはじめ多くの登場人物にもそれぞれの葛藤や喜びや苦しみがあり、読者はそこにも引き込まれます。
見事な小説だと思います。多くの方々に読んでいただきたい作品です。
この小説はブロ友のハイジさんのご紹介で読むことができました。ハイジさん、どうもありがとう~!!!!
この同じ著者に「ケイレブ」という素晴らしい作品があって、こちらもハイジさんも絶賛本でした。
というわけで、この著者ジェラルディン・ブルックスの別の作品もすでに入手しています!
ハイジさんにも著者にも感謝、また出版社やエージェントや印刷屋さん、紙屋さんや流通の皆さまその他あれこれwww ユーリが本を手にすることに至るまでの奇跡のシステムに感謝です!
ということはつまりは、生きていることに感謝ですね。
世界が本当に平和になって、だれもが安全で夢をもって生きて行けるようになってほしいと、切々と思います。この本が多分、そう思わせる本なのです。
(サラエボハガダーの画像。ウィキメディアより)