韓国の若い女性作家によるSF短編集です。

 

序文より;

「わたしたちは、見て聞いて、触ることのできるこの世界を現実だと思っているけれど、実際には”感覚バブル”に閉じ込められて生きています。」

 

これまさにユーリがいつも感じていること。極論すると、唯一の確固たる共通世界に生きてるような錯覚の中で、私たちは実は個々の単なる感覚器官、システムとしての存在と思っています叫び

 

物語はそんな変な理屈っぽいものではなくw どれも美しくてプロットも素晴らしいです。

 

1作目。「最後のライオニ」

生命体が滅び去った遠い惑星を探検する「わたし」。危機に陥るが、その星に残された「機械たち」に救われる。「機械たち」のリーダー・セルはかつてそこにいた人間たちの帰還をずっとずっと待っていたのだった。ライオニ、その人を。

「機械たちにも消滅することへの恐怖がある」というような話なのでw合わない人には全然ムリかと思いますが、ユーリは超共鳴ww この1作目から涙々でした叫び

 

「ローラ」はずばり、人の受容感覚の話。「脳内の身体地図と実際の身体との不一致から生じる不快感」の話です。感覚としては3本目の腕があるはずなのに2本しかないwローラにとっては、それは不快感どころではない苦痛。やがて彼女は外科手術で3本目の腕を持つことに。荒唐無稽なwwと思われるかもしれませんが、たとえば事故で下肢を失ってもその無いはずの足が痒いとか痛むとか、幻肢痛ってありますよねw 脳感覚と身体との関係。

 

「キャビン方程式」は時間感覚の異なってしまった姉(物理学者)とその妹の話。宇宙における高密度の暗黒物質は時空のゆがみを生じさせ、ポケット宇宙が出現する・・といった研究をしていた姉は、まさに自分が異なった時間バブルへ・・と書くとこれも理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、この物語は、おかしな噂のある観覧車をめぐっての美しいファンタスティックなストーリー。

二度と時間が重なり合うことのないふたり、違う風景しか見られないふたりの、姉妹愛の話でもあります。

 

全7作品、どれも素晴らしくおもしろかったです。

以前この作者の「わたしたちが光の速さで進めないなら」というのを読んで好きだったのですが、今回の新作はぐっとレベルアップな気がします。上に書いたように合う合わないがあると思いますが、興味ある方はぜひどうぞ。

ユーリはもう、追いかけ決定です!!