たとえばある人が、美しくて強靭な体を持ち、仕事に心から打ちこみ、良き家族と友人たちに恵まれ、超リッチで愛情と感謝に満ちて生活していたとして、要するにこの上なく幸せな人生を送っていたとして、でもある時、それまでは日常の存在だったあるものが失われたら、たとえば愛する子供が突然非業の死を遂げたら。

もうほかのどんな幸せも無意味になってしまうと思います。

 

その逆に、なんの希望も持てないどん底の貧困と怒りと苦痛のなかに生きていたとして、ある時あるものを得ただけで、突然人生が意義あるものに変わる、ということもあるのかも。

この小説で暴力にのめり込む男性たちは、いわばそういう事かなと思いました。

 

 

 

先日読んだこの作家の「インヴェンション・オブ・サウンド」がユニークでおもしろかったので、Amazonにいってみたら「ファイトクラブ」を評してなんと!!

”20世紀最強最後の凶悪な詩” by伊藤計劃 

とあるではないですかラブラブ 即ポチりました!

 

 

 

ストーリーは、不眠症で悩んでいた男がタイラーという謎の人物に出会って、「ファイトクラブ」ー殴りあって痛みと命を実感するためのクラブを作る、会員は次々に増えていって全米に広がっていくという、ひたすら暴力の映画です。

映画化されたのでご存知の方も多いと思います。

 

 

映画は以前見ているのでストーリーはすでに知っているわけですが、それでも非常におもしろく読みました。ストーリーの流れはわかっていてもそれを超えて読ませる文体の凄さ。

現代社会、経済社会への痛烈な批判・敵意があるのですが、この文体の凄まじさに押されてちょっと埋まってしまったかもw

 

 

なお全然絶対にお勧めしませんので。この上なく酷い下品な暴力の話です。下品といえば、いつか某寿司店で気持ち悪い無作法を働いた若い男性がいましたが、あの行為の一億倍くらい下品なことをやったりしています・・・・そのシーンはちょっとトラウマになりそうかも・・・😖

 

 

 

蛇足。

あたしはユーリの嫌悪です

あたしはユーリの首筋です

あたしはユーリのあぶら汗です

あたしはユーリの崩壊です

・・・・・・

 

といった言葉が頭の中で渦巻いています。文体が身に沁みついてヤバいです。

非常におもしろい作品でした。ほんとにあせる