多和田葉子氏、個人的には、難解で自分は読めない、読まないと思っている作家さんです(トライしてすぐあきらめた事あり)

 

しかしこの国際的作家による、パウル・ツェランをタイトルにした小説となれば、これは必読。

詩人パウル・ツェラン、初読み時の感動と衝撃は、今も忘れません。

 

 

 

薄い本です。全196ページ、そのうち訳注や解説が70ページ近くを占めます。が、読了にはやはりかなり時間がかかりました。

 

ツェランの研究家であるパトリック(患者と表記)、謎のような中国系の男性レオ=エリックとの出会いと交流が描かれます。もちろん全て、ツェランをめぐっての。

 

難解ですが読む分にはとても面白かったです。ただ、どこまでが現実なのか、頭の中のことなのか、夢なのか・・・という感じではあります。主人公は「患者」」ですしあせる

 

何より感動したのは、作者と翻訳の関口裕昭氏お二人のツェラン愛というか、この作品全体がツェランの言葉をめぐっての考察(を物語風にした)感じで、詩人の言葉、その存在がどれだけこのふたりの文学者の血となり肉となっているか・・と思いました。文学者って凄いです。

(翻訳というのは、この本は多和田氏の他のいくつかの作品と同様、ドイツ語で書かれています。)

 

ラスト、なんと翻訳の関口氏による6ページほどのエピローグが付いています。え 勝手にいいの?と一瞬思ったけれど、これは訳注も含めおふたりの共作と言えるかも。最終章からのこのエピローグがとても素敵でした♡

 

 

 

 

パウル・ツェランは、最初に出会った「花」の入った詩集「ことばの格子」と、あと解説付きの詩文集を一冊持っていますが、全詩集揃えるべく、鋭意検討中。訳が・・・いくつかあるので悩みます。

 

ツェラン、世界最高の詩人(のひとり)ではないでしょうか。その人生はあまりに辛いものでしたけれど汗